早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」昭和二年二月 第三巻二号 俳句

2020-06-12 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
しら梅のその花びらを極め見ぬ 

さしのぞく谷の朝日の梅の花

早春社 正月本会 曽根崎露天神社

枯艸に消ゆる雪にて臼の音

正月のぬくき水仙葉のほこり

早春社 神戸東例会
冬の川町になりつゝ燈の高し

早春社 尼崎例会
時雨寺裸の桐の五六本

北風のすさびながらも崖日南

早春社 安治川例会
廣縁に残菊のかげ全けれ

打出句会
冬ざれの中に波すや鶏の水

金沢の沖村汪洋君来訪小集
落し水柳の岸を濁しけり

宋斤の俳句 「早春」昭和二年二月 第三巻二号 巻頭

2020-06-12 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく


季題の在り場所   宋斤

ある人の二十句を見た。不思議と季題の文字が全部句の下五文字に座っている。
この作り癖の人の句は、概して句のすがたが調のひおさまりが好い。
併し、上五中七と続くその文字多くは如何なる下五の季語の上に乗っても
一句となっていく趣味的、既成的事件である。
ある人の一題百句吟をみた。季題文字は過半数以上、概して上五の文字にある
多作が亂作に陥る場合、ともかくも季題の文字が冒頭句の頭に生れる。
併しこのつくり勝手の人の句は立ち筋がよい。
一気のきほひもある。併し句の味も匂ひも下痢しやすい。
季題の文字が、中七文字にある句を若干見た。通じて、それ等の句は、小局的にしろ
全面的にしろ能動してゐる。此の作り好みの人の句には、感激があり感激が籌策からのものもある。
要するに句が働きかけるがくねり、ねばり、さわぎにすぎることも多い。


宋斤の俳句 「早春」昭和十六年二月 第三巻二号 大正天皇崩御

2020-06-11 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
大正天皇崩御  
  1926.12.25 崩御

  大皿へ哭きたてまつる雪のふる
 
  くにたみは雪に面を伏し嗟き

  畏れ憧れて師走念五の曉くらむ


近詠
     北摂阿古谷にて
  枯れ檪鳴る一望を行手かな

  兎汁今夜は去ねぬ句會らし

  大氷柱まどうに添水を槝く

  野施行に一二丁交ぜりごゝろ哉

  野施行淵川すぎて行く燈哉