早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十五年二月 第二十九巻二号 近詠 俳句

2022-05-13 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年二月 第二十九巻二号 近詠 俳句




   近詠
   橿原神宮寒夜参拝
大道の貫くあれば寒しろく

寒の星満ちたりあるは吊り合える

ともしびは他所に遠くて凍つるかな

霜白木神橋の夜をわたるかな

星の天うねびみやまに冴え清み

雲浮きて寒夜いよいよ蒼穹に

御まへの松夜を優ぐれ冬盡くる

拍手の谺愼れぬ霜だゝみ

  西大寺のほとり

寒かすみ大和はぬくゝ寺の塀

寺小門寒降る木の葉潜るなり

枯れ堤寺から使ひ出でゝゆく

寒雀ものにをどろく寒の空

凍てゝゐる池の柳に名ありけり  (百萬柳)

木挽く音へ寺門を出たり刈田ひろ

鴨と覺ゆ曇りに重く一羽去る

枯れしづか歩いてみだすことのあれ

冬の鳥丁々と鳴き誇りける

枯れ徑や媼が我を知るが風に

山眠るが朱をひと刷きの入日雲

むぐら枯れ鳥寐に入し戦ぐかな

寒凪や野奥の障子ほの燈る

   奉慶紀元二千六百年
紀元節ありへし紀壽のなほとはに

   孔舎衙吟行
   村内
村の辻明日のとんどの料積みて

石車石積みすてゝ寒椿

   貝塚にて
麥さむき畦に石斧ひろひけり

   大龍寺にて
時雨そむ空にともして烏瓜

枯れの音空より時雨かすれきて

   早春社新年本句會
人日や日南もとめて茶山ゆく

初富士に総身以て向ひけり

日の春や汀の鳥居磯馴れ松














  

宋斤の俳句「早春」昭和十五年一月 第二十九巻一号 近詠 俳句

2022-05-12 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年一月 第二十九巻一号 近詠 俳句

   近詠
斬神旭の橿原年あした

大むかし三旦明くる闇彼方

あめつちのひたと静まり初明り

松透きて今年のいろの海にあり

初東風に光るをひろふ古瓦

翔ちして雀染まりぬ初茜

正月の塵をつまんで仕丁かな

小さき部屋にて乙女かたまりお正月

初句會坐って皆を見渡せば

初刷りや校正刷なほも散らばるに   校正刷ゲラズリ

正月や山を戀ひつゝ蜜柑むく

初旅の人たかたかと舷欄に

初飛行空に日南を出しつゝ

老ひざれてなつかし媼が年詞かな

初詣でみちにかぬちをきゝにけり

楪やしなやかまろく紅の莖

初鴉たひらかな空海のうへ

弓始西の黒雲キツト視て

初日南皇兵抱く銃にあり

福壺艸まだき明りに黄なりけり

新年句合評
門さきの年となりたる柳かな

  栗
露の旭に栗の豊作仰ぎけり

栗拾ひ歩けば音のする山ぞ

栗拾ふ水浅きにも摘まみけり

  鮓
鮓の飯ひざに拂ふて夜涼かな

鮓くつてよきほどに湖上船來る

  早春社納会
樹々透いて鴨池の照りくるゝかな

冬雲の糸ほどの月蔵しけり

冬雲の汽車がまはれば山になし