宋斤の俳句「早春」昭和九年二月 第十七巻二号 奥吉野(二)
山のなにの音も聞こえず冬の宿
宿の夜に大枝挿せし紅葉哉
山中に一日たちし冬座敷
宿の朝
冬日南さすに窟の口のぞく
丹生川上神社上の社
はるばると来て神前に脱ぐ外套哉
この宮に詣でたかりし冬ぬくし
宮冬や鳥も鳴かずに川の音
山川にひゞく拍手冬の宮
冬ざれて杉の奥なる朝日かな
樹々の中社地ひろびろと冬日ざし
宮落葉二人が三人分かれ立つ
さこそまれ焚火も露の雨師の神
峡そこら樽丸積んで冬の霧
笹鳴きや天誅組の墓所の奥
磁々として日に匂ふなり冬の草
志士の墓展し終りて冬の雲
馬ヶ瀬や紅葉に暮れのゆとりして
冴え冴えと社ともつて冬の霧
昭和八年十一月十五日
山のなにの音も聞こえず冬の宿
宿の夜に大枝挿せし紅葉哉
山中に一日たちし冬座敷
宿の朝
冬日南さすに窟の口のぞく
丹生川上神社上の社
はるばると来て神前に脱ぐ外套哉
この宮に詣でたかりし冬ぬくし
宮冬や鳥も鳴かずに川の音
山川にひゞく拍手冬の宮
冬ざれて杉の奥なる朝日かな
樹々の中社地ひろびろと冬日ざし
宮落葉二人が三人分かれ立つ
さこそまれ焚火も露の雨師の神
峡そこら樽丸積んで冬の霧
笹鳴きや天誅組の墓所の奥
磁々として日に匂ふなり冬の草
志士の墓展し終りて冬の雲
馬ヶ瀬や紅葉に暮れのゆとりして
冴え冴えと社ともつて冬の霧
昭和八年十一月十五日