僕の魂の奥深くに炎える、権力への憎悪は消えることがない。
僕らの世代にとって敗戦は世紀末だった・・
巷に人々は飢え、街娼とルンペンと戦災孤児がひしめきあい
政府はタダ徹底的に無能でアッタ 上野駅構内のセツルメントで働いていた僕は
地下道で衰弱死した人々を塵芥の様にトラックに放り込んで処理してゆく
無残な光景を毎日見ていた
窮民の蜂起と労働・学生運動の共闘を実現して、体制を一挙に打倒スルことを夢想した
当然 蜂起の夢は1871年 パリ・コミューンに重なる
破壊の後に世界は浄化されると無邪気に僕は信じた 頽廃は過度の現象であり
人類は全円のユトピアへ、自由・平等・友愛の彼岸に向かって あゆみ続けるだろう
と。 半世紀は過ぎ去り 今そのことを信じて疑わぬ"左翼"が存在する・・
理想と正義を建前とする限り、政治は詩や音楽とは無縁なのだ
なべて、芸術家たちは運動体に組織され"政治変革"にアンガージュすべきだという
マルクス・レーニン&サルトル的迷妄から、ようやく脱却したとき
結局 政治が芸術に対してなし得る最良かつ唯一の保証は
「表現(思想体系)の個別完全な自由」のみである
いうまでもなく政治が人間の恣意を先導して秩序を維持するシステムである以上
それは無何有の理念に過ぎない
だが
「政治・そして社会制度は目の粗い網であり、人間は永遠に網にかからない魚である」(坂口安吾・続堕落論)
制度は人間によって滅びる。その精神の具現がパリ・コミューンであり、
前世紀末の文芸であった。この一世紀、科学はどれだけ人類を進歩させたか?
いわゆる日本の復興繁栄の中で
僕は少しも自由ではなく・・・・・
***************************************************************************************
////
真実のところ ぼくはあの沖合にずっと延びた突堤に棄てられた 少年かもしれぬ
行く手は空に続く道をたどってゆく子供 嗚呼 その道は険しく湾曲・屈曲していて
金雀枝は丘陵を覆う そよ風も吹かず 鳥の歌 泉の声も遥かに遠い
進みゆけば 必定の世界の涯
地の下の奥底に白い漆喰の鏝の目が浮かび上がる 石の墓を俺に貸して呉れないか
そこで俺はテエブルに肘をつき、物思いにふけるのだ 燭台は新聞や雑誌を照らす・
だが俺はもう禁断の書物に興味はない地底のスミカの上 人々の家は立ち並び、霧は深くたちこめるだろう
アカク黒い泥の街、怪物のような都会 そこには空も星もなく、循環する暗夜。
むしろ 四囲を地球の厚みにへだてられたオクツキにこそ 藍色の深淵はあるであろう
火の井戸もあり、月と彗星と海と神話の出会いもある 懊悩の時がおとずれる度々に
俺はこの身を碧玉の球体よ
白金の球体よと想いなすのだ
俺は黙劇の主人公、円天井の片隅に何故か一つ、換気窓の空が青ざめている
ジャン・アルチュール・ラムボオ
僕らの世代にとって敗戦は世紀末だった・・
巷に人々は飢え、街娼とルンペンと戦災孤児がひしめきあい
政府はタダ徹底的に無能でアッタ 上野駅構内のセツルメントで働いていた僕は
地下道で衰弱死した人々を塵芥の様にトラックに放り込んで処理してゆく
無残な光景を毎日見ていた
窮民の蜂起と労働・学生運動の共闘を実現して、体制を一挙に打倒スルことを夢想した
当然 蜂起の夢は1871年 パリ・コミューンに重なる
破壊の後に世界は浄化されると無邪気に僕は信じた 頽廃は過度の現象であり
人類は全円のユトピアへ、自由・平等・友愛の彼岸に向かって あゆみ続けるだろう
と。 半世紀は過ぎ去り 今そのことを信じて疑わぬ"左翼"が存在する・・
理想と正義を建前とする限り、政治は詩や音楽とは無縁なのだ
なべて、芸術家たちは運動体に組織され"政治変革"にアンガージュすべきだという
マルクス・レーニン&サルトル的迷妄から、ようやく脱却したとき
結局 政治が芸術に対してなし得る最良かつ唯一の保証は
「表現(思想体系)の個別完全な自由」のみである
いうまでもなく政治が人間の恣意を先導して秩序を維持するシステムである以上
それは無何有の理念に過ぎない
だが
「政治・そして社会制度は目の粗い網であり、人間は永遠に網にかからない魚である」(坂口安吾・続堕落論)
制度は人間によって滅びる。その精神の具現がパリ・コミューンであり、
前世紀末の文芸であった。この一世紀、科学はどれだけ人類を進歩させたか?
いわゆる日本の復興繁栄の中で
僕は少しも自由ではなく・・・・・
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真実のところ ぼくはあの沖合にずっと延びた突堤に棄てられた 少年かもしれぬ
行く手は空に続く道をたどってゆく子供 嗚呼 その道は険しく湾曲・屈曲していて
金雀枝は丘陵を覆う そよ風も吹かず 鳥の歌 泉の声も遥かに遠い
進みゆけば 必定の世界の涯
地の下の奥底に白い漆喰の鏝の目が浮かび上がる 石の墓を俺に貸して呉れないか
そこで俺はテエブルに肘をつき、物思いにふけるのだ 燭台は新聞や雑誌を照らす・
だが俺はもう禁断の書物に興味はない地底のスミカの上 人々の家は立ち並び、霧は深くたちこめるだろう
アカク黒い泥の街、怪物のような都会 そこには空も星もなく、循環する暗夜。
むしろ 四囲を地球の厚みにへだてられたオクツキにこそ 藍色の深淵はあるであろう
火の井戸もあり、月と彗星と海と神話の出会いもある 懊悩の時がおとずれる度々に
俺はこの身を碧玉の球体よ
白金の球体よと想いなすのだ
俺は黙劇の主人公、円天井の片隅に何故か一つ、換気窓の空が青ざめている
ジャン・アルチュール・ラムボオ