但馬高原植物園の近くにある氷ノ山は、私のホームページでリストしている花の百名山です。
但馬高原植物園を退園するとき、受付の方に氷ノ山が見たいので山容を確認できる場所をご存知ないでしょうかと聞いてみました。
すると横で話を聞いていた初老の方が、それだったらハチ高原がいいと教えてくれました。
ナビに養父市別宮と入力すれば良いと、とても親切なご説明です。
時間を確認すると16時半ごろになっていましたが、日没までは十分に余裕があります。
早速にエンジンをスタート。
ナビのままに走り、とある集落を通過しました。
道路の中央に融雪用の消雪パイプが設置されていました。
冬に中央のノズルから地下水を噴出して道路の雪を解かす装置です。
この辺りの冬の光景が目に浮かぶようです。
30分弱でハチ高原に到着しました。
スキー場とスキー客向けのロッジなどが姿を見せていました。
左手遠方になだらかなピークが垣間見えたので、車で村外れの林を抜けて行くと、段々畑の奥で氷ノ山が夕日を浴びていました。
氷ノ山は標高が1510メートルで、新田次郎の「孤高の人」のモデルとなった加藤文太郎が愛した山とされています。
周囲にイヌワシやツキノワグマが生息し、「日本の秘境100選」にも選ばれているそうです。
道路脇に公園事務所ふうの小屋を見かけました。
近づいてみると、壁に解説が掲示されています。
県指定文化財「別宮の大カツラ」
樹高27.32メートル 幹周り14.50メートル
枝張り東西24メートル 南北26メートル
このカツラは雌株で、主幹を中心に大小100本近くの幹が叢生し、根本からは多量の清水が湧き出している。
葉は対生の円心形で、長さ幅はともに3~7センチぐらい。
果実は円柱形で、種子は小型で扁平な形をしている。
但馬高原植物園で紹介していた「但馬の名木」の一本を偶然に訪ねる結果となったようです。
小屋の後ろの森を見上げると、カツラの巨木が豊かに枝を広げていました。
絶え間なく湧水が流れるコンクリートの畦道を巨木カツラに近づいて行くと、見る者を圧倒するような存在感を示して、森の主が鎮座していました。
白っぽい幹を無数に束ねた容姿は樹木というよりも、何か別の生命体を見ているような思いがします。
根本から滾々と湧き出る清水は、まるで地下水脈から巨木カツラ自体が汲み出しているかのような錯覚を覚えました。
このカツラも但馬高原植物園のカツラと同様に、枝々に瑞々しい緑の葉を茂らせています。
果てるともない湧水が、豊かに、静かに水路から溢れ出し、畔道のコンクリートの小石を浮き上がらせていました。
少し離れた場所から、もう一度カツラの大木を振り返りました。
秋のススキと一緒に夕日を浴びながら、こんもりと葉を茂らせた姿に、老木のイメージを微塵も感じ取ることができませんでした。
氷ノ山は背後からの西陽を受けて、一足早く闇の中へと沈み始めようとしています。
さて、私も今宵のねぐらを求め、そろそろ次の目的地へ走り始めることに致しましょうか。
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