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ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
第285回記事(2016年4月18日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
ものづくり・工場改善 経営改善(5) 「原理・原則にもとづく現場改善の実践」 佐武弘章
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今回の記事には特別な思いがあります。
「改善・ムダ取りがなぜ経営の改善につながっていないのか?」
この疑問から出発した「ものづくり・工場改善」の一連の記事ですが,
スタート当初考えていた項目・内容は今回が最後になるからです。
◆はじめに
この本は、古畑友三先生が岐阜県の各務原市で改善・ムダ取りを指導された2年間の内容を佐武弘章先生がまとめられたものです。指導された2社はみごとに高利益・強競争力企業へ脱皮されました。
本は3部構成になっています。
第一部 改善・ムダ取りを導く原理・原則
第二部 原理・原則にもとづく改善・ムダ取りの実践事例
第三部 モデル企業での改善・ムダ取りから高収益・強競争力体質への変革のステップ
この順番に読んでいくことで、工場の一隅での改善・ムダ取りをどのように工場・企業の改善につなげていけるのかが分ります。
◆第一部 改善・ムダ取りを導く原理原則
「すべての改善・ムダ取りには、それらを導き、根拠づける原理・原則があります。原理・原則によって説明できない改善は、真に有効かどうか疑問です。」(まえがき より)
ということで、改善・ムダ取りのすべての手法を知識・と理論で根拠づけながらすすめられています。
記載されている原則は10ですが、これは著者が理解できたもののみが書き出されています。事例をあげてみますと、
原則1 ムダを100%顕在化する原則
原則2 定位置化の原則
原則9 一体化の原則
などなど。特に一体化の原則などはなかなか理解しにくい、むずかしい原則のように思います。
しかし、単に改善・ムダ取りの技法を習得するよりも、基本に立ち返り原理・原則を理解することや、技法のなかから原理・原則を抽出することが大切なことが理解できます。
◆第二部 原理・原則にもとづく改善・ムダ取りの実践事例
この第二部では、原理・原則にもとづいて実践事例19件が紹介されています。原理・原則を十分に理解していないと改善事例を読んでも理解することが困難になってきます。
記載内容から、4点ほどトピックをあげてみます。
①ムダの排除を直接表す指標(43p)
最も一般的な指標としては、
付加価値労働生産性(=付加価値額/従業員数)
がありますが、製造の現場で改善・ムダ取りをすすめるにあたってはピンとこないところ
があるように思います。ムダの排除を直接表す指標として、
付加価値効率(付加価値をつくり出す正味の時間/1サイクルの作業時間)
が使われていました。
②カラクリ作業台(51p)
指導が行われた2社では比較的大型の製品を製造しています。その為、ワークの移動に
時間がかかり、工程ではワークを一か所に固定して、溶接やサンダーがけなどがされて
おり、作業者がワークの周辺を回ったり、クレーンでワークを回転させていました。
正味の作業時間割合を増やす為、「からくり作業台」というものを新たに導入されました。
これは、作業者が足で油圧シリンダーを操作することで、瞬時にワークを90度回転または
反転できるすぐれもので、作業者が移動をする必要がなく定位置で作業をできるようになっ
ています。確かに全体の作業時間が短縮できそうです。
③「ワークが我慢して待っている」(83p)
大ロットで生産されている現場では、まさに「ワークが我慢して(加工されるのを)待って
いる」状態ですね。この言葉が、指導された会社の中の1社ではよく使われていたそうです。
適切ではない現場の状態を実によく表していると思います。
④一体化の原則の拡大適用
154pからは「一体化の原則の拡大適用」の実践事例が記載されています。先程、一体化
を理解するのは難しいと言いましたが、具体的な内容が書いてありますので、参考にして頂
けたらと思います。
◆第三部 モデル企業での改善・ムダ取りから高利益・強競争力体質への改革のステップ
ここでは改革のステップが7つのステップに分れて書かれています。
ステップ1 個々の工程と作業をより確実なものとする
ステップ2 工程と工程の同期化を図る
ステップ3 溶接組立ラインに合わせた部品加工ラインの同期化を試みる
ステップ4 「1個流し生産」を推進するために自動機・ロボットの稼働条件を明確にする
ステップ5 工場の一隅のムダ取りから出発した改善活動が企業全体の改革活動へと発展する
ステップ6 全社をあげての改善・ムダ取りを推進する
ステップ7 同期化による「一個流し生産」を確立して製品市場の諸種の要望に迅速に応える
正直言ってこれらのステップの内容は説明しきれません。詳細は本を読んでいただくしかありませんが、その基礎となっているものは、
●改善やムダ取りの原理や原則を理解した従業員がいる。
技法の知識だけをもった従業員であってはいけない。
●その従業員が各社にあった手法を積極的に開発・活用している。
そこには、「改善のコンサルタント」はいない。
●職場の一隅(点)から始まった改善が、線となり、面となり、立体となっている。
その時は、現場だけでなく事務管理部門・営業部門等でも改善が進められいる。
●経営トップは全社の目標となる経営ビジョンを提起し、従業員全体で共有する。
共有することで、改善・ムダ取りの活動が経営ビジョンの実現するための活動となっている。
井上 直久(記)
データ
出版社:日科技連
出版年:2007年
ぺージ数:194p
価格:2600円+税(当時)
カバー写真