ⅭⅦ「時の解剖学」を見る聴く、
森の中、闇の中、兵士たち、革命軍か、クーデターの兵士か、小屋に逃げこんで、女兵士も赤ん坊ともに居る、遁走か、銃撃、音、銃弾の光、素晴らしいです、大尉と兵士の諍い、強圧の権力の元の平等か、一部金持ちの見境の無い世界か、どちらかを選ぶしかないのだと、故に、軍の采配の元の権力として、大尉は付いていけないと、兵士は、邪魔なものたちは裁いて、生き延びようと、これはいつの時代だ、いつだって、クーデター、革命、同じことの反復の中、今、瀕死のベッドの男、見守る老婆、死した男、腿を切り裂き銃弾を取りだす、いつのことだろうか、始まりの発端の軍事の時だろうか、今死したのは、大尉、兵士、果たして、夫人は、時計屋の親爺、美しい娘、時の修理、時の修復、だが、時とは、壊れた時計、ねじまき、振り子を動かし、動きはじめる、だが、全うな時を告げているのだろうか、過去が蘇ると云うことか、娘と若者、森の中、木々の中を抜け、竹の足場、そして、蜂の巣、いぶして、蜂を追いだし、蜜を取るのだと、昔ながらの生活、娘と若者、蜂が舞い、飛び、落下し、緊迫、娘は青年の手を握り締める、恋、大きな岩場の上の赤い花、咲き誇って、美しい、その夜だろうか、若者が闇の中、さんざんに殴られ、蹴られ、負傷する、瀕死の怪我、悲しみの娘、しかし、ハッキリとは、誰が誰をいたぶっているのかは判らない、店で手を伸ばして、寝ている娘、マラーの死、ダヴィッド、プレゼンとを持って尋ねた兵士、前の若者との関係は、判らない、サングラスの兵士とともに草原の中、アジト、兵士は命令で動いている、大尉のことが語られて、ならば、さんざんになぶられたのは大尉だったか、アジトに入り込む前に、煙幕を炊く兵士、煙が、草原に、村に、全てを覆い隠すか、美しい風景の中、笑みの娘、恋か、ベッドの瀕死の男、起きだし、町を歩く、ファシスト呼ばわり、誰も相手にしない、消えた男を探し求める夫人、お屋敷に電話、老婆が電話に、男はブルジョアの一家の出か、ニュースで流れる、反乱軍のその後、皆が、始末されずに、生き延び、残され、後に、権力の中枢に復帰したものもあるのだと、近代化の遅れた国では、エリートが余り居ない、権力を握る者も、反抗するものも、数少ない、同じ人物たちが、重なり合って、時の解剖であり、権力の、政治の、経済の解剖でもあるのだ、恋の、今や、見捨てられた、老人、死、棺、葬儀、アジトの兵士が、捕まる、共に居た娘も、捕えられて、車に、またしても、権力の抗争、クラブ、歌うのは瀕死の男に付き添う老婆の若い頃か、出所してくる男、これは怪我した若者、大尉、果たして、若い美しい娘は歌う、クラブ、そこにアジトで捕えられた兵士が、テーブルに、娘に合図、今や、彼も、自由の身か、ブルジョアとして、復活したか、男たちが、重なっていく、女たちも重なっていく、死もまた重なっていく、権力も重なっていく、反乱も重なっていく、葬儀が終わり、一人、老婆が裸で、屋敷の中、彷徨い歩く、横になる、過去をしのぶのだろうか、そして、夢の中か、森の中、裸の老婆、木々の中、一人、静かに、思いに沈む、死、ロマン、二人のロマン、革命、恋、だが、そのあとに、若い美しい娘の裸、老婆の裸に重なって、海辺、二のの娘の裸、あまりに美しい、その二人の娘を覗く、若者、知ってか、逃げ出さないのだから、二人の知っている若者ではないか、大尉と兵士ではないか、男は重なる、若者も、老人も、死人も、革命家も、冴えないすけこましの若者も、重なる、忍び寄り、靴を脱ぎ、娘を抱く、娘は求めていたのか、犯されての悲しみか、うつろな目つき、のけぞっての顔、目、表情、あの森の中に裸で、死していく、ロマンの老婆から、遠く離れて、今、屋敷のベッドから、死したはずの男が起きだす、男の胸に横になって、寝ていた老婆、あの時計屋の娘同様に、腕を伸ばして、寝ていた、ダヴィッドの絵の姿で、男が起きだし、死した男だろうか、いや、老婆が死していたのだ、男が起き、老婆は放られるように、あお向けて、ベッドに、男は女を放って立ちあがり、歩きだす、男たちの権力争い、政治、そこに巻き込まれて、事件に巻き込まれて、女はロマンに沈む、終わる、が、違うのだ、女の思いとは裏腹に、男は相変わらずに、身勝手、女は、あの覗きの若者の様に、抱かれるばかり、仰向けて、何かを静かに見つめるのでもない、正に、放られた、弄ばれて、男の権力争いも、愚かしい、空回り、女の恋もまた、空回り、この重なりこそが、解剖学、空回り、時計屋で、時の中に、静かに、休んでいる美しい娘、何もないのだ、ロマンチックな、革命、闘争、思想、など、男の胸の前で、居眠りして、いや、死しているのだ、放られた、仰向けの、愚かしいばかりの、恥じらいもない、滑稽な、姿こそが、さ迷い歩く男、足を撃たれて、歩けなかったろうが、男、浜辺で裸を見せつけ、覗かれ、犯され、いや、求めてもいて、女、男も女も、老人も、若者も、ときのままならぬ空回り、