私も船で自由な旅がしたいとずーっと考えている。
一応、20代の頃にヨットスクールにも通ったし。
バブルの時代は好奇心旺盛でしたよね。
親子で世界一周、手作りヨットで大西洋・太平洋横断…75歳父「老人のロマンは続きます」
2019年にフランスを出発し、自作のヨットで世界一周の航海を続ける親子がいる。三重県熊野市出身でフランス在住の山門博之さん(75)と長男麿(まろ)さん(43)。大西洋、太平洋をわたり、5月に故郷に近い和歌山県那智勝浦町に寄港。懐かしい紀伊半島で船旅の疲れを癒やしている。(大場久仁彦)
◆水平線を越えてみたい
岸壁にヨットを係留させる山門さん親子(5月10日、和歌山県那智勝浦町で)
博之さんは、地元の高専を卒業後、東京でサラリーマン生活を送ったが27歳で休職。ヨーロッパを自転車旅行中に、後に妻となるフランス人女性と出会った。
フランスの建築会社で設計の基礎を学ぶなどした後、家具のデザインと販売を手がける会社「YAMAKADO」を設立。洗練されたデザインの折りたたみ椅子が賞に選ばれるなどし、事業は軌道に乗った。一方で、幼い頃から太平洋の大海原を見て育ち「自分の力で水平線を越えてみたい」との思いが募った。
2006年、還暦を迎えるのを機に一念発起。造船業者に設計図を描いてもらい、休日を使ってヨット造りに取りかかった。部品を一つずつ取り寄せ、船体はベニヤ板の合板にグラスファイバーを貼り付けて強度を増した。船舶免許も取得し、13年かけて愛艇「ナントマス」(全長12メートル)を完成させた。
家具デザインの仕事に区切りをつけた19年6月、フランス西部のナントを出航した。主要電源は330ワットの太陽光パネル1枚。バッテリーを使うのはエンジンをかける時だけで、全地球測位システム(GPS)や無線などの電源も太陽光でまかなう。
◆コロナで港封鎖
ポルトガルからスペイン領のカナリア諸島までは順調に進んだが、アフリカ西方沖のカボベルデで船体の修理中だった20年春、新型コロナウイルスのため港が封鎖された。ビザが切れるため船を置いてフランスに帰国したところ「会社を辞めてお父さんと旅がしたい」と麿さんから言われ、同年12月、2人で仕切り直しの航海をカボベルデから始めた。
約3か月かけて大西洋を横断後、翌年3月にはパナマ運河を通過し太平洋に出た。8月にタヒチへ。何度も嵐に遭遇し、船内に波が入り電子機器が故障したこともある。メインセールは3回破損し、その都度、寄港先で修理した。