こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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2011-04-14 23:38:16 | 訪問看護、緩和ケア
先日亡くなられた患者さんのお宅へ、お線香をあげに伺いました。

古いけれど、小さな庭のある大きな家です。

窓辺に君子欄が見事に咲いていました。
南に向いたその部屋で、その家のご主人は静かに旅立たれました。

2日前には待望の訪問入浴をとても喜んで、前日には大好きな海を見に、家族全員で行きました。

主治医も私たちも「ぜひ、行ってください。」と送り出しました。

もし、万が一途中で呼吸が止まっても、そのまま連れて帰って連絡をもらえれば、不審死扱いにならないこともお話ししました。

奥様は、本当はもう少し時間があると思っていたのだそうです。

けれど、訪問診療と訪問看護が入り、残りの時間がほとんどないことに驚いたようでした。

それでも急遽車を手配し、ご主人もちゃんと海を見て、たくさん思いで話をして、自宅に帰ってくることが出来ました。
そして、その夜から深い眠りに入り、翌日本当に眠るように旅立っていかれました。


その奥様が、ご主人の笑顔の遺影の前で、こんなこと言いました。

「ちょっと、ご相談というか・・・。」

「本当はこの家を手放して、海のそばに家を買って最後の時間を過ごそうかと思っていたんですが、それも間に合わなくなってしまって・・。私たちには小さな家がもう一軒あるんです。
私はもう一人だし、主人のこれ(遺影やお骨)をもってそちらに移ろうかと思っているんです。
今、東北の人たちは避難先がなかったりで大変でしょう?
こんな古い家でよかったら、子供さんがいる大家族の方に来てもらったらと思うんです。
2年ぐらいすれば、また東北に帰れるでしょう?それまで、売らないで使ってもらう事出来るかしら?と思って。」

とても胸が熱くなりました。
自分だって、最愛の夫を亡くして、まだまだ悲しみや寂しさは癒えないはずなのに、ご自分で何ができるかをきっとずっと考えていたのでしょうね。

今、そういう善意があってもいろんな障害が立ちはだかって、もしかしたら思うようにいかないかもしれないけれど、でもやってみないとわからないですよね。

「すごくいいと思います。きっとご主人はそれが出来たらとても喜ばれると思います。」
そんな私たちの言葉に、「区役所に相談に行ってきます。」と恥ずかしそうに笑って答えてくれました。
もしかしたら、後押しをしてほしかったのかもしれません。

この家で、小さな子供やお年寄りのいる家族が、故郷復興の日まで元気に暮らし、て生活を立て直すことが出来たらどんなに素敵でしょうか。
もし、そんなことが出来たら、たくさんお手伝いがしたいのに。
同行したケアマネと、うるうるしながら「かなったらいいね。」と言いながらもどりました。

福島差別がささやかれる一方で、ちゃんと正しい目で何とか支援しようとする人たちもたくさんいます。
ほとんどの人がそうなのだと思います。

そういえば、いつも素敵だなあと思いつつ読んでいる有賀先生のブログ「緩和ケア医の日々所感」にとても思い白いというか、なるほどなあという記事がありました。

一つは、「下痢には炭酸飲料」の話と「放射線の知識の整理」という話です。

なんだか、読んでいたら元気が出ました。
テレビで盛んに言っている放射線って、こういうことなのかと少し納得。
ヘぇ~!!って思いますので、ぜひ読んでみてくださいね。