杉ちゃんのWEB日記

国際山岳ガイド 杉坂 勉のブログ

検定無事終了(オートルート後編)

2013-04-22 22:50:15 | 杉ちゃんのシャモニ便り2013(スキー編)

18日もまたまた快晴。なんと天気には恵まれていたことか!

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この日は長い長いOtemma氷河をさかのぼり、Petit Mont Collonの手前を右に入ってPetit Mont Collon氷河のどん詰まりにあるCol d' Oren越えです。

しかも担当ガイド役が私。緊張のうちに夜が明けていきました。

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写真ではぱっとしませんが、右の写真中央に聳えているのがPetit Mont Collon。つまりそのどん詰まりまで行って、さらに右の氷河へと入って行くわけです。

とかくガイド役になると色々と考えるもので、この日はとにかくセーフティーにを心がけ、Otemma氷河をさかのぼっているときも、なるべくラインをモレーン帯にとり、クレバスに乗らないように乗らないようにとしたのですが、あまりにも考えすぎて時間をロス・・・

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当初Otemma氷河のみのコースタイムは2時間程度と考えていたのですが、なんと倍の4時間近くもかかってしまいました・・・とほほ・・・

少し前にいたはずの先行ガイドパーティーは、はるか彼方・・・今年の氷河の様子なら、もっとど真ん中を行った方がよかったのかもしれませんね・・・

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さてようやくOtemma氷河を渡り切り、Petit Mont Collon氷河へ入ってCol d' Orenも目前に見えてきました。ギザギザした岩稜のいったいどこを越えてけばいいのやら!

幸い逆側から越えたトレースがあったので、これを参考にラインを考察。スキーをザックに括り付けて登高開始。しかしグサグサのモナカ雪はかなり歩きにくいうえ、よく見るとそのモナカの中には大岩やらスラブに乗っているだけ・・・けっこうな緊張感を味わいながらの登高となりました。

そして登り切ったその先は憧れの「イタァーリャー!」そう、ここCol d' Orenは国境なのです!!

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コルからイタリアへは懸垂下降で入国していきます。

2ピッチで下の雪面へ。しかもここはイタァーリャーの雪面!しかも南面!?え??そして雪は重たい湿り雪・・・

そうここは南面に当たるため灼熱の地、イタァーリャーだったのです・・・・・・・・

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僕らのいるOrenの谷は、どこもかしこも雪崩の巣。そっちこっちでドカン、ドカンと大音響をとどろかせ、重たい雪崩が落ちているではありませんか・・・しかも小屋は目前なのに直線距離では雪崩が危険すぎて滑りこめない!

そんな中雪崩の巣をかいくぐり、転べば靭帯をやっちまいそうな重たい雪に足を取られながら何とかOrenの谷を滑り切り、その後高差300mを登り返し、大きく大きく迂回しながらも、午後5時少しまえにNacamuliの小屋へたどり着くことができました。やれやれ。

たどり着いたNacamuliの小屋はまさしくイタァーリャー!適当さといい加減さがまた心地よい感じ??しかもかなり空いている。昨日までの喧騒とは大違いだ!そして物価が安い!!まるで天国!?

またまた甲羅干しと装備干しを敢行し、いい気分で夜を迎えることができました。

さてさて、ここまで怖いくらいに順調な進捗状況でしたが、明後日からの天気が芳しくなさそうな気配。長期予報でもそれは分かっていたのですが、本当に悪そう。

シャモニのガイドも、もしツェルマットまで行きたければ、明日中に行けと助言してくれるではありませんか。

予定では明日、さらにイタリア側のBeca Vannettaを滑り、その後700mの標高差を登り返してAostaの小屋へ行き、明後日にスイス側へ再び登り返してツェルマットへ下るのですが・・・

悩んだ末、明日中にツェルマットへ下ることに決定。床につきました。

ちなみにこのNacamuli小屋の夕食は、ボリューム満点で味もかなり美味!はまさしくビバ!イタァーリャー!でした。

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そして情熱の国の夜は明けて、いよいよ最終日の朝がやってまいりました。

体調は決して万全ではありません。すでに太ももはかなりの疲労。これに伴い古傷の膝も少しチクリチクリと痛みます。でももう行くしかありません。Go to Zermatt!!

この日の出だしはCol Collonまで登り返し、さらに北のミーシャ大先生(佐々木大ちゃん)が以前から目を付けていたというアラスカ級の大斜面、Mont Bruleのスイス側北斜面の滑降に向かうところから始まりました。

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まずは薄明るくなるのを待ち、ヘッドランプの明かりを頼りにカリカリ斜面を滑り、シール、クトーを装着し、Mont Bruleの肩へ。さすがに山頂からは45度オーバーの傾斜なので、本日は肩からの滑降。

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肩からの出だしはなんとパウダー!標高が高いうえに北斜面なので残っていたのでしょうか?しかもノートラック!!!!

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この日のガイド役の滝本さんの先導のもと、みんな思い思いのラインをこの大斜面に刻むことができました!

ちなみに一番ノリノリだったのは、宮下教官だったなー。

大ちゃんも最後ガッツポーズしてたなー。小さくだけど・・・見逃さなかった・・・。

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さてさてお楽しみの後は再び現実。Arolla氷河の最上部をトラバースし、Col du M,Bruleを越えTsa de Tsan氷河へ。

眼下には今日行くはずだったAostaの小屋が。んんん。よく見ると小屋の周りは雪崩の後だらけ!しかもいくつかは小屋を飛び越えているような気配も!!

しかも小屋に至る谷筋は狭く、どこも雪崩の巣。そして今日も快晴・・・「やっぱ、行かなくて良かったね・・・」これがみんなの一致した意見でした。

Tsa de Tsan氷河からはガイド役交代で、なんと最後の栄誉はこの私に!!

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目前には、懐かしい勝利の峠“Col de Valpelline”が私たちを待っています!!

前日の反省を思い返し、ちょっと緊張気味に登って行きました。

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やがて目の前には尖った三角形のピークが。それは次第に大きくなり、そして右に特徴的なリオン稜を従えたMatterhornへと姿を変えていきました。

そして11時20分、ついに快晴の空の下、勝利の峠へたどり着くことができました。

2回目のCol de Valpelline。4年前とは少し感じが違って、でも私自身はとても落ち着いた感じで周囲を見る自分に気が付いたのを今でも覚えています。

あれから4年。長いようであっという間の4年間。少しは成長した姿をMatterhornに見せることができたのかな・・・

さてさて感傷にふけっている時間はあっと今に過ぎていき、再び現実の世界がまたまたやってきました。

でも今回は、念願の滑りのパート。しかもクライマックス。これ以上ないシチュエーションの中でスキーができるなんて!

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ちょっと疲れてはいたものの、割と安定したStockji氷河のメローな大斜面を気持ちよく滑り、

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大きく右にトラバースしたのち、クレバスを右に左に避けながらTiefmattn氷河に入り、途中大休止をはさみながら、かみしめるような思いでZmutt氷河を、Matterhornの北壁の下をトラバースしていきました。

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やがて風景は樹林帯、と氷河の沼地が見られるようになり、ほどなくStafelへ。Matterhorn北壁側からの湿雪雪崩が思った以上に多く、ハイトラバースをかけることができず、かなり下の車道に出てしまいましたが、まあ仕方ないか。あとはスキーを担いですでに閉鎖されたStafelのスキーゲレンデへ。あとはゲレンデの林間コースをひたすらひたすらFuriへ。

ここでお昼と、祝杯?に相成り、2時間ほど反省会??

最後は飲酒ライディング??となってしまいましたが、無事にZermattへ下山。感動のフィナーレを迎えることができました。


検定無事終了(オートルート前編)

2013-04-22 21:33:25 | 杉ちゃんのシャモニ便り2013(スキー編)

いやー、皆様大変ご無沙汰いたしました。

ブログの更新もままならないまま1週間。何とか無事に3泊4日のオートルートを乗り切り、昨日シャモニへ戻って参りました。

まずはこの間の経緯などご報告させていただきますと、予定通り現地時間の4月15日午前7時にシャモニを出発。

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国境を越えてスイスのMartignyからさらに奥のBourg-St-Pierreへ。ここから入山し、初日は炎天下のValsoreyの谷をハイクアップし、Grand Combinの南面にあるValsorey小屋を目指しました。

気温はさほどでもなかったのですが、とにかく狭い谷の中はうだるような熱気!ヘロヘロ状態で小屋へたどり着きました。

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Valsorey小屋は3030mの高所にあり、彼方にはモンブラン山群も望めます。この日は憎らしいほどの晴天だったので、グランンドジョラスが右側に北壁をそぎ落とした姿で聳え、ひときわ目立っておりました。

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翌16日もまずまずのいい天気予報。早朝6時に小屋を出発し、Grand Combinの内懐に広がるPlateau du Coulorをめざしハイクアップ。いよいよ急になった斜面は、前日まではビシャビシャのザラメ雪でしたが、冷え込んだ朝は再凍結しカッチカッチ!クトー(スキーアイゼン)を装着し、爪を食い込ませながらの登高でした。

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目前に露岩が目立つようになるといよいよ傾斜も増し、スキーでは登高は無理。アイゼンに履き替え雪壁をショートロープで上がっていきます。いやーこの時はきつかったー。スキーブーツではとにかく歩きにくいうえでのショートロープ。ましてやスキーを担いでですからね・・・

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それでも何とかPlateau du Coulorへたどり着き、ひと滑りの後再び登りcol du Sonadonへ。時々ガスりはするものの、視界はまずまず良好。写真中央のピークから左へ広がる大斜面にラインをとり、標高差約100mのメローな斜面を楽しむことが出来ました。

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その後はMont Duraud氷河の右岸をなめるように右へトラーバースそしてトラバース。

標高も下がりいよいよ雪も重たくなってきましたが、Chanrionの谷へのくだりも、わずかに残る良いラインを求めトラバース。まるで歯磨き粉のチューブを、最後の最後まで絞りだすかのごとく滑り下りてきました。

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下りきったChanrionの谷では、昨日に引き続きの炎天下・・・水浴びなどしている人もいましたね・・・

更にスイスの小屋は物価が高く経費がかさむので、ここで飲料用の水も補給。涙ぐましい努力もありました・・・

さてさてなんだかんだで順調にChanrionの小屋へたどり着き、甲羅干しやら装備干し、カラダはかなりきつい感じでしたが、のんびりと過ごし翌日のCol d' Oren越えに備えました。