12月24日、横浜地裁は3年以上に及ぶ裁判「上畠元鎌倉市議会議員の差別発言問題」に対する
請求について、判決を言い渡した。
上畠元鎌倉市議員(現神戸市議)の議会での発言が「差別的発言であった」とし、
その違法性を認定したことは、公正な判断が下されたと一定評価するとともに、安どする思いがした。
一方、差別発言を発した上畠氏本人の責任が問われなかったことや、
議事録削除等の請求が棄却されたことは、残念であり、不十分であると言わざるを得ない。
判決文の中では、上畠元鎌倉市議の発言が「差別発言」と認定するにあたって次のように述べられている。
「…被告上畠は、『〇〇〇』または『〇』という、一見して在日コリアンとして朝鮮半島にルーツを持つ
ものに多い原告の実名を複数回提示した上で、本件提示行為(名刺を提示した行為)を…やくざまがいの
行為であると否定的に表現し…公安調査庁と連絡を取り合って原告のことを調査しているとの発言をしていた。
係る経緯の中で、ことさら『出身』に言及する本件発言(私、特に出身が出身だけに本当に怖い)がなされ
たことを前提に、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、同発言は、本件提示行為(名刺を提示
した行為)を行った原告が、在日コリアンの出自を持つことから、被告上畠は強い恐怖心を感じるという
意味の発言であり、在日コリアンに対する差別意識を前提に、在日コリアンという原告の出自を理由に原告
を不当に貶める差別的発言と認められる。…被告は「自分が大阪出身であり、やくざに関する問題があるこ
とを目の前で見てきたので、怖いんだ」という趣旨の発言であると主張する。しかしながら、議事の様子は
一般に公開され、その会議録はインターネット上において公開されることに照らせば、本件議会内発言にお
いても一般読者の普通の注意と読み方を基準にするべきであるし、本件発言が被告上畠自身の出身に関連す
る言及が全くない文脈でされたものであることに照らせば、一般読者において本件発言が被告上畠の出身地
を意味するものと解する余地はない。被告上畠の主張を採用することはできない。
そして、在日コリアンに対する差別意識を前提に、在日コリアンという原告の出自を理由に原告を不当に
貶める差別発言である本件発言は鎌倉市議会議員としての職務に関わりなく、違法または不当な目的をもっ
てなされたものであると言えることから、被告上畠が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し
たものと認め得るような特別な事情が認められる。したがって、同発言については、国賠法上の違法性が
認められる。」
なお、差別的発言に該当するのではないかとして、原告が提出し審議された発言は、もろもろ38か所に及んでいる。
一方これまで、「市には責任がない」としていたことについて、判決では11万円の支払い命令が出た。
その理由を判決文の中で次のように述べられている。
「被告鎌倉市は、①本件議場内発言が公開された本券ウェブサイトの管理は鎌倉市議会によって行われており、
被告鎌倉市は当事者的確を有さない。②本件訴訟における被告鎌倉市の代表権を有する者は議長であり、市長
を代表者として被告鎌倉市を被告とする本件訴訟は、代表権の内者に対するものであることから訴訟要件を欠
いている旨主張する。
しかしながら、地方自治法は、地方公共団体を法人とする旨を定めている一方で、議会については、普通地方
公共団体に議会を置くと定めていることからも明らかなように、議会は地方公共団体の内部機関であって、
独立の法人格を有さない。したがって、被告鎌倉市が当事者的確を有することは明らかである。……」
これまで、鎌倉市は県人権センターからの申し入れに、繰り返し「議会の問題であり、…差別発言であると
判断する立場にない」と回答してきた。
共生社会の実現を掲げる鎌倉市のスローガンが、言葉だけのものであり、共生条例さえも、空虚なものに感じる。
昨日27日、神奈川労働プラザで行われた「報告集会」に参加した。
原告本人はあいさつの中で、「後ろから突然殴られて、立ち上がって『何をするんですか』と言うのは正直しんどかった」
と、胸の内を吐露された。これまで気丈にふるまい冷静に闘ってきた原告は、私たちが想像する以上に傷ついていたのだと
思う。引き続き、原告の人権回復を目指して、ともに頑張っていきたい。
そして、共生条例を持つ鎌倉市は判決を真摯に受け入れるべきであり、控訴するべきではない。
そして、議事録削除を進めるべきである。
最後に鎌倉市議会の対応について一言触れたい。
上畠元鎌倉市議の差別発言については、神奈川人権センターからの申し入れを受けて、2017年11月20日、
議会運営委員会で審議した。議員10人、傍聴1人のうち「差別発言である」と明確に表明したのは竹田と保坂議員の
二人のみであったため、鎌倉市議会として「上畠氏の発言が差別発言である」との判断を下せなかったことは、
はなはだ残念でならない。
改めて司法の場で、「差別発言」と認定されたことについて、議会として判断できなかったことを恥ずべきである。
鎌倉市議会は、この度の司法の判断を真摯に受け止め、今からでも遅くはない、なすべきことをするべきであると思う。
請求について、判決を言い渡した。
上畠元鎌倉市議員(現神戸市議)の議会での発言が「差別的発言であった」とし、
その違法性を認定したことは、公正な判断が下されたと一定評価するとともに、安どする思いがした。
一方、差別発言を発した上畠氏本人の責任が問われなかったことや、
議事録削除等の請求が棄却されたことは、残念であり、不十分であると言わざるを得ない。
判決文の中では、上畠元鎌倉市議の発言が「差別発言」と認定するにあたって次のように述べられている。
「…被告上畠は、『〇〇〇』または『〇』という、一見して在日コリアンとして朝鮮半島にルーツを持つ
ものに多い原告の実名を複数回提示した上で、本件提示行為(名刺を提示した行為)を…やくざまがいの
行為であると否定的に表現し…公安調査庁と連絡を取り合って原告のことを調査しているとの発言をしていた。
係る経緯の中で、ことさら『出身』に言及する本件発言(私、特に出身が出身だけに本当に怖い)がなされ
たことを前提に、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、同発言は、本件提示行為(名刺を提示
した行為)を行った原告が、在日コリアンの出自を持つことから、被告上畠は強い恐怖心を感じるという
意味の発言であり、在日コリアンに対する差別意識を前提に、在日コリアンという原告の出自を理由に原告
を不当に貶める差別的発言と認められる。…被告は「自分が大阪出身であり、やくざに関する問題があるこ
とを目の前で見てきたので、怖いんだ」という趣旨の発言であると主張する。しかしながら、議事の様子は
一般に公開され、その会議録はインターネット上において公開されることに照らせば、本件議会内発言にお
いても一般読者の普通の注意と読み方を基準にするべきであるし、本件発言が被告上畠自身の出身に関連す
る言及が全くない文脈でされたものであることに照らせば、一般読者において本件発言が被告上畠の出身地
を意味するものと解する余地はない。被告上畠の主張を採用することはできない。
そして、在日コリアンに対する差別意識を前提に、在日コリアンという原告の出自を理由に原告を不当に
貶める差別発言である本件発言は鎌倉市議会議員としての職務に関わりなく、違法または不当な目的をもっ
てなされたものであると言えることから、被告上畠が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し
たものと認め得るような特別な事情が認められる。したがって、同発言については、国賠法上の違法性が
認められる。」
なお、差別的発言に該当するのではないかとして、原告が提出し審議された発言は、もろもろ38か所に及んでいる。
一方これまで、「市には責任がない」としていたことについて、判決では11万円の支払い命令が出た。
その理由を判決文の中で次のように述べられている。
「被告鎌倉市は、①本件議場内発言が公開された本券ウェブサイトの管理は鎌倉市議会によって行われており、
被告鎌倉市は当事者的確を有さない。②本件訴訟における被告鎌倉市の代表権を有する者は議長であり、市長
を代表者として被告鎌倉市を被告とする本件訴訟は、代表権の内者に対するものであることから訴訟要件を欠
いている旨主張する。
しかしながら、地方自治法は、地方公共団体を法人とする旨を定めている一方で、議会については、普通地方
公共団体に議会を置くと定めていることからも明らかなように、議会は地方公共団体の内部機関であって、
独立の法人格を有さない。したがって、被告鎌倉市が当事者的確を有することは明らかである。……」
これまで、鎌倉市は県人権センターからの申し入れに、繰り返し「議会の問題であり、…差別発言であると
判断する立場にない」と回答してきた。
共生社会の実現を掲げる鎌倉市のスローガンが、言葉だけのものであり、共生条例さえも、空虚なものに感じる。
昨日27日、神奈川労働プラザで行われた「報告集会」に参加した。
原告本人はあいさつの中で、「後ろから突然殴られて、立ち上がって『何をするんですか』と言うのは正直しんどかった」
と、胸の内を吐露された。これまで気丈にふるまい冷静に闘ってきた原告は、私たちが想像する以上に傷ついていたのだと
思う。引き続き、原告の人権回復を目指して、ともに頑張っていきたい。
そして、共生条例を持つ鎌倉市は判決を真摯に受け入れるべきであり、控訴するべきではない。
そして、議事録削除を進めるべきである。
最後に鎌倉市議会の対応について一言触れたい。
上畠元鎌倉市議の差別発言については、神奈川人権センターからの申し入れを受けて、2017年11月20日、
議会運営委員会で審議した。議員10人、傍聴1人のうち「差別発言である」と明確に表明したのは竹田と保坂議員の
二人のみであったため、鎌倉市議会として「上畠氏の発言が差別発言である」との判断を下せなかったことは、
はなはだ残念でならない。
改めて司法の場で、「差別発言」と認定されたことについて、議会として判断できなかったことを恥ずべきである。
鎌倉市議会は、この度の司法の判断を真摯に受け止め、今からでも遅くはない、なすべきことをするべきであると思う。