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安倍晋三首相が経済協力を打ち出したロシア極東で、日本との関係拡大に期待する声が強まっている。首相が出席した「東方経済フォーラム」が開かれたウラジオストクでは、多くの市民らが驚きを交えながら歓迎の言葉を口にしていた。
ただ同地域は深刻な汚職体質で知られ、経済状況も厳しい。ロシア側が領土問題を棚上げする姿勢を強めるなか、経済協力が一方的なものになり、日本企業にメリットが生まれなければ、安倍政権は新たな批判を招きかねない。
■中国、韓国よりも日本
「あなたの国の首相の演説は本当に良かった。私は日本を支持する。中国よりも、韓国よりも、日本が大事だ。私は日本車が大好きだ」
「街を見たら、どれほど日本の物があふれているか分かるでしょう。私たちは、日本なしの生活なんて考えられないのです」
「実現すれば、本当にすばらしいこと。でももし首相が代わってしまったら、その後も同じようにロシアに関わってくれるのかしら、、、」
経済フォーラム終了後のウラジオストクの街中では、多くの市民らが日本への強い期待を口々に語った。「安倍首相が交代しても、日本の首相はウラジオストクに来てくれるのか」「今だけの関係ではないのか」と心配したように記者に訪ねる人も少なくなかった。
ロシアのなかで日本に最も近い極東地方は、首相が打ち出した経済協力の重点対象地域とされる。1990年代、ソ連崩壊後、経済危機に陥ったロシア中央政府の開発計画から見放されるなか、極東の人々は日本製中古車の輸入業などに活路を見いだし、自力で地域経済を支えた。ウラジオストクの路上は現在も、日本の中古車であふれかえり、さまざまな日本の商品を扱う店舗や、メイド喫茶のような寿司屋まであった。多くの市民にとり、日本は切っても切れない存在であることは間違いない。
■厳しい経済状況
そのようななかで彼らが日本に強い期待を寄せるのは、極東経済が再び厳しい状況に置かれている実態と無縁ではない。
ウラジオストクを含む極東連邦管区では今年1-5月、全地域で住民の実質収入が減少した。域内投資額も昨年、下落した。日本海に面する極東ではアジア各国から商品を買い付け、それを露国内で転売する中小規模の輸入業者が多いが、ウクライナ危機以降の通貨ルーブルの暴落で買い付けが困難になり、彼らの生活は厳しい局面にたたされている。
「仕事を3つ掛け持ちするなんて、“ざら”よ。誰もが、ちょっとでもお金を稼いだら、この街から出ていこうとしている。今ここで働いているのは、街を出ることすらできない人々ばかり」
フォーラム会場から市内の取材現場まで記者を送ってくれた30歳前後の女性タクシー運転手は、ウラジオストク市の置かれた現状をこう語ってくれた。他にも多くの人々が、経済状況の悪化を訴えていた。
■深刻な汚職問題
ただ極東地方は、その汚職体質への批判が絶えない。
ソ連崩壊以降、中央政府の保護もなく経済を支えざるを得なかった極東では、違法なビジネスが蔓延したのも事実だ。当時と比べれば状況は大きく改善したとされるが、そのような時代を強く思い起こさせる事件がフォーラムのわずか3カ月前に発生した。
6月上旬、ウラジオストクでは当時の市長が職権乱用などの容疑で逮捕された。親族が経営する企業に公共事業を不正に受注させたとの容疑だったが、同市の市長摘発は、退職後を含めると実に3代連続となってしまった。
安倍首相が5月、露南部措置での日露首脳会談で8項目の経済協力を打ち出した直後だっただけに、日本企業関係者からも強い落胆の声が聞こえた。
■信頼失う
現在、日本からの個人輸入業を細々と続けているというウラジオストク市内に住むロシア人男性は、今回の日露の経済関係強化の動きを受け、再びビジネスを拡大したいと意気込んだ。
ただ彼は以前、自分の周りで日本側をだまし、商品代金を支払わず雲隠れした業者たちを目撃していたという。
男性は記者に対し、自戒を込めるようにつぶやいた。「今度同じことを繰り返せば、われわれはもう二度と信頼されないだろう」(ウラジオストク 黒川信雄)
安倍晋三首相が経済協力を打ち出したロシア極東で、日本との関係拡大に期待する声が強まっている。首相が出席した「東方経済フォーラム」が開かれたウラジオストクでは、多くの市民らが驚きを交えながら歓迎の言葉を口にしていた。
ただ同地域は深刻な汚職体質で知られ、経済状況も厳しい。ロシア側が領土問題を棚上げする姿勢を強めるなか、経済協力が一方的なものになり、日本企業にメリットが生まれなければ、安倍政権は新たな批判を招きかねない。
■中国、韓国よりも日本
「あなたの国の首相の演説は本当に良かった。私は日本を支持する。中国よりも、韓国よりも、日本が大事だ。私は日本車が大好きだ」
「街を見たら、どれほど日本の物があふれているか分かるでしょう。私たちは、日本なしの生活なんて考えられないのです」
「実現すれば、本当にすばらしいこと。でももし首相が代わってしまったら、その後も同じようにロシアに関わってくれるのかしら、、、」
経済フォーラム終了後のウラジオストクの街中では、多くの市民らが日本への強い期待を口々に語った。「安倍首相が交代しても、日本の首相はウラジオストクに来てくれるのか」「今だけの関係ではないのか」と心配したように記者に訪ねる人も少なくなかった。
ロシアのなかで日本に最も近い極東地方は、首相が打ち出した経済協力の重点対象地域とされる。1990年代、ソ連崩壊後、経済危機に陥ったロシア中央政府の開発計画から見放されるなか、極東の人々は日本製中古車の輸入業などに活路を見いだし、自力で地域経済を支えた。ウラジオストクの路上は現在も、日本の中古車であふれかえり、さまざまな日本の商品を扱う店舗や、メイド喫茶のような寿司屋まであった。多くの市民にとり、日本は切っても切れない存在であることは間違いない。
■厳しい経済状況
そのようななかで彼らが日本に強い期待を寄せるのは、極東経済が再び厳しい状況に置かれている実態と無縁ではない。
ウラジオストクを含む極東連邦管区では今年1-5月、全地域で住民の実質収入が減少した。域内投資額も昨年、下落した。日本海に面する極東ではアジア各国から商品を買い付け、それを露国内で転売する中小規模の輸入業者が多いが、ウクライナ危機以降の通貨ルーブルの暴落で買い付けが困難になり、彼らの生活は厳しい局面にたたされている。
「仕事を3つ掛け持ちするなんて、“ざら”よ。誰もが、ちょっとでもお金を稼いだら、この街から出ていこうとしている。今ここで働いているのは、街を出ることすらできない人々ばかり」
フォーラム会場から市内の取材現場まで記者を送ってくれた30歳前後の女性タクシー運転手は、ウラジオストク市の置かれた現状をこう語ってくれた。他にも多くの人々が、経済状況の悪化を訴えていた。
■深刻な汚職問題
ただ極東地方は、その汚職体質への批判が絶えない。
ソ連崩壊以降、中央政府の保護もなく経済を支えざるを得なかった極東では、違法なビジネスが蔓延したのも事実だ。当時と比べれば状況は大きく改善したとされるが、そのような時代を強く思い起こさせる事件がフォーラムのわずか3カ月前に発生した。
6月上旬、ウラジオストクでは当時の市長が職権乱用などの容疑で逮捕された。親族が経営する企業に公共事業を不正に受注させたとの容疑だったが、同市の市長摘発は、退職後を含めると実に3代連続となってしまった。
安倍首相が5月、露南部措置での日露首脳会談で8項目の経済協力を打ち出した直後だっただけに、日本企業関係者からも強い落胆の声が聞こえた。
■信頼失う
現在、日本からの個人輸入業を細々と続けているというウラジオストク市内に住むロシア人男性は、今回の日露の経済関係強化の動きを受け、再びビジネスを拡大したいと意気込んだ。
ただ彼は以前、自分の周りで日本側をだまし、商品代金を支払わず雲隠れした業者たちを目撃していたという。
男性は記者に対し、自戒を込めるようにつぶやいた。「今度同じことを繰り返せば、われわれはもう二度と信頼されないだろう」(ウラジオストク 黒川信雄)