立憲民主党の生方幸夫衆院議員(比例代表南関東ブロック)が、9月に千葉県松戸市で行った会合で、北朝鮮による日本人拉致問題について「日本から連れ去られた被害者というのはもう生きている人はいない」などと発言したとして、拉致被害者家族会と支援組織「救う会」は11日、発言の取り消しと謝罪を求める抗議声明を出した。声明では「すべての拉致被害者の救出のため心血を注いできた被害者家族、支援者、被害者自身の生命に対する重大な侮辱であり冒涜(ぼうとく)だ」と非難した。 救う会などによると、生方氏は9月23日、松戸市での会合で拉致問題について見解を問われ、横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=について「横田さんが生きているとは誰も思っていない。自民党の議員も」とした上で、「拉致問題、拉致被害者は今、現在はいないと捉えられる、政治家は皆そう思っているということ」などと発言した。 また平成16年に北朝鮮が提出し、日本側が別人と鑑定しためぐみさんの偽の遺骨について「遺骨からDNAを鑑定して、それが横田さんであるのかないのかというような技術力はなかった」とした。 死亡の根拠について問われると、「客観的情勢から考えて生きていたら(北朝鮮は横田さんを)帰す。帰さない理由はない」と説明。「生きているのだったら何かに使いたい。1回も使ったことがないですから、残念ながら亡くなってしまっているから使いようがない」などと主張した。 一方、14年の日朝首脳会談で北朝鮮が拉致を認めて謝罪し、帰国した5人の被害者について、北朝鮮に一度返すとした約束を日本側が守らなかったとし、「首脳同士で話をして決めたことも守らないなら、それはだめなのではないか」と述べた。 「拉致した当人は北朝鮮政府なのだから、責任を取らなきゃいけない」とする一方、「自分の意志で入ったが、もう自分の意志では出られなくなったという人を含めて行方不明者、拉致被害者というように言っている」と指摘。「日本国内から連れ去られた被害者は、生存者はいないのだと思う」と重ねて主張した。 これに対し、家族会などによる抗議声明では「生方議員は人の命に関わる重大な人権問題について、日本政府の基本的立場を否定して、北朝鮮の主張に賛同している」と批判。生方氏が所属する立憲民主党に対し、「生方議員発言を党としてどう考えるのか、ぜひお聞かせ願いたい」としている。 北朝鮮は14年9月の日朝首脳会談で拉致を認めて謝罪し、5人を帰国させた。だが、ほかの被害者については8人が「死亡」、4人が「未入境」と主張した。 16年の日朝実務者協議ではめぐみさん本人のものだとする「遺骨」を提出したが、持ち帰った日本側は約1カ月かけてDNA型鑑定を進め、別人の骨であることを確認した。北朝鮮側は遺骨について「火葬した」と説明したが、通常の火葬よりも高温の1200度で焼かれていたことが判明。DNA型の検出を困難にしようとした可能性が指摘されている。 政府は拉致被害者の「死亡」を裏付けるものが存在しないとして、北朝鮮に誠実な対応を求めてきた。岸田文雄政権も拉致被害者全員の早期帰国を最重要課題に掲げている。
韓国の与党「共に民主党」の大統領候補に指名された李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事は大統領候補に選出された直後の受託演説で「大転換の危機を大跳躍の機会にしていく」と切り出し、「日本を追い越し、先進国に追いつき、やがて世界を先導する国、大韓民国をつくる」と宣言していた。
振り返れば、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も日本から半導体素材の輸出規制を掛けられた2019年に国民向け談話で「我々は日本に勝つ」と言っていた。この時は「北朝鮮との経済協力が実現すれば」との条件付きであった。南北が融和し、人口8千万人の単一市場、経済共同体を構成できれば「日本に一気に追いつくことができる」という理屈だった。史上初の米朝と3度にわたる南北首脳会談が開かれたこともあって文大統領の発言はそれなりの説得力があった。
世界の3大投資家の一人として知られている米国のジム・ロジャーズ氏(現ロジャーズ・ホテルディングス会長)が「統一コリアと日本を比較した場合、日本は相手にならないだろう」と予言したように韓国の技術力と資本、ノウハウなどを使って北朝鮮の豊富な地下資源と教育レベルの高い、勤勉で安価な労働力を活用すれば、将来、その日が訪れるかもしれないが、対立を繰り返す近親憎悪の南北の現状を考えれば、文大統領の南北統一の夢は幻想であり、構想は絵に描いた餅であった。分断から76年経っても統一を達成できない韓国と北朝鮮が今後、20年、30年内に統一できるとはとても思えない。
李知事は文大統領とは異なり、韓国民が「第二次世界大戦後の最貧国から世界10位の経済大国に躍進させた」ことや「IMF危機(1997年の金融危機)をいち早く克服した」こと、「日本の輸出報復に短期間で完璧に勝った」こと、そして「気候危機と技術革命、世界的な感染病にもっとも上手く対応した」ことなどの「実績」をその根拠として列挙していた。
日本の経済成長率はこの20年間でマイナス20%なのに対して韓国の成長率はプラス158%となっていること、世界デジタル経済力評価でも、一人当たりの購買力評価基準である国民所得(DGP)でも、初任給でも平均年収でも韓国が日本を上回っていることなど、さらにスマートフォン、半導体、家電製品、バッテリーなど先端産業や電子分野で日本よりも優位に立っていることなどが李知事の自信の裏付けになっているのかもしれない。
韓国人の多くはこの李知事の心地の良い発言に酔いしれるかもしれないが、傍から見ると、虚勢にしか聞こえない。そのことは先の真鍋俊郎氏のノーベル物理学受賞のニュースに接した韓国の反応からも窺い知れる。一言で言うと「またか、それにしても日本は凄い!それに較べて我が国は。。。とほほ」というものであった。
ノーベル賞を受賞した日本人は28人。国別ランキングでは世界で7番目に多いノーベル賞受賞国である。受賞者の中には化学、生理学・医学、物理学など基礎科学と源泉技術の象徴である科学分野の受賞者が25人も含まれている。
これに対して韓国はたったの1人、それも平和賞である。ちなみに平和賞は日本も佐藤栄作元首相が1974年に受賞している。
経済、社会、文化の発展を担保する科学技術の水準では韓国はまだまだ日本よりも遅れを取っているのが実情である。そのことを立証したのが、およそ2か月前の「韓国が日本に勝てる?・・・依然として科学技術に差が」との見出しの韓国経済紙「アジア経済」の記事(8月16日付)である。
同紙は今年3月に韓国科学技術通信部が2年ごとに発表している「11大分野主要先進国と韓国の技術水準評価」のデーターを参照し、日本と韓国の科学技術水準を比較していたが、韓国が日本よりも先行している分野は一つもなった。
米国のレベルを100とすると、「宇宙・航空・海洋分野」は日本83.5%に対して韓国68.4%、「機械・製造分野」は日本90.3%対韓国80.7%、「素材・ナノ分野」は日本97.6%対韓国80.8%、「エネルギー・資源分野」は日本91.0%対韓国80.2%と、韓国はどれもこれも日本の後塵を拝している。
また、「環境・気象分野」では日本90.0%対韓国81.1%、「農林・水産・食品分野」では日本88.4%対韓国81.%、「災難・安全分野」では日本87・8%対韓国80.4%と、この3つの分野でも韓国は後れを取っている。
但し、先端技術である「ICT·SW分野」(日本84.3%対韓国83.0%)、「国防分野」(日本77.0%対韓国75.0%)、「建設・交通分野」(日本89.1%対韓国84.0%)、「生命保険分野」(日本81.6%対韓国77.9%)ではその差は縮まってきているが、それでもまだ追い抜いてはいない。
同紙は結論として韓国の経済・社会・政治・文化などの著しい発展が砂上の楼閣にならないようにするには科学技術発展に多くの努力と投資が必要であると結んでいた。
韓国では韓国が「昇る太陽」で、日本が「沈む太陽」と評する政治家やメディア関係者が多いが、日本の「経団連」にあたる「全国経済人連合会」(全経連)をはじめとる経済界は冷静で、日本に追いつけるかもしれないが、追い抜くのは容易ではないとみている。
「全経連」は8月に公表した報告書の中で「韓国はこの30年間に主要経済指標で日本を追い抜いたが、技術競争力では依然として劣勢にある」として、韓国経済が持続的に成長するためには「日本との格差がある科学技術競争力を高めることにある」と分析していた。