日本が韓国に残した資産が韓国の経済に貢献したと主張する韓国人研究者 その3
日本資産は当初は「アメリカに帰属」し韓国のものではなかった。
それが1948年、李承晩政権樹立で韓国政府が発足したのを機に韓国に移管、
譲渡された。
うち電気や鉄道、通信、金融機関など公的資産の多くは国公有化され、企業や商店など民間の資産の多くは民間に払い下げられた。
本書ではその経緯と実情が詳細に紹介されており、結果的にそうした「帰属財産」が韓国の経済発展の基礎になったというのだ。
著者によると「歴史的事実を無視、軽視してきた韓国の既成の歴史認識に対する研究者としての疑問」が研究、執筆の動機だという。
現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。
しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている。
時の経過でその事実を知る人も少ない。 一方で、例えば現在の韓国の財閥規模3位にある「SKグループ」はその痕跡がわかる珍しい企業だ。
日本統治時代の日本の繊維会社「鮮京織物」を入手し、その名残である「鮮京(ソンキョン)」の頭文字を今も使っている。
戦後は「鮮京合繊」として石油化学に手を広げ、やがて移動通信、半導体など先端系まで含む大企業グループになった。
また、学術書である本書にはこうした具体的な企業名が登場するわけでは必ずしもないが、少し調べるとわかるものもある。
ビールや焼酎でお馴染みの大手飲料メーカー「ハイト眞露グループ」は自社の来歴として、日本統治時代の大日本麦酒(サッポロ・アサヒ)系の「朝鮮麦酒」を「帰属財産」として受け継いだと明記している。
ライバルの「OBビール」もキリンがルーツである。
さらに、ソウル都心にある一流ホテル「朝鮮ホテル」は日本時代の総督府鉄道局経営の「朝鮮ホテル」がルーツで、当初はアメリカ軍が軍政司令部として接収。
軍政終了で韓国側に譲渡され民間のホテルになったという経緯がある。
また、同じ都心に位置するサムスン・グループの流通部門のシンボル「新世界百貨店」は日本時代の三越百貨店だ。
ロッテ・ホテル向かいにあるソウル市庁舎別館は近年までアメリカ政府の文化センターだったが、
元は三井物産京城支店でこれも「帰属財産」である
。基幹産業の韓国電力はもちろん「帰属財産」が土台になっている。