たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

5巻17ー19章

2023-09-29 16:28:51 | 世界史

【17章】

拘留されていたヴェイイの予言者はこの時から尊敬されるようになった。二人の執政副司令官コルネリウスとポストゥミウスはアルバ湖についての予言に対処する方法を彼に聞いた。老予言者は神々をなだめるための適切な方法を実行することになった。宗教的な儀式と勤めがないがしろにされたため、神々が予言者たちに霊感を与えたのであるが、本当の原因は高官の選出方法に誤りがあったからである。伝統について無知な人たちが高官に就任してしまったのである。彼らはラテン同盟の祝祭を開催せず、決められた方式でアルバ山に犠牲を捧げなかった。厄払いの方法は一つしかなかった。それは現在の執政副司令官を罷免し、新たな予兆を待ちながら、することである。元老院の命令により L・ヴァレリウス、Q・セルヴィリウス・フィデナス、M・フィデナス・カミルスが暫定最高官に任命された。三人が選挙を管理することになったが、護民官が騒ぎたてた結果、新しい執政副司令官の半数以上を平民から選ぶことになった。この頃エトルリア人の聖地ヴォルムナ(現在のオルヴィエト、ウンブリア州南西部)で、エトルリア連盟会議が開催された。カペナとファリスク人が次のように要求した。

「エトルリアの全ての地方が団結し、ヴェイイの包囲を打ち破るべきである」。

しかし連盟はこの要求に応じなかった。

「ヴェイイの同様な要求は以前にも拒否された。ヴェイイは連盟に助けを求める資格がない。このように重大な問題について、ヴェイイ自身は連盟に相談していない。それだけでなく、現在我々も困難な状況にあり、やむを得ず援助できない」。

当時、異様で正体不明なガリア人がエトルリアの広い地域に侵入し、エトルリアは彼らと戦争にはなっていなかったが、平和な関係にはなかった。いっぽうで自分たちの同胞であるヴェイイにも危険が迫っており、エトルリア連盟は何かしなければならないと感じていた。若者が志願兵として戦うと言うなら、連盟は承認するつもりだった。多くのエトルリア兵がヴェイイにやって来たという報告がローマに広まり、人々は恐怖にとらわれ、いつものように国内のもめごとは静まった。

【18章】

 P・リキニウス・カルブスは執政副司令官に立候補していていなかったののに、選挙の全権を有する百人隊は彼を執政副司令官に選んだ。元老院はこの選択に満足した。リキニウス・カルブスは以前執政副司令官に就任したことがあり、穏健な考え方をする人間と評価されていた。ただし彼は高齢だった。次に残りの5人の選挙となり、 L・ティティニウス、P・マエニウス、Q・マンリウス、クナエウス・ゲヌキウス、L・アティリウスが選ばれた。彼らは全員、リキニウス・カルブスが在職した時の同僚だった。選挙の結果を伝えるため、部族会議が召集された。百人隊の選定を部族が承認する前に、リキニウス・カルブスは部族の人々に話したい、と暫定最高官に許可を求め、了承された。

「市民の皆さん! 現在皆さんは良い兆候の出現を望んでい

ます。それと同時に、新しい最高官が国内に調和をもたらすことを期待しています。私が以前執政副司令官だった時の私の同僚は、経験を積み、知恵を得て自信を持っています。しかし私はさらに年を取り、以前の私の影のようになってしまいました。体力は尽き果て、眼や耳が悪く、物忘れがひどいうえに、精神力も弱っています」。

ここまで述べると、彼は息子の手を取り、話を続けた。

「ここに私の息子がいます。彼は若く、かつての私に似ており、平民として最初に最高官に就任した時の私に匹敵します。私が教育し、鍛錬したこの若者に私の地位を譲ります。私は彼を国家に捧げます。私は立候補していないのに、選ばれました。息子は最高官の地位を望んでいます。彼の望みをかなえてください。私は候補者としての息子を心の中で応援します」。

P・リキニウス・カルブスの要求は認められ、彼の息子 P・リキニウスは執政副司令官の一人として正式に公表された。

ティティニウスとゲヌキウスはファリスク人の町とカペナに向かった。ローマ軍は以前より勇気があったが、用心さが足りなかったので、待ち伏せ攻撃を受けた。自分の軽率が原因の失敗を取り返そうと、ゲヌキウスは最前列で戦い、名誉の死を遂げた。ティティニウスは陣形を崩した部隊を再結集し、丘の上に導いた。ローマ軍は陣形を立て直したが、丘を降りて戦おうとはしなかった。

ローマ軍の損失はそれほどでもなかったが、名誉を失った。その結果さらに恐ろしい災難が降りかかった。敗北が誇張してローマに伝えられ、市民は恐怖のあまり平常心を失った。ヴェイイを包囲していたローマ兵も動揺した。ローマが敗北し、将軍が戦死しすると、ファリスク人とカペナの軍隊そしてエトルリアの全軍がヴェイイにむかい、すでに近くまで来ているという噂が伝えられた。ローマ兵は逃げ出したい気持ちを何とか抑えている、という話も伝えられた。さらに不安な噂が流れた。ヴェイイの正面のローマ軍の陣地が攻撃されたとか、敵軍の一部がローマに向かっているという噂が流れ、を人々はその噂を信じた。市民は急いで城壁に行き、心配そうに外を眺め、年配の女性さたちは神殿に行き、神殿や城壁そして市民の家が破壊されないようにと祈った。ローマが昔の宗教的な儀式を復活させ、悪い予兆が解消されれば、恐怖と危険はヴェイイに移転されるだろうと、人々は期待した。

【19章】

神前競技とラテン人の祝祭が開催された。アルバ湖の水は農地へ灌漑された。恐ろしい運命がヴェイイを襲おうとしていた。ヴェイイを打倒し祖国を救済することがローマの重要な目的となった。これをを達成するために、独裁官が任命された。M・フリウス・カミルスがローマ軍の司令官となった。彼はコルネリウス・スキピオを騎兵長官に任命した。司令官が変わると、すべてが一変した。あきらめかけていた兵士は希望を持ち、勇気を取り戻した。ローマの運命もよい方に向かった。カミルスはまず最初に逃亡兵を処罰した。これらの兵は怖くなって陣地から逃げ出したのだった。カミルスは「本当に恐れるべきなのは敵ではない」と兵士たちに諭した。独裁官カミルスは徴兵の日を決めてから、ヴェイイに行き、兵士を励ました。この間市内では徴兵が進められた。独裁官はローマに戻り、新しい軍団を編成した。徴兵逃れをする者は一人もいなかった。ラテン人やヘルニキ族の都市も援軍を申し出た。独裁官は元老院で正式に感謝の言葉を述べた。戦争の準備が十分整い、いよいよ元老院の命令を実行する段階となり、独裁官は誓いの言葉を述べた。

「ヴェイイを占領したら、大競技会を開催し、母なる神マトゥタの神殿を修復し、奉納します。この神殿は国王セルヴィウス・トゥリウスが女神マトゥタに奉納したのです」。

独裁官はローマ軍を率いて出陣した。市民は勝利を期待しながらも不安な気持ちで彼らを見送った。彼らは勝利を確信できなかった。独裁官はネペーテの土地でファリスク人とカペナの軍隊と交戦した。

(ネペーテ=Nepete はエトルリア人の町で、カペナの北西、ファレリーに近い。)

熟練した技術を持つ者が慎重に事を進める場合、成功が伴うものである。カミルスが指揮するローマ軍は戦場で勝利しただけでなく、敵の陣地を奪取し、大量の戦利品を獲得した。戦利品の大部分は売却され、売上金は財務官に渡された。戦利品の一部は兵士に与えられた。ローマ軍は次にヴェイイに向かった。ローマ軍は砦をさらに隙間なく増設した。両軍の間で小競り合いが頻繁に起きた。独裁官は勝手な戦闘を禁じ、攻城設備の建設に兵士を専念させた。中でも困難で大掛かりな事業はヴェイイの城内に通じる地下道を掘ることだった。作業が中断しないように、また兵士が疲れ果てないように、ローマ軍は6分割され、交代で地下の穴掘りをした。同一グループは6時間働けば、交代となった。作業は中断なく続けられ、地下道がヴェイイの城内に達した。

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5巻14-16章

2023-09-20 05:38:32 | 世界史

【14章】

以上がこの年の出来事である。翌年の執政副司令官の選挙が迫っていた。戦争の心配がなくなり、元老院は選挙が気がかりだった。国家の最高の役職に平民が参入しただけでなく、ほぼ独占していた。このような事態を改善するため、貴族の中で最も傑出した人物を立候補させることにした。そのような候補者を落選さることは、ローマ市民として恥ずべきことだろう。元老たちはこれらの候補者を当選させるため、まるで自分が立候補したかのように奔走し、あらゆる手段を講じた。人々に訴えただけでなく、神々にも助けを求めた。「前回の選挙は宗教的に問題だった」と元老たちは主張した。「昨年の冬は異常に寒く、耐えられないほどだったが、これは神々の警告だった。その後警告に続いて、神々の裁きが下った。疫病が郊外の地方と市内を襲った。これは神々の怒りの表われだ。運命の書物には、神々が引き起こす厄災を避けるには、神々を喜ばせなければならない、と書いてある。選挙の前は、吉兆が現われていた。最高官に平民が選ばれたので、神々は侮辱されたと感じたのだ。身分の違いがあいまいになったので、神々は怒ったのだ」。

元老たちの努力は報われた。貴族の候補者は地位が高く、威厳があったので、市民は敬服した。また市民は投票の際、宗教的な問題も考慮した。当選したのは全員貴族だった。彼らの大部分は著名な人物だった。名前は以下の通りである。L・ヴァレリウス・ポティトゥス(5回目の就任)、M・ヴァレリウス・マクシムス、M・フリウス・カミルス(2回目の就任)、M・フリウス・メドゥリヌス(3回目の就任)、Q・セルヴィリウス・フィデナテス(2回目の就任)、Q・セルピキウス・カメリヌス(2回目の就任)。この年ヴェイイは何の動きもなしなかった。ローマ軍は敵に略奪をした。二人の司令官は大量の戦利品を獲得した。ポティトゥスはファレリで、カミルスはカペナで略奪した。二つの町は徹底的に略奪され、廃墟のようになった。

【15章】

この時期多くの予兆が報告されたが、すべて個人の証言に基づくものであり、対処法を予言者に相談することもなかった。当時ヴェイイの敵対的な態度が問題となっていたが、神々の予兆があったという話を信じる者はなく、ほとんどの人がこれを無視した。しかし多くの人を不安にする事件が起きた。アルバ湖の水面が異常な高さまで上昇した。雨が降ったわけでもなく、このような現象の原因は見当たらなかった。いかなる予兆なのか、デルルフィの信託を聞くために使節団が派遣された。実はもっと近くで異常現象の意味を知ることができた。ヴェイイの老人が運命に突き動かされたように予言した。ローマとエトルリアの前哨部隊に野次られながら、彼は次のように述べた。「アルバ湖の水がすっかり排出されるまで、ローマはヴェイイを攻略できないだろう」。

最初、人々は老人の説明を無茶な話と受け止めたが、次第にそうかもしれないと思い始めた。戦争が長引く中、両陣営の兵士たちは老人の予言が気になり始めた。彼らは頻繁にこれを話題にした。ローマの前衛部隊の兵士が近くのヴェイイ市民に尋ねた。「預言をした老人は誰だ。アルバ湖について不吉な予言をした老人は、どんな奴だ」。

市民は答えた。「老人は予言者で、アルバ湖の異変について宗教的な恐怖を感じたのだ」。

そこでローマ兵は言った。「その予言者を呼んでほしい。厄払いの方法を相談したい。彼は暇だろうか」。

兵士と予言者が対話することになり、二人は武器を持たず、それぞれの部隊から歩み出た。両軍の兵士が見守る中で、屈強な若者が弱弱しい老人をつかむと、ローマ軍の方に抱えて行った。これを見て、ヴェイイ兵は騒ぎだした。屈強なローマ兵は予言者をローマ軍の司令官のもとに連れて行った。それから預言者はローマの元老院に連行された。アルバ湖について何を言いたいのか、という質問に対し、予言者は次のように答えた。

「神々は間違いなくヴェイイの市民にひどく怒っている。私の祖国ヴェイイは滅ぶ運命にあり、その準備がなされている。私は神聖な霊感を受け、人々に知らせることにした。霊感を受けて予言したことを今は思いだせないが、取り消すつもりもない。予言を公表するのは天の意思であり、もし私が沈黙するなら、秘密にすべきことを話すのと同様の犯罪となる。アルバ湖について私が述べたことは予言の書に書かれていることであり、エトルリア人が伝えてきた宗教的知識が教えることも一致する。アルバ湖が氾濫し、ローマ人がある方法で湖の水を排出すると、必ずローマはヴェイイに勝利する」。

最後に予言者は排水する方法について語った。しかし元老院は予言者を信頼しなかった。重大な問題だったので、元老院はピシア(デルフィのアポロ神殿の巫女)の予言を持ち帰る使者の帰りを待った。

【16章】

デルフィへ行った使者がまだ戻らず、アルバ湖の異変が何の前兆であるか判明していない時、新しい執政副司令官が就任した。彼らの名前は L・ユリウス・ユルス、L・フリウス・メドゥリヌス(4回目の就任)、L・セルギウス・フィデナス、

A・ポストゥミウス・レギレンシス、P・コルネリウス・マルギネンシス、A・マンリウスである。この年新しい敵が出現した。ローマが複数の敵と戦っているのを見て、タルクイヌス家の人々はチャンスとばかりに、陰謀を企てた。実際ローマは困難な戦争を複数抱えていた。ローマ軍はアンクススールのヴォルスキ軍を包囲していた。ラビクム(ローマに近く、東へ20km)では、アエクイ族がローマ人植民者を攻撃したので、ローマ軍が出動した。

(日本訳注:アエクイやヴォルスキがしばしばラビクムを攻撃したが、実はラビクムはラテン人の町であるが、ローマへの従属を拒否し、他部族の力を借りたようである)。

これに加えて、ヴェイイ、ファレリー、カペナでも戦争が続

いていた。一方国内では元老院と平民が争い、混乱していた。この状況をチャンスと見て、タルクイヌス家の人々が数百人の軽装備の兵士をローマ領に派遣した。略奪をしても、ローマは新たな戦争をする余裕がなく、放置するだろう、と考えたのである。仮にローマが怒ったとしても、弱小の部隊しか派遣できないだろう、と予測したのである。ローマの人々は被害についえ心配するより、タルクイヌス家の不埒な行為に怒り、すぐさま彼らを懲罰することにした。 A・ポストゥミウスと L・ユリウスが志願兵を募集した。正規の徴兵は護民官の妨害ためできなかった。二人は懲罰部隊に志願するよう熱烈に訴えた。彼らはカエレの領土を横断して前進した。( Caereは古代にはCaisraと呼ばれていた。Caisraはヴェイイの西、ティレニア会沿岸の都市)

タルクイヌスの部隊は突然襲われた。彼らは略奪品を大量に抱えて、引き上げる途中だった。ローマの部隊は多くの略奪兵を殺害した。ローマの農民から奪われた物をすべて取返して、彼らはローマに帰った。これらの略奪品は持ち主が名乗り出るまで、二日間展示された。三日目になっても持ち主が現れない品物の大部分はタルクイヌス兵の持ち物と判断され、戦利品として売却された。売上金は志願兵たちに分配された。他の戦争、中でもヴェイイとの戦争は決着せず、ローマの人々は独力では勝てないとあきらめ、運命や神々に期待した。ちょうどこの時、デルフィへ行った使者が帰ってきた。デルフィの巫女の予言はヴェイイの予言者が語ったことと同じで、以下のようなものだった。

「ローマ人よ! アルバ湖の水があふれないよう、注意せよ。海に向かって水路を造りなさい。洪水の危険をなくし、いくつかの小さな流れが耕地を潤すようにしなされが完了したら、敵の城壁を攻撃しなさい。現在、運命は諸君に勝利を与えた。諸君が何年も包囲を続けた都市は諸君のものになるだろう。戦争が終わったら、私の神殿にたくさんの贈り物をしなさい。昔の宗教的な儀式を復活させ、かつてのように盛大に勝利を祝いなさい」。

 

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