たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

グータ化学攻撃 検証:ロケットの発射地点

2017-07-29 07:33:22 | シリア内戦

 

821日のダマスカス郊外への化学攻撃は一か所ではなく、2か所で起きた。東グータと西グータであり、互いに16㎞離れている。2つの場所に打ち込まれたロケットの種類も異なっている。西グータのほうは小型の140mmロケットであり、東グータのほうは大型の330mmロケットである。140mmロケットはよく知られたロシア製のロケットだったが、330mmロケットはシリア軍が2012年に開発したもので、未知のロケットであり、性能や仕様は謎だった。事件後、「正体不明のロケット」と呼ばれた。330mmロケットはロケットの残骸をもとに、ロケットの仕様を知るしかなかった。ロケット全体の大きさと弾頭の大きさ・容量はわかったが、ロケットの射程距離は分からなかった。発射機についてもわかっていない。発射機はイラン製のFalaq2だという説があるが、これには反論もある。Falaq2が発射するロケットはかなり大型であり、東グータに着弾した330mmロケットの2倍近くの長さがある。したがってFalaq2330mmロケットの発射機として使えない、という。

330mmロケットの発射機については結論が出てないが、射程距離については、事件から5か月後、元国連査察官と物理学者が、2.25km以下と発表した。

330mmロケットの射程距離はきわめて短く、着弾地点の近くから発射されたことになる。シリア軍はそれほど近くまで進出していただろうか。

着弾地点から2.25km以内にシリア軍がいたかを知ることは、かなり困難である。着弾地点から2.25km以内にいたのは反政府軍である可能性もある。

射程距離が短いことが判明した後も、やはりシリア軍が発射したという説があり、発射地点を推定している。

米国は衛星によって発射地点を確認していると言いながら、地名、緯度・経度を一切公表していない。そのためジャーナリストは苦労して、821日のシリア軍と反政府軍の配置を調べた。

その結果発射地点はカブーンであると推定した。

 

 

反政府軍はダマスカスの郊外の広い部分を支配していたが、市内に進出できたのは、バルゼ、カブーン、ジョバルの3地区のみである。反政府軍はこれらの3地区から市の中心部へ支配を広げようとしており、アサド政権にとって脅威となっている。政権としては何としてでも、3地区に居座る反政府軍を追い払いたい。しかし市街戦は建物一つ一つの奪い合いになり、犠牲が大きい。20133月末シリア軍は反政府軍の背後を襲い、北・東・南の3方から徐々に包囲の輪を狭めていった。封鎖は完全に仕上がっていないが、封鎖によって反政府軍の補給を断つことができれば、東グータの反政府軍は弱体化する。

 

 

 

封鎖作戦は味方の犠牲が少なく、長期的に見れば有効だが、821日になっても、反政府軍はバルゼ、カブーン、ジョバルの3地区に踏みとどまっており、激戦が続いていた。そうした中で、330mmロケットがザマルカを中心とする地域に撃ち込まれた。

ロケットの射程距離が短いことから、バルゼは発射地ではない。発射候補地はカブーンかジョバルになる。

カブーンの大部分は反政府軍の支配地であるが、南端にシリア軍の支配地がある。ここから発射された可能性がある。

ジョバルのほぼ全域が反政府軍の支配地であるが、西端部分にシリア軍の支配地がある。ここも発射地点の候補地となる。

 

ニューヨーク・タイムズは発射地点について次のように書いている。

「反対派を支援するグループによれば、ロケットの数発は、カブーン地区の工場から発射された。その他のロケットは8マイル北のホムスへ向かう幹線道路から発射された。(8マイルは12.8km)」。 

 

 

 

カブーンは発射候補地と言っても、国営工場はカブーンの西端にあり、ザマルカの被弾地までは、2.8kmの距離がある。射程距離2.25kmのロケットでは届かない。

 

英国のジャーナリストのエリオット・ヒギンズは、821日の両軍の配置を示した地図を、アラビア語のサイトで見つけた。彼は6月末ー821日のカブーンの戦況を調べており、彼が理解し得た戦況とその地図はほぼ一致しているという。

 

 

エリオット・ヒギンズは発射地点をカブーンの東端にある空軍情報部(支部)と考えている。ザマルカの被弾地までは2.5kmであり、2.25kmの射程をわずかに超える。

白い星印で示した国営工場はニューヨーク・タイムズが発射地点としている場所である。

空軍情報部も国営工場も、射程2.25kmを超えており、トフメ検問所付近なら、2.25km以内である。

トフメ検問所は高速道路5号線に位置しており、戦略的に極めて重要である。シリア軍は検問所以北の高速道路を支配している。反政府軍は検問所以南のを高速道路を支配しているが、絶えずシリア軍の砲撃にさらされている。検問所はシリア軍が支配している。

高速道路の争奪戦に加え、トフメ検問所はザマルカとカブーンの境界付近にあり、カブーンからザマルカに侵攻しようとするシリア軍にとって、最前線となっている。反政府軍がザマルカ全域を支配している。シリア軍は最近数カ月間に4度ザマルカに侵攻したが、4度追い返されている。4回目の試みは一か月前だった。

エリオット・ヒギンズがトフメ検問所付近を発射地点と考えなかったのは、最前線過ぎて危険だからだろう。化学兵器を発射する場所は、ある程度安全が確保されていなければならない。

国営工場は射程距離の問題、トフメ検問所付近は安全の問題がある他に、両方とも着弾地点から見た方角に問題がある。国連の調査によれば、アイン・タルマに落ちたロケットの発射地点は西北西である。

 

    《虚偽の報告をうのみにした米政府》

 

ニューヨーク・タイムズの地図にはジョバルの被弾地点が示されているが、エリオット・ヒギンズの地図では消えている。ジョバルに着弾したというのは虚偽情報だと、シリア政府は述べている。ジョバルに住民は住んでいないので、住民がサリンにより死傷したというのは嘘だという。住民はすでに他地域へ避難し、ジョバルに残っているのは戦闘員だけである、という。

 

 

またエリオット・ヒギンズの地図とニューヨーク・タイムズの地図の両方において、カフル・バトナはロケットの着弾地になっていない。カフル・バトナはアイン・タルマの東、ハゼーの南である。

ロケットの着弾地について、米政府は次のように述べている。

「化学攻撃の目標となった場所はカフル・バトナ(Kafr Batna)、ジョバル( Jawbar)、アイン・タルマ(Ayn Tarma),ダラヤ(Darayya)、ムアダミヤ(Mu’addamiyah)などと言われている」。

米政府は5つの被弾地の名前を挙げ、その最初がカフル・バトナである。2番目に挙げたジョバルも虚偽報道の可能性が高い。。4番目のダラヤについても、人権監視団は被弾地として取り上げていない。米政府が挙げた5つの着弾地点のうち、3つは虚報である可能性が高い。

 

カフル・バトナが被弾したというのは誤報の可能性が高いが、一応発射地点を推測してみよう。

米政府の地図によれば、カフル・バトナの東端に落ちたことになっているので、最も近い政府軍の支配地ザバタニからでも3kmを超える。カフル・バトナの2.25km以内はすべて反政府軍の支配地である。米政府の地図によると、カフル・バトナの南2.25kmは戦闘地点となっているが、反政府軍が支配している可能性が高い。当日の両軍の配置についての情報がないので断言はできないが。

 

 

前回書いたように、米政府の地図に書き込まれた着弾地点の全部を攻撃するには、北西ー西ー南と移動しながら発射しなければならず、しかも半分しか攻撃できない。残りの半分は反政府軍の支配地からでなければ、発射できない。

 全ての被弾地の中心部から、反政府軍が発射したと考えるほうが合理的である。

 

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グータ化学攻撃 ロケットは反政府軍の支配地から発射

2017-07-13 20:17:56 | シリア内戦

 

人権監視団は西グータの攻撃に使用された140mmロケットの射程距離を3.8km以上、9.8km以内としたが、東グータに着弾した330mmロケットの射程距離については触れなかった。国連の調査は発射地点の方向を調べただけで、ロケットの射程距離は調べていない。

事件から5か月後の2014年1月になって、元国連査察官が、330mmロケットの射程距離がきわめて短いことを発表した。射程距離は最大でも2.2kmであり、着弾地点からあまり離れていない場所から発射されたことになる。シリア軍はそれほど近い場所にいたのか。

化学攻撃の9日後、米政府は事件についての見解を発表した。ロケットはシリア軍の「支配地」から発射されたと述べ、地図を添えた。

 

この地図に基づき、元国連査察官リチャード・ロイドは政府軍の支配地の東端からザマルカまでの距離が6kmであることを知った。330mmロケットの射程距離は2.2km以下であり、政府軍の支配地からは、到底届かない。

 続いてリチャード・ロイドは着弾地点から2.2㎞の距離を地図に示した。ロケットの重量が重い場合、飛距離はさらに短くなり、1.7kmとなる。それも地図に示した。8つの着弾地点が黄色の十字で示されている。

ロケットは、むしろ反政府軍が発射した可能性が高い。

この衝撃的な報告を発表したのは国連の元武器査察官リチャード・ロイド(Richard  Lloyd)とマサチューセッツ工科大学のセオドア・パスタル(Theodore  Postol)教授の2人である。

(Possible implications of faulty US technical intelligence in  the Damascus nerve agent attack of August 21)

 2人はロケットの構成を調べ、弾頭内の液体の重さとロケットの総重量から、その射程距離を算定した。その結果、「米政府の主張は真実から遠い」ことがわかった。

リチャード・ロイドは報告の発表後の記者会見で、「反政府軍の化学兵器の能力は予想以上に高く、50リットル容量のサリンを積んだロケットを発射することは十分可能である」」と語っている。

 

しかしロイドとパスタルの結論には反論の余地がある。3枚目の地図をよく見ると、ほとんどのロケットは戦闘地域から発射されたことになっている。8月21日の時点でこの地域を支配していたのはどちらかを知る必要がある。客観的な立場のジャーナリストが出向いていない限り、最前線の状況を知るのは困難だが、ジョバル(Jobar)の北西部でシリア軍が攻勢を強め、ジョバルの境界まで迫っていたことが知られている。

上記3番目の地図には着弾地点が黄色の十字で示されており、北西の4つの地点はシリア軍によって攻撃されたかもしれない。南東の4つの地点については、発射地点付近にどちらの軍がいたのかを知らなければならないが、シリア軍は進出していない可能性が高い。 

注意すべきは、シリア軍がこれら8つの地点を攻撃するには、これらの地点の周囲を移動しながら発射しなければならない。あるいは数台の発射機を使用しなければならない。反政府軍が8つの地点の中心部から発射するなら、移動せずに8つの地点を攻撃できる。

 

米国は化学兵器の準備をしているシリア軍の位置を正確に把握しており、衛星の映像によりロケットの発射地点を確認したと述べている。発射地点を地図に書き込んでいたなら、決定的な証拠となった。それをせずに、「政府軍の支配地から発射した」とだけ述べた。そのためロイドとパスタルは地図上の支配地から着弾地点までの距離を測ったのである。

米政府が化学兵器準備を発見し、発射地点をも確認したことは決定的な証拠と言えるが、発射地点を示さなかったことは片手落ちである。

「シリア軍は化学兵器準備事件の3日前、アドラで準備を開始した」と米政府は述べている。

ダマスカスの東部と南部に反政府軍の支配地があるが、東北部のドゥーマを中心とする勢力が最大である。しかし彼らを取り巻くようにシリア軍の基地が存在している。そのひとつがアドラである。

 

====《米政府の評価:シリアの政権が化学兵器を使用》=====

Government Assessment of the Syrian Government’s Use of Chemical Weapons on August 21, 2013

3月21日シリア政府がダマスカス郊外で化学攻撃をした、と米政府は高い確実性を持って判断している。この攻撃で神経ガスが使用されたことも確実である。これは幅広い情報に基づく判断である。幅広い情報とは、情報提供者からの情報、通信傍受、衛星による映像、一般に公開されている大量の情報である。

情報源の保護とわれわれの方法を秘密にするため、すべての情報を公表することはできない。これから述べることは、公表可能な部分に限られる。   

      〈シリア政府がダマスカス近郊で化学兵器を使用〉

互いに独立した多くの情報が、8月21日ダマスカス郊外で化学兵器が使用されたことを物語っている。米国の情報機関が得た情報に加え、シリア内外の医師の報告、ビデオ、目撃証言がある。さらには、ダマスカスの12の地点から数千のネット情報、ジャーナリストや非政府組織の報告がある。

       〈事件の背景〉

シリア政府は昨年(2012年)戦略的に重要な場所を獲得し、それを維持しようとしながら行き詰まった時、打開の手段として化学兵器を使用した。シリア政府は化学兵器を空爆やミサイル

と同様なものと考えており、禁じられた兵器という意識がない。

ダマスカス周辺の反対派の支配地は首都を攻撃する足場となっており、政権はこの地域の反政府軍を駆除する作戦を始めた。

シリア軍はあらゆる通常兵器を投入したが、首都周辺の10数個の地区から反政府軍を追い出すのに失敗した。そしてこれらの地区のいくつかが化学兵器による攻撃の対象となった。

政権はダマスカス周辺の大部分が反政府軍に占領されたままであることにいらだった。このことが8月21日化学兵器を使用する原因となった。

       〈化学兵器の準備〉

シリア軍の化学部隊が攻撃の準備をしていると判断できる情報がある。攻撃の3日前、一連のスパイ情報、通信傍受、空からの偵察により、化学攻撃の準備とみられるシリア軍の活動を察知した。

8月18日ダマスカス北東のアドラでシリアの化学部隊が活動を始めた。これは8月21日の未明まで続いた。アドラはシリア軍がサリンなどの化学物質を混合する場所となっている。通常、サリンは2種類の前段階物質を保存し、使用時に混合する。

8月21日シリアの化学部隊はガス・マスクを着用して準備作業をしていた。

一方我々の情報源によれば、反政府軍は化学兵器を準備している兆候がない。

         〈化学攻撃〉

多方面からの情報は、8月21日の未明シリア軍がダマスカスの郊外を砲撃し、ロケットを発射したことを示唆している。宇宙衛星の画像はこれらのロケットがシリア軍の支配地から発射されたことを傍証している。化学攻撃の目標となった場所はカフル・バトナ(Kafr Batna)、ジョバル( Jawbar)、アイン・タルマ(Ayn Tarma),ダラヤ(Darayya)、ムアダミヤ(Mu’addamiyah)などと言われている。

これらの情報に加え、化学攻撃についてネットで最初に発表される約90分前、我々は政府軍の支配地からロケットが発射されるのを確認している。この時軍用機は現地を飛行しておらず、ミサイルの発射も確認されていないので、シリア軍が地対地ロケットを使用したは間違いない。

地元のソーシャル・メディアには午前2時30分に化学攻撃について最初の報道が現れ、その後の4時間、ダマスカス周辺の12の地域から数千の報告があった。反政府軍の支配地域に着弾した化学ロケットについて、数多くの証言がなされた。

ダマスカス地域の3つの病院が、約3600人の被害者を受け入れた。これらの被害者たちは一様に、神経ガスが原因の症状を示していた。

========================(米政府終了)

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2013年 グータ化学兵器事件 ザマルカ2

2017-07-08 02:55:18 | シリア内戦

前2回、グータ化学攻撃について、人権監視団の報告を訳した。gooブログの字数制限により、最後の部分は今回に回さざるを得なかった。

西グータに打ち込まれた140mmロケットは化学弾ではなく、通常の爆発弾であったという説がある。国連の調査チームが採取した環境サンプルはサリンの存在を示していない、からである。環境サンプルとはロケットの残骸や建物などから採取したものである。

このような主張との関連で、人権監視団の報告の最後の部分は重要である。

 

=======《使用されたロケットの確認》=======

化学兵器による攻撃を受けたグータは8月21日の前にも後にもシリア軍から攻撃されており、140mmロケットと330mmロケットが8月21日の未明に着弾したものであるかを確定するのは難しい。しかし地元の活動家によれば、この時以前にこれらのロケットの残骸は存在していなかった。

140mmロケットと330mmロケットの残骸を撮影したいくつかのビデオが8月21日の未明から数時間後にネットに投稿された。その中には、地面に着弾したロケットが、そのままの様子で撮影されたものがある。

人権監視団はビデオを投稿した地元の活動家に連絡し、いくかのロケットの位置をGPSで確認することができた。また他のビデオに映っているロケットについては、衛星写真によって場所を確認した。

=================(人権監視団終了)

 

人権監視団によれば、ザマルカに落ちたた330mmロケットは8発ー12発である。文章には8発の位置についてかなり正確に書かれており、地図には12発の位置が示されている。

330mmロケットは50ー60リットルの容量がある。サリン50ー60リットルはかなりの量である。しかもそれが8発なら400ー480リットル,12発なら600ー720リットルになる。これだけ大量のサリンを扱うことができるのは、専門的な化学兵器部隊だけである。

イスラム過激派はサリンを所有し、扱い方の訓練も受けていたとはいえ、大容量のサリン弾を10発前後発射する能力があったかは疑問である。

ただし、シリア政府は反政府軍の基地で大量の化学兵器を発見したことがあり、「国家を破壊するほどの量ではないが、都市を破壊するだけの量である」と、その時述べている。

人権監視団に情報を提供しているのは、反政府軍の人間である場合が多く、ザマルカに8―12発打ち込まれたといっても、すべてを事実と認めることはできない。また国連の調査結果には「ロケットが他の場所から運び込まれたり、証拠が変更された可能性がある」と書かれている。

国連のチームは8―12発のロケットをすべて調べたわけではなく、2発だけである。

国連の報告の中から、東グータの2個のロケットに関する部分を訳す。

 

====《ザマルカとアイン・タルマでの検証結果》====

Report  of the United Nations Missionto Investigate

 Allegation of the Use of Chemical Weapons in Syria

一つのチームは5階建ての建物の屋根を調べ、もう一つのチームはその建物に近い広場を調べた。両チームは同時に作業を行った。2つの場所で発見されたロケットは同一の種類であり、非誘導のロケットだった。2つの残骸を測定し、ロケットのサイズを推定した。いくつかの部分は爆発により変形しており、正確な測定はできなかった。

ロケットが地面をえぐった様子、散らばっているロケットの破片、付近の破壊された物によって、ロケットは北西から飛来したことがわかる。

 ロケットは2つの部分からできている。

①ロケット・エンジン

6枚の安定翼が円形に並んでおり、金属の輪に固定されている。ロケットの一つには、エンジンの表面に赤色で153と書かれている。エンジンは12のボルトによって弾頭と結合されている。

  • エンジンの全長   134cm
  • 安定翼の固定リングの幅 5.5cm
  • 安定翼の長さ    16.5cm  安定翼の直径 31cm  
  • 噴出孔の長さ    4.5cm
  • エンジン軸の長さ 112cm  エンジン軸の直径 12cm

②弾頭

弾頭の直径は36cm。弾頭の先端部の基盤には直径9cmの起爆管がついている。

弾頭の容量は50ー62リットルである。

 

         《 5階建ての建物に落ちたロケット》

5階建ての建物の屋根に落ちたロケットは、ブロックでできた壁を破り、その後鉄パイプで補強された床を突き抜け、下の部屋に落ちた。最初に衝突した壁の周辺に、弾頭の先端部の基盤と、弾頭の筒の部分の破片が落ちていた。したがって弾頭は壁に衝突した時に爆発し、中身を放出したと思われる。弾頭の部品は比較的元の形をとどめており、爆発は小さかったようである。

弾頭の爆発後、ロケットの心棒とエンジン部分だけが、下の部屋に落ちた。

ロケットの先端部分の基盤の外縁部に、6つのねじ穴が円形に並んでいる。

         

       《調査の限界》

西グータの場合と同様に、調査した2つ場所は立ち入り禁止にされておらず、原状変更の機会があった。われわれが調査してる間にも、ロケットを運び込んでくる者がいて、証拠が移動されたり、ねつ造された可能性がある。

調査する時間が限られていたことも悪条件だったが、チームはできるだけの努力をした。

      《ロケットの弾道》

我々は西グータと東グータで合計5つの着弾地点を調査した。これらの中で、ロケットが飛んできた方向を確認できたのは、第一地点(ムアダミヤ)と第四地点(アイン・タルマ)だけである。残りの3つの地点は場所や地形の関係で飛来方向を確認できなかった。

(たぬき注)2つのロケットしか飛来方向を確認できなかったと書きながら、以下で3つのロケットの方向を説明している。(たぬき注終了)

 

[第一地点(ムアダミヤ)]

エンジンの特徴から判断すると、これはM-14ロケットの一種である。弾頭は残っていないので、ロケット本来の弾頭であったか、独自に作成したものを取り付けたか、わからない。

発射されたロケットは共同住宅の2階に衝突し、エンジン部分だけが生け垣を貫き、裏庭に着地し、石畳に浅いくぼみをつくった。生垣と窪みを結ぶ線は35度である。したがって発射されたロケットの弾道の方位角は215度である。

[第二地点(ムアダミヤ)]

第一地点から65メートル離れた所に場所に着弾したもう一つのロケットの方位角も215度である。ムアダミヤの2発は同一の連弾発射機から発射されたと考えられる。

[第四地点(アイン・タルマ)]

ここに着弾したロケットの口径は330mmである。ロケットは比較的やわらかい地面に落ち、ロケットの軸とエンジンは地面に突き刺さった。着弾後動かした様子はない。軸とエンジンは曲がっておらず、正確に285度の方位角を示している。したがって発射されたロケットの弾道の方位角は105度であり、東と南東の中間である。

====================(国連の報告終了)

第四地点に着弾した330mmロケットは東と南東の中間の方向に向かって発射されたということであり、着弾地点のアイン・タルマから見ると、ロケットは西と北西の中間から飛んできたのである。

調査時間に制限があったためか、国連の調査チームは着弾したロケットをすべて調べることをあきらめ、ロケットの種類とロケットが発射された地点だけを調べた。したがって国連が調べたロケットは西グータの2発、東グータの2発だけである。

国連の報告は合計5つのロケットを調べたと述べているが、4つのロケットについてしか説明いていない。5つ目のロケットについては一言も書いていない。5つ目のロケットを調べた結果、怪しかったので、何も説明しないことにしたのであろうか

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