たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

「ISISは米国の手先」説について

2016-02-26 19:23:27 | シリア内戦

 

シリア内戦の当初から、トルコはシリアの北部国境地帯の併合を目的としていた、というマフディ・ダリウスの記事を前回紹介した。彼はトルコの慎重な側面についても語っており、トルコが国際情勢に配慮しながら目標を追求していると書いている。しかし一点だけ、彼の記事に異を唱えたい。米国はコバニのISISを空爆したが、効果がなかったとしている点である。誤りではないが、米国の空爆がある時点から改善し、効果的になったことについて述べていない。

 

イランのメディアは、ISISは米国の手先である、といつも報道している。これは米国が言っていることの正反対なので、とまどう。米国はISISを中東の新たな脅威としている。2012年以来シリアのアサド政権の転覆をめざしてきたが、2014年夏以後、米国はISISを弱体化することを緊急な課題としている。しかしイランはこれを信じない。米国は本心を隠しており、ISIS脅威論は口実にすぎない、と考えている。

イランは次のように考えてる。

米国の真の目的はあくまでアサド政府軍を爆撃することである。しかしそれはシリアとの戦争を意味する。米国は宣戦布告なしの、秘密の局地戦を選んだ。ISISを攻撃するという理由で、シリア空爆を開始した。ISISを空爆しながら、時機を見てアサド政府軍を爆撃する計画である。したがって米国によるISIS空爆は本心ではなく、うわべだけのものである。

これはイランだけでなく、アサド政府・ロシアに共通する見方である。

 

ISISは米国の手先だとという見方は根強く、それなりに根拠がある。

シリア内戦の当事者であるアサド政権は、敵である反政府軍の背後にいる国々の干渉行為について鋭く観察している。シリアを舞台にサウジ・トルコ・米国と代理戦争をしているイラン・ロシアも、敵のわずかな動きを見逃さない。彼らの判断は無視できない。

 

またISISを敵としているのは米国だけである。サウジとトルコはISISを敵と考えていない。敵は唯一アサドである。米国だけがシリアにおける敵はアサドとISISの2つだと主張している。米国の「ISIS脅威論」は中東では一般的な常識でない。

 

しかし「ISISは米国の手先き」説に反する事実がある。私が書いてきたコバニ戦と、2015年のクルドの勢力拡張の事実である。コバニでISISは敗北した。クルドの勝利に米国は貢献している。米国は真剣にISISの勢力を弱めようとしている。

 

コバニのISISにたいする空爆が改善したことは冒頭で書いた。もう一つ、米国のクルド支援を象徴する出来事がある。1019日、米軍は武器・弾薬・薬品をコバニに投下した。クルド軍は弾が残り少なくなっており、弾が尽きた時に敗北が決定する、という絶望的な状況にあった。米軍の補給物資投下はクルド軍に希望を与えた。

 

翌年2015615日、YPGはテル・アビヤドでISISに勝利した。これも米軍の支援なしに考えられない。テル・アビヤドはラッカの真北にあり、トルコとの国境の町である。ラッカへの出入り口であり、トルコに石油を輸出し、武器と志願兵がトルコから入ってくる。この町を失ったことは、ISISにとって大損失である。ISISが支配するトルコへの越境地点はジェラブルスだけになった。ラッカから近いだけに、テル・アビヤドはジェラブルスよりはるかに重要っだった。

     

 

米軍の支援により、クルドは国境地帯のほとんどを獲得した。

   

  

比較のために、コバニ戦前のクルドの支配地を示す。

         

もう一つ別の、興味深い地図がある。クルドが念願する西クルド自治領の領域を示す地図である。トルコのクルドが北クルド、イラクのクルドが南クルド、シリアのクルドが西クルドである。シリアのクルド人たちは自分たちの土地をロジャバと呼ぶ。ロジャバはクルド語で「太陽が沈むところ」を意味する。

     

東のハサカから西のアフリンまで、切れ目がない。ハサカは南部まで取り込んでいる。

クルドの実力から考えると、コバニ戦が始まった2014年夏には、遠大な目標に見えたが、コバニ戦勝利後の2015年には、目標に大きく近づいた。ISISと戦うクルドを米国が支援したことが成果につながった。クルドの勝利によって、ISISは大きな打撃を受けた。米国のクルド支援は「みせかけ」ではない。

コバニのクルド軍に対する米軍の対応が、放置から「とりあえず支援」に変わり、さらに「本腰を入れた支援」変わったことを、「ロンドン書評」が具体的に書いている。

[引用開始]==============

  《米国、クルドを本格的に支援》

米国はトルコに配慮し、コバニのクルド人に対する支援を控えていた。10月になってやっとコバニのISISに対し空爆を開始したが、トルコを怒らせることを恐れ、米空軍は地上のクルド軍との連携を避けていた。

しかし10月半ば、米国の政策が一変した。クルド軍は攻撃目標の位置を精密に米軍に知らせることが可能になった。これにより米空軍はISISの戦車や大砲を破壊できるようになった。これまで、ISISの指揮官は重装備を隠すのが巧みであり、またすばやく兵士を分散させた。これまで米空軍の6600回の爆撃のうち、命中したのは632発だけだった。

しかしISISはコバニをあきらめておらず、クルド軍を打ち破るため、ISISの指揮官は兵力を集中しなければならなかた。この闘争心がISISに損失を招く原因となった。

クルド軍とわずか50ヤード(約46m)隔てて向き合っているISISに対し、米軍は48時間に40回空爆した。

ISISは最強の空軍に支援された敵を相手にすることになり、コバニはISISにとってこれまでと異なる戦場となった。

 

 《バイデン、スンニ諸国を痛烈批判》

2014年9月、米国はにシリアの空爆を開始した。60か国がISISと戦う有志連合に参加した、とオバマ大統領は誇らしげに語った。しかし有志連合は内実がともなわず、有力メンバーはISISを脅威とみなしていなかった。それはサウジ・ヨルダン・アラブ首長国・バハレーン・クェート・トルコである。これらのスンニ派諸国がISISをはじめとするジハード旅団の強大化に貢献してきたことを、アメリカの国民は知っている。

バイデン副大統領は、ンニ派諸国のテロリスト支援に米政府は困惑していると語った。10月2日、ハーバード大学の講堂で彼は次のように述べた。

「トルコ・サウジアラビア・アラブ首長国はシリアで、シーア派を敵とする代理戦争を積極的に行ってきた。これらの国は、アサドと戦う者たちに、数億ドルの資金と数千トンの武器を注ぎ込んだ」。

 

一方サウジ王族の一員で、大実業家のワリド・ビン・タラル王子は、「ISISはわれわれに無害なので、サウジアラビアはISISとの戦争に直接的な参加はしない」と述べた。

トルコのエルドアン大統領は「私の考えでは、PKKはISISと同じように悪い」と述べた。PKK(クルディスタン労働者党)はトルコの非合法政党である。シリアのPYD(民主統一党)はPKKの傘下にある。

(全文)Patrick Cockburn:Whose side is Turkey on?

   ===============[引用終了]

 

 

 

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(コバニ戦) トルコと米国の本心

2016-02-16 19:14:57 | シリア内戦

    

  <シリアよりイラクを優先する米国>

米国の真の意図は明確である。コバニ攻撃されても、米国は当初、何の援助もしなかった。8 ISISがイラクのクルド軍を攻撃した時、米国は即座に行動した。ISIS6月にモスルを占領すると、イラクのクルド軍は石油地帯の中心都市キルクークを占領した。

一か月後の7ISISはコバニの農村地帯に侵入を開始したが、10月まで米国は何もしなかった。

108日米国はシリアのISISに対する空爆を宣言し、15日には「内在的な決意」という作戦名が与えられた。抽象的な作戦名にふさわしく、この作戦は宣伝だけで現実味がなった。実質のある作戦は、トルコにやらせるつもりだった。

米国はトルコの戦車と地上軍をコバニを含むシリア北部に入れるよう、トルコに要求した。これはシリア北部がトルコ領となる危険があり、明白な侵略行為である。

この要求に対し、エルドアンとトルコ政府は、米国が飛行禁止区域を設定するなら、地上軍を出してもよいと返事した。

 

   <シリア北部を切り取る計画>

コバニ問題を契機に、米国とトルコは2011年以来のシリア征服計画に少し変更を加え、とりあえず北部の国境地帯を切りとることにした。シリア北部の国境地帯に緩衝地帯を設定し、地上をトルコ軍が占領し、上空を米空軍が支配する計画である。これは人道的な目的の平和維持という名目で実行できる。

2014102日、トルコの大議会はトルコ軍がシリアで作戦することを許可した。

しかし、トルコ政府は用心深く、米軍が飛行禁止区域の設定がない限り、地上軍を出そうとしなかった。それまでは、代理人のISISに仕事を任せることにした。

 

   <トルコのISIS支援>

コバニのクルド軍が敗北し、コバニが陥落するよう、トルコはやれるかぎりのことをやった。

トルコの情報機関と治安機関との連携が悪く、トルコの秘密作戦が暴露されされてしまった。ヌスラなどの反政府軍に渡す武器・弾薬を運んでいた情報機関のトラックが、アダナで警察官に検挙され、トルコ国内で大きなスキャンダルになった。アダナの郊外のインジルリクにはNATOの空軍基地がある。ここにはシリア反政府勢力への支援基地もあるという。アダナは地中海に比較的近い。

  

  <トルコはジャーナリストの墓場>

コバニを攻撃している重武装のISISに、トルコは大量の武器を配送した。このような報告が数多くなされている。ジャーナリストのセレナ・シムは命がけで、この事実をつかもうとした。彼女(Serena shim)はレバノン系アメリカ人で、ミシガン生まれである。イランのプレスTVと契約し、コバニを取材していた。国連食物機構の表示があるトラックの中にISIS戦闘員がおり、トルコからシリアに運び込まれている、と彼女は報道した。これに対し、トルコの情報機関は彼女がスパイ行為を行っていると非難し、彼女を脅迫した。勇敢なジャーナリストという評判だった彼女だが、「トルコはジャーナリストの墓場であるから」、不安になった。1019日、コンクリート運搬車が彼女の車に衝突し、彼女は死亡した。

 

   セレナ・シムと彼女の子供  

 

トルコはISIS援助をごまかすため、国境を完全に管理することは不可能であると言い訳した。外国人志願兵がシリアやイラクに入り込むのを防止できない、というのである。ならば、コバニの場合どうか。コバニでは国境管理は厳重であり、さらに補強されほぼ完璧になった。このためコバニを助けようとするクルドの志願兵はコバニに入ることができなっかった。トルコがヌスラ戦線をはじめ、外国の支援を受ける反政府軍を自由にシリアに入れていることは広く知られている。クルドに対する対応が正反対であることは、トルコの意図を際立たせる。

国内の圧力と国際的な圧力に押され、トルコは111日やっと150名のペシュメルガの通過を許可した。

     <慎重なトルコ>

トルコと米国は国境地帯に緩衝地帯を設定することをアサド政権に打診したが、アサド政権は明白な侵略行為だとしてこれを拒否した。1015日シリア政府は、この提案に関して友好国と相談すると声明を出した。トルコに対する脅しである。

トルコは侵略的意図を持ちながらも、ロシア、イラン、中国、その他の中立諸国の反応を観察していた。ロシアとイランは、クルドまたはシリアの土地に軍隊を入れてはならないと、トルコに厳しく警告した。109日、ロシアのルカシェヴィッチ外務副大臣は緩衝地帯の設定に反対して述べた。「トルコも米国も、当時国の意思に反し緩衝地帯を設ける、いかなる権限もない」。同時に彼は米国の空爆はISISを住民の中に紛れ込ませる結果を招き、問題を複雑にした、と指摘した。

イランのアブドラヒヤン外務副大臣は、トルコの冒険主義に対し警告した。

     トルコ軍戦車

   

   <米国の真の目的>

コバニの住民と戦闘員は、米国の空爆は役に立たなかったと繰り返し述べている。コバニの政治・軍事指導者も同様な見方をしており、住民から選ばれた政治指導者たちは、空爆は失敗だったと述べている。

YPG(人民防衛隊)とYPJ(女性防衛隊)は、米国の空爆はISISに対して効果がない、と指摘している。

米国と有志連合がラッカを爆撃する前に、ISISは拠点から逃げ出した。空爆を受けたのは、ISISではなく、シリアの産業施設と市民の生活基盤だった。民間の住宅と小麦貯蔵庫の爆破は誤爆だったとしているが、ペンタゴン(米国防総省)の真の目的は、シリアの国力を破壊することである。

ISISはシリアの社会構成を破壊しており、米国の目的に沿っている。米国にはISISを攻撃する理由がなく、空爆の真の目的はシリアの国家機能を破壊し、国家を弱体化することである。米国はシリアのエネルギー施設と生産基盤を爆撃している。ISISがシリアの石油を輸出するのを止めるため、というのは嘘である。なぜならISISは石油を輸送車でトルコに運んでおり、パイプラインを使用していない。ISISの石油輸出の大部分はイラクの石油であり、パイプラインでトルコに送っている。しかし米国はイラクのエネルギーのインフラ(生産基盤)を破壊していない。一言付け加えると、ISISの石油輸出は泥棒集団のレベルをはるかに超え、国家規模である。EUのイラク大使ヒバスコヴァは一部のEU諸国がISISから石油を買っていると看とめている。

このようにペンタゴン(米統合参謀本部)のシリア政策は、イラクとに対する場合と異なっており、米国の本心を暴露している。

米国はイラク戦争で、巨額の国費と若い兵士の命を費やした。イラクには膨大な石油があり、米国にとってイラクの方がシリアより重要である。かといって地域の安定を左右する点でシリアは重要であり、米国のアサド政権転覆という目標に変化はない。

米国とトルコはクルド勢力を取り込むこが無理だとわかれば、これを無力化するつもりである。コバニ戦の開始にはトルコが関わっている。だから米国はコバニを援助しなかった。それに、もともとISISは米国の手先である。

 

 <米国とトルコのクルド援助は表面的なとりつくろい>

厳しい批判と国際的な圧力にさらされたあげく、米国はコバニの守備軍に武器と薬の空輸を開始したが、この時にもISIS援助を忘れなかった。「誤って」と称して、ISIS部隊の近くに数個の荷を投下した。中身は米国制の手りゅう弾、RPG(ロケット推進榴弾)、弾薬であった。

米国同様トルコも、内外の圧力に屈し、111日ペシュメルガの通過を許可した。しかしペシュメルガはイラクの腐敗したクルド自治政府の軍隊であり、つまりトルコの同盟軍である。トルコにとって有害なYPGYPJ・の兵士および志願兵はトルコの通過を拒否され、コバニに入れなかった。コバニの守備軍に対するトルコの敵対的な行為は広く知られており、トルコに住むクルド人は自国の政府を憎んでいる。

コバニ陥落の衝撃は国内のクルド人の反政府闘争に火をつけるかもしれない。自治を要求するPKK(クルディスタン労働者党)との和解が破たんすることを、トルコは恐れた。

 

(原文)  

Mahdi Darius NAZEMROAYA

 

The War in Rojava: The US and Turkish Roles in the Battle of Kobani

 

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コバニ日記 10月18日-20日 ヘイサム・ムスリム

2016-02-06 18:26:39 | シリア内戦

 

コバニ出身のジャーナリスト、ヘイサム・ムスリムはコバニに留まり、自分が見た戦場と包囲の中で暮す市民について報告した。彼の叙述はコバニ戦の現実を知りたいと思う者に、かけがえのない情報を与えてくれる。彼の日記は9日-12日と1820日の2回にわけてニューズウィークに掲載された。今回は1820日を訳した。

   ≒====[コバニ日記]=====

  包囲下の喜びと悲しみ

18日≫

昨晩は眠れなかった。朝まで市内一帯に爆弾が落ちる音がしたからだ。私が数えた限りでは、57発だ。今日いくつかのメディアがISISは市内から追い出されたと報じているが、誤りだ。

コバニ・トルコ間の安全な通路はまだ開かれていない。トルコの国境警備隊は、コバニとトルコの往来をあいかわらず禁じている。コバニの人々はトルコが安全路を開くことはないだろうと、あきらめている。トルコの警備兵は薬と缶詰食品を背負ってコバニに運ぶ人々を銃撃している。

コバニの上空を軍用機が飛ぶのを見ると、人々はかっさいして喜んでいる。前線に出ない高齢の老人たちは、航空機の機種名が「オバマ」だと思っており、飛行機の音が近づいてくると、「オバマがISISを殺しに来た」と叫んでいる。

空爆の間、前線の銃撃戦は中止になるので、クルドの戦闘員たちは休むことができる。そういう意味では、空爆は有効である。しかし空爆によってISISを滅ぼすことはできない。現実的な唯一の道は有能で信念あるクルドの戦闘員に、重火器を与えることである。

19日≫

 昨晩ISISはすべての戦線で攻撃を開始した。彼らは新たな重火器の補充をうけたようだ。ここ数日の砲撃と違い、今日の砲撃は連続してしていた。

YPJ(女性防衛隊)の戦闘員は、結婚式の時の祝いの歓声を、勝利の叫びにしている。ISISの「アラー、アクバル」に対抗する叫び声だ。女性戦闘員の声を聴き、敵が女性だとわかると、ISISは辱められ、品位を下げられたように感じる。

今日、ISISの陣地のいくつかが空爆された。そのうちの2か所に対する空爆は、私がこれまでに見た最大規模だった。一発はISISの支配下にある治安本部を直撃し、15名のISISが死亡した。さらに大きな爆弾がセレ地区に落ちた。セレ(Sere)地区は1925-1930年にフランスによって建設され、コバニで最も美しい地区である。空爆によって全地区が瓦礫(がれき)になってしまった。

 

ISISはモスルで獲得した米国製の武器で戦っている。クルド軍のカラシニココフ自動小銃では、ISISの重火器に対抗できない。YPGとYPJの戦闘員は,ISISに勝利して武器を手に入れると大喜びする。それらは、M-16ライフルやハイテクの狙撃ライフルなど、新品で最先端の銃である。クルドの戦闘員はISISの陣地で爆弾を獲得することもあるが、使い方がわからず、冗談を言う。「下手に扱えば、俺たちが死んでしまう」。

クルドの兵士はこれらの西洋の新式爆弾を扱う訓練を受けていない。戦闘力の技術的格差を感じずにはいられない。

 

今日,私個人にとって悲しい日だった。24歳で大学三年生の私のいとこが死んだ。彼バンギン・ベリノは謙虚で知的な若者で、本の虫だった。彼をトルコで治療するため、救急車は検問所に向かった。彼は即座に輸血が必用だった。

トルコの検問所の警備兵は救急車を2-3時間待たせた。その間に従弟は死んだ。

      コバニの戦闘員

  

20日≫

 

クルドの人々と戦闘員は今日、この上なく幸福だ。米国の飛行機が武器、弾薬、医薬品をコバニのクルド支配地に投下した。米国が投下したこれらの補給物資は、イラクのクルド自治政府が用意したものであり、配送を米空軍に依頼したようだ。いずれにせよ、我々が孤立無援でないことを知って、気分が一変した。

前線地区に配置されているスナイパー(狙撃兵)が戻ってきて報告した。「今日YPGのスナイパーの数が増えたので、前線の建物のほとんどに配置できるようになった。ISISを身動きできなくった。連中は我々の今日の喜びをおびやかすことはできない」。

新たに補給された武器・弾薬により、クルドの戦闘力は高まった。ただ激しい戦闘が続けば、数日後には再び弾薬が尽きてしまう。戦い続けるには、補給の継続が必要だ。私はその点が気がかりだ。

医薬品も役にたった。しかし重症者を手術する器具がないし、専門の医師もいない。

 

補給の継続という課題があるにしても、ともかく補給物資が届けられたことで、コバニの市民と戦闘員の心理は一変した。イラクのクルド人がコバニを心配いてくれていることがわかり、コバニは孤独から救われた。皆が喜び、誰の目にも希望が読み取れた。補給物資が戦闘員に届いたと知って、年老いた男女の数人が喜びのあまり、泣き出した。

補給が継続すればISISはコバニで敗退するだろう。国際社会も補給物資を送り、コバニを応援してほしい。

 

(原文)  Newsweek/ Heysam mislim      

Kobane Diary: Joy, Sadness and Struggle in Town Under Siege

      

 

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