「なんであそこで佐藤天彦九段は馬を逃げるのかねぇ」
「永瀬九段が7八金と打った時だろ」
「プロ棋士って馬を大切にしすぎるんじゃないか」
「つーか。最終盤で大駒を逃げるなんて
もってのほか。佐藤九段はなんであーいうとこで踏み込まないの。
昨年の山崎八段との挑戦者決定戦でも決めるべきところで決めないで
優勢な局面を同じような感じで逆転されたよね」
「大優勢になって勝ちを意識すると『なにもここで踏み込まなくても
ゆっくりジワジワやってゆけばいい』みたいな守りの気持ちになって
柔道の試合に例えれば
ポイントをたくさん稼いだから
ぶなんに判定で勝とうと
腕を突っ張らかって腰を引いて守りに徹する感じ。
ところがそれが
落とし穴なんだよなあ。
勝負の神様からそっぽを向かれちゃう。
いったんそういうモードの沼に入ったから
もう手が伸びなくなっていって
せっかくのリードの貯金がなくなっていって
結局、逆転されてしまう」
「アマチュア四段の私の第一感は
アソコは、5七歩成りでした」
「とにかくあの場面、追及の手を
攻めの流れを止めちゃだめでしょ。
いかなくちゃ。いかなくちゃ」
「人生でもそういえるでしょうか」
「まさにそのとおりです。人生でも、行くべき時に行かなくちゃ
運が潮を引いたように後退します」
「なんだか説得力がありますね」