今放送した『ラジオ深夜便』の
絶望名言コーナーで取り上げたのは向田邦子だった。
二十歳頃
しばらくぶりに小説を読もうと
手に取ったのが
『思い出トランプ』だった。
変な表現だが
小説に没入するための思考が整ってない
逆に言えば
小説という物語にウブだったその時の私には
1作目の『かわうそ』は新鮮な驚きとときめきを与えた。
思わず
映画評論家の水野晴郎のモノマネで
「いや~短編小説って、本当にいいもんですねぇ」
と唸ってしまったぐらいだ。
『思い出トランプ』では「かわうそ」と「花の名前」
がよかった。
あと、なんとなく小津安二郎の映画の雰囲気もある。
日常生活に潜む怖さ...である。
『家族熱』というドラマで
家族を失い孤独になった加藤治子演じる中年女性が
夢遊病者のように商店街を歩き
ふと我に返ると
昔の自宅で立ち尽くすシーンもホラーだし
小津監督の『東京物語』の最後の
原節子と笠智衆の会話のシーンも
へたなホラーより怖いなあと思って観た。
全然話は違うが
向田邦子のエッセイに
「子どもの頃、夜中にお腹がすいて眠れないとき
リンゴをかじって空腹をしのいだ」という部分があって
以来、私は
「空腹だけど、もう歯を磨いちゃったんだよな。でも我慢できない」
そんなときは向田邦子のマネをして
リンゴをかじってなんとかしのいできたのである。
ご存じのとおり向田邦子は52才で飛行機事故で天国へ旅立った。
今の52才で
彼女ほどの
人間や人生に対する洞察力、観察力に富んだ人物は
どれだけいるんだろうか。
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