はな兄の1分で読めるエッセー

ふと脳裏に浮かんだ雑感を気ままに綴った日記

夜中の薔薇も好き

2025-02-07 01:54:32 | 小説

今放送した『ラジオ深夜便』の

絶望名言コーナーで取り上げたのは向田邦子だった。

二十歳頃

しばらくぶりに小説を読もうと

手に取ったのが

『思い出トランプ』だった。

変な表現だが

小説に没入するための思考が整ってない

逆に言えば

小説という物語にウブだったその時の私には

1作目の『かわうそ』は新鮮な驚きとときめきを与えた。

思わず

映画評論家の水野晴郎のモノマネで

「いや~短編小説って、本当にいいもんですねぇ」

と唸ってしまったぐらいだ。

『思い出トランプ』では「かわうそ」と「花の名前」

がよかった。

あと、なんとなく小津安二郎の映画の雰囲気もある。

日常生活に潜む怖さ...である。

『家族熱』というドラマで

家族を失い孤独になった加藤治子演じる中年女性が

夢遊病者のように商店街を歩き

ふと我に返ると

昔の自宅で立ち尽くすシーンもホラーだし

小津監督の『東京物語』の最後の

原節子と笠智衆の会話のシーンも

へたなホラーより怖いなあと思って観た。

 

全然話は違うが

向田邦子のエッセイに

「子どもの頃、夜中にお腹がすいて眠れないとき

リンゴをかじって空腹をしのいだ」という部分があって

以来、私は

「空腹だけど、もう歯を磨いちゃったんだよな。でも我慢できない」

そんなときは向田邦子のマネをして

リンゴをかじってなんとかしのいできたのである。

ご存じのとおり向田邦子は52才で飛行機事故で天国へ旅立った。

今の52才で

彼女ほどの

人間や人生に対する洞察力、観察力に富んだ人物は

どれだけいるんだろうか。

 



コメントを投稿