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毎日の暮らしの中にある大好きなもの、こと、出合(会)いなどについての気まま日記

虚夢

2008-08-30 10:06:17 | 読書
世の中を驚かせるような事件が起きるたびに「精神鑑定」「心神喪失」という言葉が出てくる。
刑法三十九条
心神喪失者の行為は、これを罰しない。
心神耗弱者の行為は、これを罰しない。

12人を殺傷するという大事件でありながら、逮捕された犯人にくだされたのは統合失調症による心神喪失により不起訴だった。
人の不幸に土足で踏み込んでくるマスコミすら、精神科への通院歴があるというだけで黙殺してしまう。
まるでそんな事件などなかったかのように。
この事件で愛娘を失い離婚まで余儀なくされた三上は、ある日別れた妻から「犯人」とすれ違ったと連絡をもらう。
被害者でもあった妻は、一時期PTSD―外傷後ストレス障害を引き起こしていた。
事件から目を背け、現実から逃げる生活をしていた三上に何が出来るのか。
見間違いであって欲しいと願う自分がいた。

記憶に新しいところでは、暴力を振るう夫を殺傷して隠蔽した事件があった。
これも心神喪失が最大の論点になっていた。
傍観者だから言えるのかもしれないけれど、無罪になることがあれば大抵の犯罪者は心神喪失状態と言えるのではないかと思っていた。

刑法三十九条によって、精神障害者と精神に障害を持つ犯罪者と混同しているのではないか。
ページをめくりながら、ふっとため息をつく。
現実にこのような事件が多発している今、非常に重い内容だ。
そして、百人から百二十人に一人の確立で発症するといわれている統合失調症。
人の心というものは、現代社会では簡単に壊れてしまうものなんだ。
色々な意味で考えさせられる内容だった。

あの秋葉原通り魔事件の加藤を、教祖様呼ばわりする人たちがいるそうだ。
ネット特有の、匿名性のいたずらなのか。
被害者の心情を思えばそんなことできるはずがないのに。

「虚夢」 薬丸岳