オムレツライスが有名な、日比谷公園にある松本楼。
1903年創業というから100年の歴史がある。
また、1971年、社会人1年生の時だったが、学生運動の末期は暴力が目立ち、
松本楼が放火され炎上した。
その後、再建され、1977年にわたし達の結婚披露宴をここでおこなった。
暴力と再生といった思い出の場所でもある。
しかし、こんなことも忘れるほど時間がたち、
日比谷図書館に行く途上で、松本楼を思い出し、立ち寄ってみた。
うす曇の寒い日だったが、銀杏の強烈な香りと紅葉した木立に囲まれ、
松本楼は、ハイカラ洋館のイメージでたたずんでいた。
11時半なのにすでに行列が出来ており、
外のテラスもいいが、肌寒かったので、中が空くのを待った。
“秋野菜とオムレツライス”を注文し、
ガラス越しに、最後にちかい秋景色を見入っていた。
イチョウ・ブナ等の葉が落葉し、黄色・オレンジ色のじゅうたんが敷き詰められ
足跡がないせいか、人里はなれた森の中にいるような錯覚を起こす。
それほど都市の中で静寂な時間があるところだ。
ニューヨークのセントラルパーク公園脇のホテルに宿泊した時は、
朝早くおきて散歩・ジョギングをしたりしたが、
西側には近寄らないようにして、東側だけを散策した覚えがある。
大都会のど真ん中の公園は、世界的に“危ない”ゾーンなのだ。
日比谷公園も1960年代は社会党浅沼稲次郎委員長が殺傷されたり、松本楼が放火されたり危険地帯であった。
しかし、いまは静寂すら楽しめるところとなった。
そこで食するものが不味いはずがない。
松本楼のオムレツライスに人気があるのは、
100年以上の経験に裏打ちされた“洋食”の老舗の味であり、
卵とクリームの素材の味が、余計な調味料でいじられることなく
シンプルにしっかりと存在している。
こんなところにありそうだ。
モダンボーイ・モダンガールなどと言われたモボ・モガ達おしゃれな人種
ご愛用の洋食であったとか
孫文が・・・・・とか
ドラマチックな物語もあるが
いまや、オムレツライスは普通の食となり、
意識にも上らない存在となりつつあるようだ。
貧乏な学生時代に、オムレツライスでなく、
ラードギラギラのオムライスにケチャップをたっぷりかけて食べた
下品な味が懐かしくなった。