「胃がんですね」
「あ、そうですか」
胃カメラ検査が終わったとたんに先生が告げた。
しかも手を洗いながら、さらっと告げられた。
「風邪ですね」
「そうですか」
トーンとしてはそんな感じだった。
ドラマにあるような深刻で暗く重い感じは全く無かった。
僕としては有り難かった。
暗く重いのは苦手である。
僕も僕でことさらショックを受けるでもなく、先生の言葉を聞いた。
実を言うと「もしかしたら・・・・」という疑念を少なからず抱いていた。
いや、確信に近かったと言っていい。
根拠は無いのだが、何故かそう思っていた。
ただ子供の頃から癌で死ぬ可能性もあると思っていた。
母方の家系に癌で無くなった親類が何人か居たからだ。
だから今回の宣告も「やっぱり・・・」という想いが大きく、自分の予想以上にショックは少なく済んだ。
僕の癌は”進行性”らしい。
つまり治癒率の高い”早期”の段階はとうに過ぎているということだ。
癌は自覚症状が出たら相当に進行している可能性が高いとはよく耳にしていたので、僕の癌もかなり進行しているはずだ。
「はずだ」というのはまだ検査が残っており、状態についての最終的な診断はまだ下されていないからだ。
そう、宣告を受けたのは、正に今日なのである。
そして明日また残りの検査を受けに病院へ足を運ぶ。
「助かるんですか?助からないんですか?」
そう訊く僕に、
「転移の有無もあるし、まだいろいろ検査をしてからでないと」
先生はそう答えた。
それはそうだろうと納得する。
ただ転移の可能性はかなり高いように思っている。
これもさしたる根拠は無い。だが少しずつ日々確実に体調が悪化している感覚はある。
つまり自覚症状がいくつか確実にあるということだ。
「○○検査をするので、明日とあさってどちらがいいですか?」
そう言う先生に、
「仕事が・・・・」
と答えると、
「仕事より身体のことを考えなさい!」
そう少し強い口調で怒られた。
そりゃそうだ。僕も少なからずショックを受けていたのかも知れない。
多少冷静な判断力を欠いていたようだ。
もしかすると先生はある程度予測が付いているのかも知れない。
何せその病院は「ガンセンター」を名乗っているのだ。
つまり今まで多くの癌を見てきたわけだ。
検査は正確を期すためだろうと僕は理解している。
現在僕の最大の問題は実家の家族にどう伝えるかである。
伝えない訳にはいかない。
実家には元気だが心臓に持病を持っている父と、ことあるごとに僕の健康を気遣ってくれる妹がいる。
頭の痛い問題だ。
僕は今日一つだけ心に決めた事がある。
「何があろうと、今後胃カメラだけは断固拒否する!」
ということだ。
あんなに苦しいものは無い。
まったく拷問に近い!!
先生にどんなに怒られようと、これだけは譲らない。
ということで、気紛れで面倒臭がりなので今後どれだけ更新できるか自信は無いが、とりあえずブログを立ち上げてみました。
なかなか更新されてないかも知れませんが、気が向いたら覗いてみてください。