娘の最初のアトピーの皮膚科の先生は、口調が特徴的で、捉え方によっては怖い先生でした。
つたつたつたと独特の足音をたずさえ、大変に低くゆっくりとした口調で、表情は変わることなく淡々と話します。
「はい、今日はどんなかんじー?」
非常に混雑した皮膚科さんでしたが、私が丁寧にゆっくり答えても、さえぎったりされることもなく、ふんふん、と聞いてくださいました。それを踏まえて見立てて薬を処方し、処置の仕方を指示されます。
先生のその落ち着きぶりは確かにちょっと怖いかもしれません。
近所の方で怖くて通えないという方もいらっしゃるほどでした。が、少しずつですが、とにかく良くなるので、私はありがたいなあと思って通っていました。
そんなある日、娘はまだ赤ちゃんで離乳食の頃でしたので、手でご飯を食べたりしていました。
ご飯中に、卵の入った器をひっくり返してそれが洋服にしみてしまって、あらあら!とこちらが片付けていても本人は気にせず、みたいなそんなことがありました。
もういいや、とばかりにゆっくり片付けをしていて、服を脱がせたら、肌がめちゃくちゃでした。
うわ!
なんかぼつぼつしたものとか、赤く腫れているところがありました。ミミズ腫れのようなものやとにかく一見してひどい状態でした。
「たまごだ!」
食物アレルギーか。卵が食べられなくなったらかわいそうだなあ。とぶつぶつ思いながらも、アナフィラキシーみたいな症状はなかったので、次回受診の時にご相談しようと思って、しばらく卵を除去していました。
次回受診の時に、先生に報告したところ
「あのねえ、そりゃ、触りゃなにか出ちゃうこともあるでしょうよ。お腹とか腕なんて皮膚も薄いんだから。」
え?そういうものなの?
「まさか、食べるのを除去しているんじゃないでしょうねえ。このまま除去したら、本物のたまごアレルギーになっちゃうから、ちゃんと食べさせてよね。はい。」
と、こんな感じで、一蹴されてしまいました。
とりつく島もないとはこのことか!と思うほど、先生は呆れ返ってこの話をしている感じでした。
そんなことで完全除去なんて、ばかじゃないの?とでも言い出しかねない雰囲気で、本当に馬鹿げたことと思っているのだろうと感じました。
へえー、そういうもんなのかあ。と、半信半疑でありつつも、先生を信じるしかない!と、もう一度白身からあげることにしました。
驚くことに、娘は生卵はちょっと微妙な時期があったのですが、結果加熱した卵は問題ありません。(生卵で吐いたりしたことがあるので、アレルギーだったとは思います。)
あのまま除去していたら、どうなっていたのでしょうか。かと言って、危険がなかったかと言えばウソになるし。でも結果的に良かったと思っています。
情報が溢れる中で、何を取捨選択するのかは本当に難しいです。何が正解かわかりませんから、その時必死に選んだ結果をあまり後悔しないようには気をつけています。
このことは、治してくれている先生が言うんだから、という信頼一本だけの決断でしたが、そういう勘も時には役に立つのだと知りました。
娘のたまごアレルギーは何とか回避できたのかな、と、この怖い皮膚科の先生に密かに大感謝しています。