十勝の活性化を考える会

     
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追悼:秋刀魚の歌

2019-09-26 05:00:00 | 投稿

2019年9月23日付 北海道新聞 一面
 【根室】根室市・納抄布岬の東方沖で大樹漁協(十勝管内大樹町)所属のサンマ棒受け網漁船「第65慶栄丸」(29トン)が転覆し1人が死亡。7人が行方不明となった事故から1週間目を迎える。今年は例年の漁場のロシア200カイリ水域や日本近海に魚群が見当たらず、転覆事故が発生した以降も同型の漁船はリスクを承知で、うねりの大きい公海に向かう。「サンマは代わりがきかない収入源。取りに行かなければ生活が成り立たない」背景には深刻な不漁に追い詰められた漁業者たちの事情がある。(村上辰徳、五十地隆造)

 

佐藤春夫  秋刀魚の歌

あはれ
秋風よ
情〔こころ〕あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉〔ゆふげ〕に ひとり
さんまを食〔くら〕ひて
思ひにふける と。

さんま、さんま
そが上に青き蜜柑の酸〔す〕をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみてなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児〔こ〕は
小さき箸〔はし〕をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸〔はら〕をくれむと言ふにあらずや。

あはれ
秋風よ
汝〔なれ〕こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒〔まどゐ〕を。
いかに
秋風よ
いとせめて
証〔あかし〕せよ かの一ときの団欒ゆめに非〔あら〕ずと。

あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児〔おさなご〕とに伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。

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