お礼奉公
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私の母の実家は、明治時代からの「床屋さん」です。
祖父が生きていた頃は、沢山の住み込みの人がいました。食・住・技術指導を無料で受ける事が出来ます。
その代わりに、一人前の技術者になったら、数年間は「お礼奉公」として、お小遣い程度のお給料で働くのです。
その後は、実家に戻り親の跡を継ぐ人、自分で店を持つ人等が有ったようです。
でも、そんな修行をする制度もすっかり減ってしまい、板前さんなんかは今も有るようですが、それは特殊な世界と言う感じです。
所が、私の妹が「カイロ」の勉強を始めたら、この制度が残っていました。 学校で学んだ後、実際のお店で実技の指導を受けました。
一年間、一日に2万円~3万円分の仕事をしながら、一円の収入も有りませんでした。そして、約束の一年が過ぎても開放されなかったのです。
流石に、大人しい妹も反旗を翻し、断固、相手の理不尽な要求を跳ね返したそうです。「お礼奉公」なんて、死語の世界だと思っていましたから、少し驚きました。 それは、無給で一日2万円以上も稼ぎ出す人間を手放すのは痛手でしょう!
しかし祖父の時代でも、祖父はそんな理不尽はしていませんでした。
お弟子さん達は今でも、祖父を尊敬し慕って下さってます。 私のちょっと驚いた事件でした。