今回、隣の課のS君が事業立案をしました。
その内容はユニークで、簡単に説明すると子どもたちに年間を通じて就農体験をさせようというものでありました。
この企画を聞いたときにとてもうれしくなりました。
なぜなら、S君は平素、飄々としてあまり感情を表に出さない人物だからです。
内心、もっと熱きものをもって欲しいと物足りなさを感じていたのです。
でも、それは私の大きな見当違いでした。
S君にはS君なりの子どもの教育に対する危機感のようなものをしっかりと持っていたのです。
以前読んだものの中に、「食育」を突き詰めていくと「生きる」ということに行き着くと。
そのための手法としては、「農業」が役に立つと書いてありました。
また、農業の持つ奥深さは創造力をも高めるとも書いてあったのです。
このことが、ずっと頭の片隅に残っていました。
でも、楽しく農業を体験させるのはどうすればいいのか、ずっと考えていました。
今、公民館事業の中で田植え、稲刈りなど米作の大きなイベントを体験させることはあっても、もっと深く入り込んだ農業体験学習はありません。
それは生活のかかっている田畑まで提供して欲しいというのは虫のいい話だからです。
また一方で、真剣に農業に取り組むという姿勢が子どもたちにあるかというと疑問です。
その前に保護者が大反対をする可能性があります。
しかし、S君はこのことに挑戦しようとしています。
そして、S君が思いついたのが、日本テレビ系でやっている「鉄腕ダッシュ村(http://www.ntv.co.jp/dash/village/)」的手法をうまく活用できないかということであります。
なるほど。
この番組は、成功事例ばかりではありません。
困難なことに立ち向かっても、うまくいかないことがあるということを表現しています。
それは大いなる自然との闘いだからです。
でも、翌年は前年の失敗を取り込みながら新たに挑戦をし、結果が出るまで挑戦し続けます。
また、100点満点だけでなく、失敗の後、例えば2割、3割でも良しとするというところがまたいいのです。
自然の中で、人は無力です。
自然と共生しながら得られたものが例え少なくとも感謝する大事さを訴えます。
そして、出来上がったものを美味しく食するというところで一作物が完結するストーリーになっています。
また、生活用品を自給自足することも見せてくれます。
S君はこれらすべてを子どもたちに体験させたいというのです。
そして、企画案の段階でのやり取りはこうです。
「どこでやるの?」
「それを相談しているんです。」
「・・・」
「地域だけでやるの?」
「できれば地元大学の先生や学生さんなんかにも入っていただき、実行委員会方式でやりたいと思います。」
「なるほど。(委員の)あてはあるの?」
「ありません、これからです。」
「・・・」
内心、凄い(いい加減な)やっちゃと思った私は変でしょうか。
そして、今日、できそうな地域へ連れて行きました。
思った以上に(受け皿となる相手側の)感触がよかったので、私自身が驚いています。
私自身なんだかやれそうな気になってきました。
その後、S君とうどんをすすりながら今後の話を含めて色々と話しました。
S君は、前々から現場の仕事に憧れ、うちの仕事をうらやましく思っていたようです。
彼から、
「課長のとこの仕事は、現場ですから楽しそうですよね。」
「楽しいばかりじゃないよ。」
「そりゃあそうでしょうけど、でも現場は楽しいと思うんです。」
「ああ、本当に楽しい。」
「そうでしようねぇ、課長を見ていたら本当に楽しそうですから。」
「そうか、じゃあ来年うちにおいでよ。」
「・・・」
現場は本当に楽しいよ!!S君。