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昭和の反乱を読み終えて

2015-11-19 07:15:07 | 日記
 昭和の反乱という本を読み終えました。著者は石橋恒喜という東京日日新聞、今の毎日新聞の陸軍担当の記者だった方です。上下巻に分かれていますが、上巻が三月事件、十月事件、相沢事件など、下巻が二・二六事件について書かれています。

 三月事件や十月事件はクーデター未遂に終わっていますし、計画そのものもずさんだったりするので、この事件を中心として書かれた本はあまりありませんが、二・二六事件は実際に千人を超える兵士がクーデターに動員され、政府の要人が何人も殺されたり負傷したりしたうえ、反乱軍が数日にわたり国家の中枢を占領するという事件だったわけで、戦前の昭和を扱った本では必ず取り上げられていますし、関連する本も多く出版されています。

 この本がそれらの本と大きく違うのは、当時陸軍の担当の新聞記者だったということで、単に当時の陸軍の記録や反乱将校の書き残したものによって書かれているのではなく、当時の陸軍の軍人、それも陸軍省や大将レベルの軍人、反乱将校につながる将校などに直接取材した内容がふんだんに書かれていることです。

 二・二六事件を扱った本の大部分が評論家的に書かれているように感じるのですが、この本はドキュメンタリーみたいな臨場感を感じます。著者は陸軍担当の各社の記者のなかでも古参だったとのことで、当時の新聞には書くことのできなかった陸軍省の中心となる将校や反乱将校に近かった将校から得た秘密の情報も書かれているので、他の二・二六事件ものからは感じられない真実の迫力があります。

 私はマスコミ関係のことはよくわからないのですが、当時の新聞記者の様子がわかるのも面白いところです。各社の記者が協力しながらも、ライバル紙として特ダネを狙っているところなど、知らない世界の話なので大変面白く読むことができました。

 ということで、戦前の昭和期についてある程度の知識をお持ちの方なら大変に面白く読むことができる本だと思います。