◆改定重ねたフィリピン、ドイツも国内法適用強化
誤解だらけの日米地位協定
Q7.なぜ変わらない?
どうして、米軍の事故や犯罪がくり返されても、日本政府は日米地位協定を改定しようとしないのか。
それはQ2で説明したように、安保条約が米軍の日本駐留の権利を書いた「駐軍協定」だからです。
NATO加盟国にとっては、NATOの一員であることと、自国に米軍基地を受け入れることは同じではありません。
フランスは1966年に、NATOの軍事機構からの脱退を表明し、米軍が駐留する国内の基地をすべて閉鎖しましたが、当時も現在も変わらずNATO加盟国です。
フィリピンも1992年、すべての米軍を自国から撤退させましたが、その後も変わらずアメリカの同盟国です。
これらの国々は、同盟関係を規定する条約と、米軍駐留に関する協定を別々に結んでいるからです。
しかし、安保条約の場合には、同盟関係と米軍駐留が切り離せない構造になっているため、米軍の日本撤退は同盟関係の解消につながりかねません。
加えて、日本は戦後ずっと戦争を放棄する憲法9条のもとで、米軍の日本駐留によって安全保障を確保する方針をとってきました。
在日米軍にとって不利益でしかない日米地位協定の改定が、米軍の日本撤退につながるリスクをおかしたくない。これが、日本政府の偽らざる思いではないでしょうか。
米国務省が2015年に発表した「地位協定に関する報告書」には、米軍を受け入れている国がその存在を必要としていれば、地位協定についての交渉でアメリカは常に優位に立てるとあります。
日本はまさにこの典型です。
同報告書は、もし受け入れ国の国民が、駐留米軍は自国の主権を侵害しており、不要な存在だと考えれば、アメリカは交渉で不利になるとも指摘しています。
日本政府の2015年の世論調査結果によれば、国民の8割超は安保条約を「役立っている」と評価しています。
こうした現状では、日米地位協定の改定は簡単ではないといわざるをえません。
問われるのは、国の政策以上に、それを支える世論なのです。
それなら今こそ、そのチャンスだと思うのですが、如何でしょう?
米軍基地由来の国内の感染拡大です。
コロナウィルスは、毎年のように新たな変異株が発生して世界中に拡散しています。
これからも日本の国内法が適用されない米軍基地から感染拡大する可能性があります。
国民全体が、その危惧を抱いている今なら。
昨日の施政表明演説で岸田首相も地位協定に基ずく日米合同委員会で協議すると発言しています。
「在日米軍に関わる保健・衛生上の課題に関し、日米地位協定に基づく日米合同委員会で議論する」
首相はコロナ対応を説明する中で、感染が急拡大した在日米軍に触れた。(東京新聞)
後は私たちの声。世論の形成です。
ちょうど憲法改正の国民投票を自民党がTVCMを使って呼びかけています。
今は憲法改正なんかより優先順位の高い日米地位協定の改正です。
国民投票で合意して、せめてお隣の韓国並みに国内法で検疫できるシステムを。