闇を透かして視えてくる幽かなものに惹かれる。
深い森の中で、梢越しに射し込む月光の粒子とか。
雨上がりの草叢に息づく、星明りを映す無数の露たち…
目を凝らさなければ視えてこない、幽かなものたちの気配に引き寄せられる。
暮れなずむ群青の色が、あたりを覆い
河鹿(かじか)の声と川面の瀬音が、闇の中から、くっきり音が立ってくる。
葦の葉影に灯る幽かな燐光。
その風に揺らぐような儚げな明かりの点滅に目が吸い寄せられる。
またひとつ、またひとつ、藍を溶かした闇の奥から燐光が瞬く。
ふわ~っと虚空に燐光が浮き上がる瞬間。
そのまま魂(たましい)が持ってゆかれそうな…
もうひとつの視線が、虚空を見上げる私を見下ろしているような、
そんな夢と現(うつつ)の狭間を彷徨うような境界の時間…
相変わらず気温が低いのと、二度の降雨が影響したのでしょう。
もう暗闇でチカチカ光る個体自体が激減しています。
今年の蛍は、これで終わったかな?といった印象です。
川面に下りて、増水した流れに足を浸した状態で、
あたりが闇に沈むのを待つ時間は、境界の時間(逢魔ヶ時)なのでしょう。
昼間の喧噪が去って、徐々に闇の中で物の輪郭があやふやになり、
川の瀬音や河鹿蛙の声がより鮮明になって、五感が研ぎ澄まされます。
そんな闇の中から浮かび上がる幽かな光は神秘的です。
それが光の点滅を繰り返す同調現象を起こしながら、虚空を舞うのですから尚更です。
目を凝らしていると、トランス状態に陥りそう…
これを有名蛍棲息地の人混みではなく、たった一人で闇の中で向き合うと…
かなり危ないです(笑)
魂が持ってゆかれるかも?
離魂症は宗教者(修験者)の体験談によると、オカルトではなく生理現象であると。
断食修行や臨死体験とかの身体の極限状態で脳が見せる幻覚なのでしょう。
頭がトランス状態に陥ると、危ないです(汗)