釜石市の東中学校、鵜住居小学校の生徒たちが中学生に先導されて避難した。今回の大津波でもっとも感銘的な避難劇の一つであった。
(第一ステージ)地震と同時に大津波を察知して避難を始めたのは部活中の東中学校のサッカー部員たち。逃げる彼らを見て同校の生徒や隣接する鵜住居小学校の児童も一緒に山に走り出した。津波は両校の3階までを襲った。
(第二ステージ)ハザードマップで安全とされた目的地の避難所は東側の斜面が崩れ、危険だと中学生は判断した。小学生の手を引き更に500m先の高台に向かった。写真には再度高台を目指している様子が写っている。その30秒後、後にした安全とされた避難所にあったグループホームは波にのまれたという。生徒・児童600人はこうして避難して全員助かった。
この二つの判断が生死を分けたと日本経済新聞は書いている(4/24)。新聞記事は「正常化の偏見」という事を書いて「これは災害時の心理で、人は危機に際し、率先して避難できない。危険を過小評価し、心の安定を保とうとする傾向がある」という。
第一ステージでは中学生が率先して避難を始め、この心理を打破した。これは第二ステージにも共通する事で第二ステージでは更に強く襲ってきただろう「心の安定を保とうとする傾向=安全地帯に来たのだからもういいだろうという心理」を再度打破して、危機を修正して、絶対安全と思われる高台を目指したという事である。
この避難劇はよく知られているが、ここで敢えて言いたい事は、なぜ生徒・児童たちは二度の偏見に打ち勝ち、率先して避難することが出来たのか、と言う事である。どうしたらこのように悠々と大難を回避できるのかという事である。
(答えを知っている事とそれを実行する事は別だという事を念頭において聞いてほしい)どんな訓練であったかは正にこれからくわしく検証される事であるだろうが、地味に見える避難訓練、学校での授業、児童・生徒にあわせたプログラムなどの積み重ねが行われていた。記事では特筆して大学教授が継続的に指導していたと書いているが行う内容について特別のことはないように思える。特別な事は現地の教育委員会なり、自治体の本気度が児童・生徒の心琴に伝わっている事である。