鍬ヶ崎の防潮堤の問題は2015年、工事は(上から目線で)粛々と進んだが、住民の理解は進展したとは言えなかった。重い、厳しい問題をそのまま、2016年に先送りする事になった。子供世代、孫世代に先送りしないようによくよく考えて年を越そう。
1、宮古市議会12月定例会陳情より
1)鋼管杭の支持層未到達による鍬ヶ崎「1工区」の1億6000万円の公費の増額、8ヶ月の工期の遅れの責任はどこにあるのか? だれが責任を取るのか?
2)防潮堤基礎くいの支持層到達の検証、認定は第三者によって行われるべきである
3)支持地盤の地層、地形の基礎調査は縦断層だけでは片手落ちであり厳密な横断層調査が必要である
12月定例会への以上の陳情は「不採択」となったが、これらの問題点は採択・不採択の問題ではない。年を越しても変わらず問題にしていくことになる。
【解説】
1)「1工区」の責任問題は1工区だけの問題ではない。このままだと全工区にわたって岩手県のこの無責任管理問題は引き継がれていく。公費の増額、工期の遅れは計り知れない。全くけじめがない。国費の問題であり一応国の会計検査院には提訴しておいたがそちらの判断より県民一人一人の判断の方が大事である。契約のけじめという事を考えてほしい。公工事である、違反者には官民問わずペナルティーを課すべきである。土木建設における岩手県の官民癒着体質は市民税、県民税だけに止まらずついに国税も喰いちぎり始めている。というよりマスコミの問題意識を含め問題が浮上しないローな県民性(市議会でも不正は問題にならなかった)。というよりいい加減な工事に命をゆだねる状態を許す状態が恐ろしい。
2)できるかぎりの第三者である。陳情では宮古市議会を挙げている。とうぜん県・土木センターや市・建設課は当事者であって第三者ではない。まして樋下建設やその下請け会社ではダメな事は決まっている。しかしそうしようとしていない。市議会は岩手県に問い合わせるという。何のこっちゃ? ここもけじめがない。
3)「横断層調査」は採択・不採択の問題ではない。プレキャスト防潮堤建設の絶対必要条件である。県はマンション等一般の箱もの建造物のための「地質調査」と同じとタカをくくってその程度のあまい予備調査で済まそうとしていた。しかし最初の「1工区」で手痛い失敗をした。修復を試みたが2度目の失敗になった。建造物の基礎構造の特殊性から、また立地の地下地質・地下地形から、1000本を越える基礎くいの支持地盤の厳密な調査は不可欠である。不勉強な宮古市議会はローすぎる。
<参考1>
岩手日報<いわてのジオのモノがたり37>2015.11.14
三陸ジオパーク<ジオブログ>(2015.12.1)より
この図を「支持地盤」の観点から理解するには色分けされた地上・海上各地質から支持地盤地層を地下方向に推測するしかない。立地点が陸から海に向けて褶曲、断層、不整合という事を含めて充分に複雑地層、地形急峻な事は分かると思うが宮古港周辺に向かって集中している。せめて2本の断層を目に留めてほしい。詳しくは12/1付けの<ジオブログ>で…。本来は職務として岩手県がそっせんして支持地盤地層図を作るべきものである。科学的解明は岩手県の責任。
<参考2> 「次に、蛸ノ浜断層は鍬ヶ崎の切通しから蛸ノ浜を結ぶ断層線で、その延長上に海洞群がみられ、更に砂子島を陸岸より切離し、日出島も同様である。したがって、蛸ノ浜断層は切通しと日出島と日出島(軍艦島)との中間を結ぶものと言える」(工藤 一「リーセントに於ける地形発達~宮古付近の場合~」“岩手県沿岸史談会編「史潮 8号」昭和50年”より)
2、防潮堤陸閘の変更と自動開閉システム
・陸閘の位置とデザイン問題 12月9日の県・土木センターと当「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」の話し合いの中で鍬ヶ崎の陸閘の位置が変更になったと聞いた。位置の変更の地区住民への説明はなかった。聞かなければ教えない態度。全9カ所の陸閘の位置の変更をこのまま説明なしですますつもりであろうか? 変更陸閘は日立浜の第3陸閘(仮称)であるが、誰か漁師の要望で変更したにせよ、公表されていない事だ。防潮堤の陸側、海側をつなぐ陸閘の位置の変更は土木センターが考えている以上に大きい事なのである。地区住民にはていねいに説明する義務と責任がある。ところで、陸閘や防潮堤を跨ぐ(またぐ)陸橋のデザインも地元に全然説明されていない。位置の変更、デザインの不在のままの設計で防潮堤の建設が進んでいる。住民との合意があるとはいえない設計や建設工事は明らかに違法な事である。
・陸閘の開閉の自動化システム この件の住民への説明がありましたか? 鍬ヶ崎の防潮堤も自動化されるのでしょうか? 電気系統と電波系統を駆使して自動化システムが予定されています。(1)自動開閉システムは信用できるほどシステムが成熟しているのでしょうか? (2)その人的配置、メンテナンスは消防署からどこに移るのでしょうか? 県? 市? 宮古漁協? 地元民? ──この問題に拙速感は免れません。閉伊川水門のように、まさか、前例ないものを、検証されていないものを、実験台として、試運転と有事運転を一緒にやるのでしょうか? 一般に試運転は、場面場面、部分部分の実験実験、修正修正の後の完成試運転の事である。あまりにも地元民を馬鹿にしている。実験台にはなりたくない。
3、その他
・災害危険区域問題 震災跡地に家を建てたい鍬ヶ崎の人は防潮堤が建つ事を心待ちにしている。(1)防潮堤が立てば家を建てる事が出来る(2)防潮堤が立たなければ家を建てる事が出来ない。みんなが(1)(2)の間で我慢して希望をつないでいる。ところが(3)防潮堤が立っても家を建てる事が出来ない、(4)防潮堤が立たなくても家を建てる事が出来る、と考える人も居る。(3)は田老の場合で、田老ではそのために土地のかさ上げを(公費で)行っている。
・受益者負担の懸念 防潮堤の維持管理、修繕、立て替えにはいくらかかるのか? 誰がその負担をするのか? の問題は、防潮堤の功罪の後の最大関心事となる。
・避難道への無関心 「防潮堤より避難道」のスローガンはまだ生きて頑張っている。しかし、避難道建設の現況はどうなのであろうか? 今現在、避難道、「避難という事」への関心が低まってきているのでないかと懸念される。防潮堤への神話を壊さなければこの傾向は続くものと思われる。代わって、津波と共生する事が自然にある状態を作り上げる事が大事。健康で津波を察知する能力とでもいおうか…。教育や訓練で身に付く事は証明されている。
・合意問題 鍬ヶ崎防潮堤の建設は地元地区、また宮古市民の間で合意形成されていない。
よ い お 年 を !