日本経済新聞(2017.3.20)
震災前は万里の長城〜
震災後は海上ピラミッド
どこまでも愚かな人類の系譜、日本の国家官僚、岩手県庁、大船渡市
風光明媚な大船渡湾を巨大なコンクリートが塞いでしまった。
<考えのない愚行>
3.11直後、大船渡湾の水温状態、低酸素状態が急激に改善された。3.11大津波による湾口防波堤が倒壊して、湾内外の海水の交流によるものだと言われている。この事実を大船渡市民、岩手県民の中に深く広く、問いかけて広くコンセンサスを求めるのではなく、事故後間髪をいれずに復旧工事に取りかかったのであった。岩手県や大船渡市は国の先決工事だという事で、同様、指をくわえて国のやるようにまかせたのであった。その愚行と市民への無作為の裏切りの結果が今回の完成である。
大船渡湾の景観のみならず、このような水質改善や漁業等の産業、生業(なりわい)、水棲生物の生態へのマイナス影響は計りがたく大きい。このマイナス影響を越えて湾口堤防のシンボル的価値は大きいというのか?
湾口防波堤建設が景観を初めとするこれら海洋生理にプラス恩恵をもたらす事を証明せよ!
(参考記事)大船渡湾の水質改善 湾口防波堤の倒壊が一因か
大船渡市の大船渡湾水環境保全計画推進協議会(水野雅之亮会長、委員30人)は21日、同市盛町のカメリアホールで開かれ、震災後、湾内の水質が改善されたとの報告があった。津波で湾口防波堤が倒壊したことが一因とみられる。
報告によると、震災前の2010年8~9月は水深20メートル付近を境にして水温が大きく異なった。20メートルより深くなると酸素量は少なくなり、9月には底層で無酸素状態となっていた。これに対し、震災後は深さによる水温変化が小さくなった。湾口内外の水温差もなくなり、低酸素状態も改善された。
化学的酸素要求量(COD)も10年度の最大値が1リットル当たり5ミリグラム(環境基準同2ミリグラム以下)だったが、11年度の最大値は同3・5ミリグラムに減った。調査会社は「湾口防波堤の倒壊が海水交流変化の一因と考えられる」と指摘した。(2011/12/22 岩手日報)
<11.3メートル255億円の費用対効果>
<湾口防波堤の防災効果>
「震災級の大津波が来た場合も倒れずに、住民が避難する時間を稼ぐという」(記事)、どこまでいい加減な弁解をするのか?! 東日本大震災級の津波でも倒れないというのであればもっと低い設計にすればいいのだ。役人の「避難する時間を稼ぐ」が巨大堤防の唯一の弁解だ。倒壊しなければ6分内外の時間が稼げるという。間の抜けた弁解である。
津波浸水地帯の避難は6分の時間の問題ではない。地震警報、津波警報の整備で、避難は即、ほとんど0分から1〜2分での避難開始でなければならない。3.11は地震後また警報後20分から30分の時間的余裕ががあった。しかし、被災の悲惨さから、それが「余裕」の時間であるという事は否定されている。津波避難には絶対必要時間以外に余裕的時間というものはないと思わなければならない。これら避難の時間のシミュレーションは避難行動そのものの訓練や避難時間の地域の共有意識の問題である。有効的基準としてこの「弁解の6分」が役に立つ事はない。
まさに、津波の侵入時間を押さえるとか、住民が避難する時間を稼ぐという事はないのである。役人はよく地元の声を聞くべきである。
<合意なき独善>
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