前ページ「2、津波のかさ上げ」つづき
津波対策かさ上げ図(4)未来の津波
一見かさ上げは津波に対して有効な対策のように見えるが(4)図のように未来の3.11規模の震災・津波に対しては無力であって何の対策にもなっていない。
a. 第一にかさ上げされた平地の高さは津波浸水を阻止することが出来ない。津波の浸水の水量は一定で今次3.11津波の浸水量が高さに関係なくかさ上げ地に浸入する。
b. 最悪の場合、かさ上げ地盤が、より高い平地に渡したはしごの役割をして、一層広範囲な津波被害をもたらす。条件によっては浸入波は驚くほどの距離、高さに到達する。今次3.11津波においては内陸側に5km到達(宮城県名取市)、斜面遡上高では37.9メートル(宮古市田老地区小堀内)38.9メートル(宮古市姉吉地区)などがあるがその規模が参考になる。
c. 地盤を高くすれば水が出ないという一般の人の考え、かさ上げは洪水に有効という特殊な場面をバックにして津波復興、津波防災に進むことは根拠のないポピュリズムと言わざるをえない。ポピュリズム=大衆迎合主義はこのような場面においても危険な思想である。
d. 県土整備部がなぜこのような展望のない間違いをするかというと彼らの「かさ上げ」成功体験がまだ内陸の洪水対策としてのかさ上げにとどまっているからである。前ページ洪水対策かさ上げ図(2) (3)を参照。沿岸の津波を理解するには至っていない。県土整備部としては土地のかさ上げによって津波浸入をを阻止するものと考えるであろうが津波にとってはかさ上げによって陸地が平(たいら)に均(なら)され津波力のままにどこまでも浸水溯上が可能になると考える。
一方、内陸部の河川洪水も沿線集落の民家に時には甚大な被害をもたらすがその特徴と言えば…
イ. 基本的には河川から溢れ出た水量による被害である。津波と同じように見えるが浸入水流の強さについては比較にならないほど小さい。
ロ. 河川洪水の場合海に流れて排出する水量は無限で迅速。溢量は時間をかけて始まり時間をかけて収まる。津波の突発性と異なるところである。
ハ. 津波の場合は浸入する方の水量が無限大で短時間であるが後から押されるようにして無制限の水量が溢入する。洪水の力のベクトルは方向も強さも異なる。力の質が異なり、災害の質が異なるといえる。
ニ. 河川洪水は計算が成り立つ。津波は成り立たない。計算に必要なデータの蓄積がある。津波にはない。
データをふくめて県土整備部は津波について無知だといえる。だから「かえって危険な」かさ上げの間違いを犯すことになる。
津波対策かさ上げ図(5)未来の津波跡地
津波はかさ上げ地盤そのものも襲撃し破壊する。かさ上げ土砂を沖に運び去る。
[関連記事] 懲りない面々「コンクリート村」(3)~国交省「かさ上げ事業」は砂上の楼閣事業~
☆