目覚めると春の嵐のような温く激しい風と雨。
窓を叩きつける様な雨の音はなく水の中から窓を観ているような雨。
微かみえる向こうは真っ白で不思議な真夜中。
僕は明かりもつけず気分は水の中を泳ぐ。
次第に部屋さえも水の中に浸ったようにウニョンと部屋が歪みんでゆく。
「浸(ひた)るのも良いですが浸(つ)かったもんも良いですけ」
だっ!僕は驚きベッドから飛びあがった。
「白菜の漬物あがったから食べなっせ」
静かな声に品良い老婆は一体どこからっ!?「銀河食堂」現る!?
「気温19度の1月も営業中、ですけ」と老婆は言うとボクに
「七草は食べましたな?」
ウンウンと僕は頷く。
「それは良かった」とウンウンと老婆も頷く。
僕に箸をわたすと「柚子ようけ入れてみたが」と言う。
「あ、僕好み」口にいれると頬がミュッてなった。
「でしょうなぁ」老婆が微笑む。
静かに老婆が話しだす。
「昔々、栗の木の下にミーという猫が・・・」
「ちょっと待って!え?それは!」ボクは目を丸くし涙がポロリ。
あー・・・老婆が静かに息をつく。
すると銀河食堂が歪んでいく。涙のせい?潤んだ瞳を拭えば真夜中の僕の部屋。
両手にしっかり白菜漬けのタッパを持っている。
品良い老婆、一体あなたは誰。