七月二十一日
夏休みの友をもらって帰り 裏山に蝉取りに行った
今日から夏休み 朝早く目覚めた
蚊帳をめくって廊下に出ると 霧の中でニイニイゼミが鳴いている
小学校の三年生七月二十一日の朝
講堂に集まって終業式 寄宿舎の机を整理し 友人と夜行列車に乗った
bon jour muchers auditor・・・ ラジオからフランス語講座が流れる
家族はまだ寝ている 霧深い朝 近所の高校生が登校する
高等学校一年生 七月二十一日の朝
夜の鹿児島本線を汽車は走った
飛行灯台の赤い灯や 山の上のサナトリウムの窓明かりが近付いては過ぎる
オリオンは山の端に傾き 夜目に白い花が満開の木
水田の薄明かりに蛙の合唱
大学一年生 七月二十一日の朝 霧深い駅に降りる
六十年は一瞬のうちに過ぎ いつの間にかニイニイゼミは耳の中で鳴き始めた
財産などなく わずかな身の回りのものを持って やっぱり旅をしている
出張の寝台特急の窓から眺めた踏み切り、そのほの暗い路地に佇んでいた親子、
あれが私の妻子だ、私はそこに居ない、私は疾走する時間の中から見ているだけだ
仕事を終えた夜更けに、眠れない夜に、暗い早朝に、あの帰省列車、夜行特急が走る
もう私に 七月二十一日は来ない
夏休みの友をもらって帰り 裏山に蝉取りに行った
今日から夏休み 朝早く目覚めた
蚊帳をめくって廊下に出ると 霧の中でニイニイゼミが鳴いている
小学校の三年生七月二十一日の朝
講堂に集まって終業式 寄宿舎の机を整理し 友人と夜行列車に乗った
bon jour muchers auditor・・・ ラジオからフランス語講座が流れる
家族はまだ寝ている 霧深い朝 近所の高校生が登校する
高等学校一年生 七月二十一日の朝
夜の鹿児島本線を汽車は走った
飛行灯台の赤い灯や 山の上のサナトリウムの窓明かりが近付いては過ぎる
オリオンは山の端に傾き 夜目に白い花が満開の木
水田の薄明かりに蛙の合唱
大学一年生 七月二十一日の朝 霧深い駅に降りる
六十年は一瞬のうちに過ぎ いつの間にかニイニイゼミは耳の中で鳴き始めた
財産などなく わずかな身の回りのものを持って やっぱり旅をしている
出張の寝台特急の窓から眺めた踏み切り、そのほの暗い路地に佇んでいた親子、
あれが私の妻子だ、私はそこに居ない、私は疾走する時間の中から見ているだけだ
仕事を終えた夜更けに、眠れない夜に、暗い早朝に、あの帰省列車、夜行特急が走る
もう私に 七月二十一日は来ない
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