つきみそう

平成元年に出版した処女歌集の名

国家論なき憲法学者1

2024-12-17 | Weblog
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■1.改憲を望む国民の主権を踏みにじる「反」立憲「反」民主党

 先の選挙での自民党の大敗を受けて、衆院の委員長、審査会長のポストをいくつか立憲民主党に渡すというニュースが流れました。そのうちの一つ、憲法審査会長には枝野幸男元代表が就くということで、一時活性化してきた憲法改正論議も、これでしばらく停滞を余儀なくさせられるでしょう。

 なにしろ、憲法改正に必要な国民投票法の改正案が安倍政権によって2018年6月に両院の憲法審査会に提出されましたが、国会で可決されたのは2021年6月、8国会にわたり継続審議となりました。この遅れを西修・駒澤大学名誉教授は次のように評しています。

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 採択が延期されてきた最大の理由は、立憲民主党が強固に反対してきたからです。
安倍晋三・元首相時代は「安倍内閣のもとでは改正論議に応じられない」と主張し、菅義偉・前首相になってコロナ禍にともなう緊急事態条項の憲法への導入が議論されると「コロナ対策が先決であって、憲法審査に応じられない」、そして岸田文雄内閣のもとでは「論憲」を旗印にして前進姿勢を見せていません。[西R04、p65]
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 読売新聞の世論調査では、「憲法を改正する方がよい」が2024年には63%と多数を占めていますが[読売]、審議拒否という姑息な手段によって、国民に憲法改正の投票の機会すら与えない、ということは、国民主権の原則を踏みにじることであり、それこそ「反」立憲「反」民主主義です。


■2.「自衛隊は憲法違反」だが「憲法を変える必要はない」?!

 同様に憲法改正にブレーキをかけているのは、多数の憲法学者たちです。朝日新聞が2015年に行った122人への憲法学者へのアンケート[朝日]では、現在の自衛隊が、

 ・憲法違反・・・・・・・・・・・50人
 ・憲法違反の可能性・・・・・・・27人
 ・憲法違反にはあたらない可能性・13人
 ・憲法違反にはあたらない・・・・28人
 ・無回答・・・・・・・・・・・・ 4人

 と、「憲法違反」「憲法違反の可能性」で63%を占めています。これはこれで理解できます。というのは、かくいう私も「憲法9条の条文を素直に読めば憲法違反だと解釈せざるを得ない」と考えているからです。だからこそ国家に不可欠の防衛力を違反にするような憲法は改正が必要だと私は考えていますが、大半の憲法学者はこの点が違います。

 ・憲法9条を改正する必要がある・・ 6人
 ・憲法9条を改正する必要がない・・99人
 ・無回答など・・・・・・・・・・・17人

「改正する必要がない」の99人の中には、前問で「憲法違反」「憲法違反の可能性」と答えた学者たちが多数いるでしょう。自衛隊は憲法違反で、その憲法を改正する必要が無い、ということは、自衛隊は廃止すべきだということになります。そう考える学者たちは、日本国の防衛をどうすべきだと考えているのでしょうか?


■3.「『国家論』なき戦後憲法学」

 この疑問に答えてくれるのが、百地章(ももち あきら)日本大学名誉教授の「『国家論』なき戦後憲法学」という指摘です。
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 国家意識を欠き、国益を考えることよりも外国におもねる政治家、官僚さらにはマスコミ人等を生み出してきたのも、ひとつにはこのような「『国家論』なき戦後憲法学」であった。
そして憲法学者の議論が、たとえば憲法第九条をめぐるそれに見られるように、往々にして世間の常識とかけはなれたように見えるのも、実はこのような国家論の不在に大きな原因があるのではないかと思われる。[百地、p30]
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「自衛隊は憲法違反」としながら「憲法改正の必要がない」と主張する多くの憲法学者たちは、平気で隣国を侵略するロシア、核ミサイル開発を進める北朝鮮、力づくで尖閣をとろうとしている中国に囲まれた日本の防衛をどうすべきと考えているのでしょうか? まず日本はどうあるべきか、という国家論が先にあって、それを実現するために憲法はどうあるべきか、と考えなければなりません。

 国家の理想や課題をまるで考えずに、現行憲法の条文を金科玉条として「自衛隊は違憲」などと唱えている姿が、まさに「国家論なき憲法学」です。国家はこうありたい、という国家論を考えなければ、憲法を改正しようなどという考えも出てきません。


■4.「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」は「無条件の戦力不保持」

「国家論なき憲法学」が自衛隊を違憲とする論理を見ておきましょう。そこには、条文をこねくりまわしているだけで、国家がどうあるべきか、という国家論がまるで登場しません。

 まず第九条の原文は以下の通りです。(第1項)(第2項)は弊誌がつけたものです。

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第九条
(第1項) 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(第2項) 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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 憲法学説の多数は、第一項については「侵略戦争のみ放棄」したものか、「一切の戦争を放棄」したものか、意見が分かれますが、第二項については、「無条件での戦力不保持」ということで一致しています。たしかに「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という文面を文字通り読めば、そう解釈するのが論理的でしょう。

 憲法学者が、国家の防衛など考えずに、憲法の条文の世界に閉じこもっていれば、そう考えてしまうのです。「じゃあ、国家の防衛はどうしれくれんねん」と考えるのが、一般国民の常識ですが、国家論なき憲法学者たちは、それは憲法学が考える問題ではない、と答えるのでしょう。

写真は知人宅のウメモドキ 狂い咲です



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