夜空にぽっかりお月さま、昼間みたいに明るいね
優しい光が不安な心を癒してくれる。優し光が子どもの頃に戻してくれる
遠くから父の声が聞こえて来た
目をつぶって、耳を澄ませてごらん。ほらやってきたよ
コンコン 誰かが窓ガラスを叩いた
「来た」窓の外には大きな亀がいる
「さあ、行こう」
いつの間にか姉はピピリに私はマウイになっていた
冒険旅行の始まりはじまり
ピピリとマウイの冒険旅行だ
亀は背中にピピリとマウイをのせ、ゆっくりと浮き上がると、夜空を泳いでいく
優しい月の光が亀と二人の子供を照らしている。
今夜は何処にいくのだろうか
どんな冒険が待っているのだろうか
うん、気がつくと朝になっていた
どんな冒険したのかな
覚えているのは亀に乗って夜空を飛んだことだけ
お月さまがきれいだったことだけ
なんだって。あんな大冒険したのに、覚えてないのか
父のわざとらしい声を思い出す。
子どもの頃はよかったな
子どもの頃に戻りたいとは思わないが、せめてひと月前に戻れたら……。
戻りたいけど戻れない
何か役に立ちたいけど、何もできない
できることは家にいるだけ
それが今一番役に立つこと
家にいよう
亀に乗って夜空を飛んだ、冒険の続きを思い出してみよう。