あのお方
最近テレビが面白くなくなったのは、やはり年を取ったからだろうか。いやたぶんYouTubeが面白いからではなかろうか。保護犬猫活動に涙し、園芸、料理、ダイエット動画はよく参考にしている。
さて数多ある動画の中で私が今一番はまっているのは、「ふるさとの栞」という動画である。若いカップルが百万円で古民家を買い取り、中の粗大ごみをひたすら捨てまくり、古民家の再生を目指す動画である。
それにしても古民家の中、物で溢れかえっている。たぶん元の持ち主が捨てないで、何でもとっておいたのだろうが、数年前の生家を見ているようだ。もちろんあそこまではなかったのだが、何年もかかってやっと片付けたのだが、まだ倉がまだ残っている。
倉といっても農家の倉なので、お宝が仕舞われているわけではない。触ると崩れてしまいそうな蓑や笠とか、姉のお雛さまとか、息子の鯉のぼりまで、とにかく捨てるには忍びないけど、在っても仕方のないものを乱雑に詰め込んでいる。
二十年ほど前に一度母の命令で、しぶしぶ整理を試みたのだが、あのお方の抵抗にあい、これ幸いと試みを中断したままになっている。
あのお方は倉のいや我が家の守り神さまとして、長い間大事にされている。いつの頃から住み着いたのかは定かではないが、私が子供の頃には既にいた。毎年夏の終わりに姿を現し、ゆっくりと庭を横断しどこかに消えていくのだ。
また衣替えはあのお方にとって大切な行事なのだろう。毎年どこかに必ず脱ぎ捨てた衣を置いてゆく。今年は倉の外側の石垣の中にあった。
しかし私が子供の時にいたお方と、今のお方は同じお方なのであろうか。もしかしたら代替わりしているのかもしれない。しかしいつ見てもても大きく堂々としている。まさに我が家の守り神さまにふさわしい、立派なアオダイショウである。
あのお方の住処を私ごときが荒らしていいはずがない。と自分に言い訳して、ずっと倉の掃除を先にのばしているのだ。