よいとこさん
前回はあのお方を紹介しましたが、我が家には他にも住み着いているお方がおります。
このお方は「よいとこさん」という名前です。どうして「よいとこさん」になったかというと、かれこれ六五、六年くらい前に、母が近所のお婆さんから「あんたん家にはよいとこさんがいるよ」と言われたそうです。
そんなこと言われてよいとこさんとは何であろう。見たこともない。そこで父に聞いてみたそうです
「父ちゃん。よいとこさんちゃ、何かぇ」
父もそんな名前はじめて聞いたのでしばらく考えていました。そしてたぶん動物のテンではないかと言ったそうです。
父が幼いころに爺さん(父の祖父)と一緒に山に積んであった薪を取に行ったときのことでした。薪の中にテンの巣があり、そこに子どものテンがいたそうです。それを連れて帰って飼っていたのですが、いつの間にかいなくなってしまったそうです。
それが代々住み着いているのではないかというのです。むろん家の者はだれも見たことがありません。こういう場合は案外よその人の方が見えるのかもしれませんね。その上よいとこなんて縁起のいい名前までつけてくれたのですから。
このよいとこさんもきっと我が家を守ってくれているのでしょう。どこに隠れているか知れないけど、いつまでも住み続けてほしいものです。