最近見たドラマ
「生きるとか 死ぬとか 親父とか」
愛嬌はあるが自由奔放な父と、それに振り回される中年の娘の物語。2021年4月10日~6月26日にテレビ東京系で放送されたものです。原作はジェーン・スーのエッセイ集。今回はNETFLIXで見ました。
吉田羊扮するトッキーとこ蒲原トキコは人気のエッセイストであり、悩み相談が人気のラジオのパーソナリティでもあります。一方國村隼扮するのは父親の哲也です。
國村隼さん演じる父親。商売に失敗して全財産を喪失して、最愛の妻も早くに亡くしておりまして、今ではお気楽な一人暮らし。素敵な新居に引っ越したのですが、家賃の足りない分は娘のトッキーさんに、当たり前みたいな顔で頼ってくるのです。
一方娘のトッキーさん。そんな父の頼みに心よくと行かないまでも、不承不承に出してあげる。それだけ仕事が順調なのでしょう。主婦層を中心に熱心なファンもおり、ラジオの悩み事相談は好評です。
でも本人は現状に満足ってわけじゃあないみたいですね。そんな時父についてのエッセイを書くことになり、二人は頻繁に会うようになるのです。ところが楽しい思い出ばかりではないのですね。
トッキーさんの中には「あの時の父さん許せない」みたいな所があるのですが、さすがに大人の女性ですね。声を張り上げて父親を責めるのではなく、気の利いた文章でありのままに書いていくのです。
父親の方も娘の気持ちを分っているのですが、言い訳なんかしません。「お前の仕事なんて関心ないな」って感じですね。でもこのお父さん。毎回いい事言います。
とりわけ印象的だったのは最終話(生きるとか死ぬとか)の中です。
父について綴ったエッセー本も完成し、二人の間には穏やかな空気が流れていました。ある日二人は母の形見の包丁を研ぎに、創業230年になる下町の老舗金物屋を訪れます。
「タワーマンションがどんどんと建って、下町情緒がなくなってしまう」なんてトッキーさんは嘆くのです。ところが老舗金物屋のおかみさんは「タワーマンションが建ち人が増えてよかった」といいます。
「そんなものだろうか」トッキーさんは女将の言葉が、どうにも割り切れません。実はトッキーさん。毎週金曜日の夜のラジオ番組を、月曜日から金曜日の昼間の時間帯にやってもらいたいと打診されていたのですた。
内容は変えずにいままで通りにとのこと。果たしてそれでうまくいくのだろうか。昼間のリスナーにすんなり受け入れてもらえるだろうか。そこでトッキーさん思い切って父親に相談してみました。
その時父親の答えが印象的でした。
「さっきの金物屋の女将を見習わなきゃ。あの女将はタワーマンションなんかが建って、周りがどんどん変わっていくからこそ、変わらない自分たちの店が、一層目立っているってことが分かっているのさ。周りの変化があの店の風格を作っているんだよ。
だから同じことを、手を抜かないでやってりゃ商売はうまく行くってこと……
お前の仕事だってそうだ、おんなじことやっていればいいんだ」
トッキーさん吹っ切れたようですね。
「うつろいゆく物のなかで、常に変化にさらされている場所だからこそ、変わらないでいることが輝いてみえる」と語っていました。
先日上野動物園に行ったことを書いたのですが、帰りはバスに乗りました。沿道のおしゃれな建物の中に、何軒かは古い構えの店がありました。不思議なもので、そういう店に行ってみたくなるものですね。なるほどと思いました。
「生きるとか死ぬとか親父とか」
一味違った「父と娘」のドラマでした。