草むしりしながら

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「山の神さま」

2024-03-01 09:35:16 | スローライフは忙しい

「山神さま」

「日本百低山」(NHK) 低いながらも人々に愛され、物語を秘めた山。酒場詩人吉田類さんが全国の低山を訪ね。その魅力を堪能する番組です。

 先日の放送は山梨県三方分山(さんぽうぶんざん)でした。(2024/1/16の再放送)

 湖畔から登山道を登って行くと、古い石垣や石仏がありました。登山道といっても普通の山道みたいで、なんだか生家のヒノキ山に似ていました。

 生家には六十年くらい前に雑木を伐採して、ヒノキを植林した山があります。獣道だか林道だか分からないような細い道が通り、少し外れたところには炭焼き小屋の名残の石垣があります。跡地は少し窪んだ所にあるので、落ちないように注意して登って行きます。

 山道も次第に険しくなり、やがてうっそうとした雑木の中に出ます。そこを少し登っていくと、行く手を阻むように切り立った岩の前に出ます。我が家の山神さまはその岩の下に祀られているのです。

 家族の中でこの場所を知っているのは私だけです。一度姉に連れていってほしいと言われましたが、断りました。別に意地悪したわけではありません。山は高いにせよ低いにせよ、素人が下手にいくと危ないからです。

 素人などと言うと、だったらお前はプロなのかと言われそうですが、少なくても姉よりはプロに近いアマちゃんです。中学生か高校生の頃、この山のもっと奥まで父を呼びに行ったことがあります。

 父はその日地区の人たちと一緒に、山の奥にある地区所有の山の草刈りに行っていました。そこに親戚の小父さんが急に亡くなったとの知らせが入ったのです。故人はまだ五十代そこそこで、働き盛りでした。

 突然の訃報におろおろするばかりの母に、大方の場所を教わると、私は当時飼っていた犬を連れて迎えに行きました。勘を頼りに山の奥深くまで進んで行くと、知り合いの小父さんがいたのでホッとしました。訳を話して父を呼びに行ってもらったのですが、その時谷川のほとりのネコヤナギの木が銀色に芽吹いていました。春だったのですね。

 さて話を山神さまに戻しましょう。この山には山神さまを祀っている岩の他に、そっくりな岩がもう一つあます。私はその岩を「偽山の神さん」と呼んでいます。

 この「偽山の神さん」本物に比べるとスケールがやや小さいのですが、どこからどこまでも本物そっくりです。おまけに本物のよりも下手にあるので、どうしても下から登っていくと偽物のほうに行ってしまいます。

 ただブランド品と違って、本物と偽の見分けるのは実に簡単です。岩の下に山の神さまが御座っているのが本物で、何もないのが偽物です。ですからそこを確認して、間違っていれば引き返せばいいだけの話です。

 しかし行ったことのない深い山の中です。姉や夫、ましてや息子に、そんなことをさせるのは絶対無理だし危ないです。

 寂しいけど、山神さまの場所は私だけが知っていることにしましょう。



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