大和浪漫

私、瓜亀仙人が奈良・大和路の社寺や自然、生活の様子などをお伝えしたいと思います。

うどん屋風一夜薬

2012年02月27日 | 日々の暮らし
風邪やインフルエンザが流行する季節。
昨夏、大阪・住吉大社の境内で不思議な幟を見かけた。
その幟は表裏を逆になっていたので、書かれていた文字の読みに自信がなかったけど、どう読んでも「うどん屋」と読めた。
だから私は、この近くに「うどん屋」があると思い込み、大好物の「うどん屋」を探した。
しかし・・・「うどん屋」は見つからず???
もう一度、この幟まで戻って読み直したら、一番下に「薬」とある???
「うどん」と「薬」???
調べてみたら、こんなことが分かった。
また1つ賢くなった!

@うどん屋風一夜薬本舗HPより
戦前派ならいざ知らず、かぜ薬に『うどん屋』と付いているのを不思議に思う人も多いのではないでしょうか。
このかぜ薬、生まれは明治九年の大阪。
かぜの早期治療には、アツアツのうどんを食べ、この薬を飲んで、一晩ぐっすり眠ることが養生の基本であるという考えから、うどん屋で売られていました。
当時の大阪には、至る所にうどん屋さんがあり、まさに庶民のファーストフードでもあったわけです。ですので、風邪を引くとうどんやさんに駆け込んでカゼを治すこの方法が、浪花の文化として、全国に広がりました。
また、『うどんや風一夜薬』が俳句の季語であったということを、以前、落語家で人間国宝の桂米朝さんにお伺い致しました。
アツアツのうどんは、消化がよく体が温まるばかりか、当時は化学調味料等がございませんので、出汁そのものも栄養満点。じっくり暖まって、カゼ薬を飲んで一晩ぐっすり休むと,少々のかぜは治ってしまうと大評判で、やがて、全国に広まったのです
『うどんや』にある『風(かぜ)』が『一夜』で治るお『薬』。
これが薬の名称の由来で、私どもがうどん屋であったわけではなく、あくまでも、薬を置かせていただいているロケーションを示したもので、創業以来130有余年、うどんは一度も作ったことがないというのが、弊社の歴史でもございます。
もうひとつ面白いのは,当時、東京では同じ薬が『そばや風一夜薬』と名前を変えて売られていたことでしょう
大阪では『うどん』
東京では『そば』
思わぬところで、西と東の違いが発見できます。

この薬、壺井栄の名著『二十四の瞳』にも登場しています
第六章「月夜のかに」の修学旅行の場面
日帰りのこんぴらさんへの旅行の帰りの高松で
かぜをひいてしまったらしい大石先生と同僚の田村先生との会話です

「大石先生、青い顔よ。」
田村先生に注意されると、よけいぞくりとした。
「なんだか、つかれましたの。ぞくぞくしてるの」
「あら、こまりましたね。お薬は?」
「さっきから清涼丹をのんでますけど。」
といいさして思わずふっとわらい、
「清涼でないほうがいいのね。あついうどんでも食べると・・・・」
「そうよ。おつきあいするわ。」

-- 略 --

「大石先生、うどん屋かぜ薬というのがあるでしょ、あれもらったら?」

この後、このうどん屋で、学校をやめた松江と再会するわけですが
小学生の頃を思い出して、もう一度、名作を読んでみられるのも
楽しいでしょうね

またその昔
大阪の商家の奉公に来ている幼い丁稚どんたちは、かぜをひくと、とても喜んだとか
そのわけは、かぜをひいたら、おおっぴらにうどんを食べられるから

親元を離れて暮らしていた、当時の丁稚どんたちの生活を
物語っていると思いませんか?
安いうどんでも、かぜでもひかなければ
気兼ねなく食べられなかったのです
おかしいようで、ちょっぴり哀しいエピソードです

『二十四の瞳』といい
丁稚どんの話といい
戦前の庶民にとって、うどん屋でかぜ薬というのは
一般的なかぜの治療法となっていたといえます
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2 コメント

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風邪を引いていました (山口ももり)
2012-02-28 09:00:29
インフルエンザではない風邪を引いていました。先の土日、3月の展覧会の準備で一日中出ずっぱり。とても疲れて帰ってきまして、とりあえずビール・・・ところが買い置きがなかったもんんで、「紹興酒でも飲むか」と思ったらしく、お湯のみにいれて、そのままお布団に入ってしまいました。あくる朝、お湯のみに紅茶「あれれ・・・昨日紅茶を入れてのみ忘れたか。疲れてて寝てしまったからなあ」と思ってレンジ、チン、アッツアツをひと口飲んで「ゲッ」それは紹興酒でした。でもねえ、すきっ腹の起きぬけのアッツアツの紹興酒はすっかりおなか全体にを暖めてくれて・・・風邪はなおりました。
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Unknown (瓜亀仙人)
2012-02-28 16:05:07
ももりさんへ
>先の土日、3月の展覧会の準備で一日中出ずっぱり。とても疲れて帰ってきまして、とりあえずビール・・・
かなり、お忙しいのでしょう。
身体を労って、展覧会に臨んでいただきたいと思いますが、なかなかそうはいかないか・・・
返信する

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