記録だけ 2008年度 35冊目
『木々高太郎全集 6』
著者 木々高太郎
朝日新聞社
上下段・440ページ 980円
昭和46年3月25日 第1版発行
本日『木々高太郎全集 6』 を読了。
第6巻には次のような作品が載せられていた。
随筆(1)「故郷とその中学」
(2)「私の出発」
(3)「パヴロフ先生をしのぶ」
(4)「私は最後の弟子だった」
(5)「ヒポクラテスの全集」
(6)「Logico-physiologicus」
(7)「秋空と真理」
(8)「匂いと条件反射」
(9)「百の仮説」
(10)「比喩と比論」
(11)「思想としての条件反射学」
(12)「身のうちの生物」
(13)「汎化と分化」
(14)「憧憬」
(15)「科学者と情熱」
(16)「投射と予備」
(17)「感覚と表現」
(18)「文学における実感について」
(19)「『明暗』について」
(20)「ドストイェフスキイの研究」
(21)「ドストエイェフスキイの癇癪描写」
(22)「劇作論」
(23)「日本詩の音律」
(24)「福士幸次郎とその作品」
(25)「江戸川乱歩論」
(26)「小栗虫太郎論」
(27)「探偵小説二年生」
(28)「いよいよ甲賀三郎氏に論戦」
(29)「探偵小説におけるフェーアについて」
(30)「批評の標準」
(31)「『人生の阿呆』自序」
(32)「新泉録(A)」
(33)「探偵小説の評論について」
(34)「新泉録(B)」
(35)「推理小説の範囲」
(36)「探偵小説の地位の向上」
(37)「探偵小説の本質」
詩 (1)「渋面」
(2)「月光と峨」
遺稿詩篇・絶筆
(1)遺稿詩篇
(2)絶筆
戯曲 (1)「上品下品」
初期作品(1)「家出」
作品解説 須田勇
中島河太郎
金子光晴
木々高太郎年譜
木々高太郎全集の6巻目では随筆が群を抜いて興味深かった。
とりあえずは全集は読み切ることができた。
私の場合は、おそらく彼の作品の中では『網膜脈視症』の次に随筆が好きだというのも、皮肉なものである。
彼の言っていることは、結構うなずけることも多い。
また医学的な知らない部分もこの本によって知り得た事は、余得ともいうべきか・・・。
根っからの学者肌の物の考え方は作家としては魅力的で、作風は別として、安部公房氏と同方向に感じ、とても好きだった。
次は2、3冊なりと、 林髞(木々高太郎)氏の方を読んでみようかとも思う。
6巻目には詩がのせられていた。
私はたまたま読み残し部分を、JRの中で読んでいたからたまらない。
気恥ずかしい詩が綴られ、他人に見られればどうした物かと、気が気でなかった。
中には好きな物もあった。
しかし木々高太郎氏がこのような一面も持っていたのかと思うと、なんだか楽しい。
この木々氏が、随筆の中で書いていたように、詩人 萩原朔太郎も好きなのかと思うと、不思議な感じがする。
多分こういった二面性を持つ男性というのは、地位や名誉などに関係なく、女性に好感をもたれるのではないだろうか・・・。
ただ、彼の年上の女性に対する執着と理想像の壁は事の他厚く、興味の無い女性を簡単には受け付けないにおいを感じ、そこが魅力とも思えるのである。
彼の作品などを読んで、ドストエフスキーの作品も、以前読んだ物も含めて、しっかりと読みたくなった。
彼は好きな物に対しては とことん力説するので、多少なりとも影響を受け、こちらの興味の範囲が広がるところが好ましい。
そういった、厚みのある人物のように感じさせる木々高太郎全集であった。