青根温泉「湯元不忘閣」は、伊達家代々の湯治場として利用されていた、歴史のある古い温泉宿で、創業は約500年にもなるらしい。
建物は国の登録有形文化財になっている棟もあり、蔵には伊達藩から伝わる数多くの古文書や調度品等、貴重なお宝がしまってあるとのことでした。
仙台駅前から高速バスで1時間、終点の遠刈田温泉の「アクティブリゾーツ宮城蔵王」まで行ったら宿の送迎車が待っていてくれ、乗り換えてからは10分ほどで不忘閣に到着しました。
「湯元不忘閣」は、日本秘湯を守る会にも加盟している宿なので、玄関先にはお約束の提灯が掲げてありました。
歴史ある宿ということで、さすがに全体に古さはありましたが、手入れは行き届いていました。
階段のない部屋をお願いしてありましたから、通された部屋は1階で中庭に面した窓からは、『青根御殿』がよく見えました。
[青根御殿]
青根御殿は、代々の伊達藩の殿様が滞在した建物です。
でも、当初からの青根御殿は明治時代に焼失してしまい、昭和になってから復元されたとのことでした。
この青根御殿、現在では資料館として利用されていて、貴重な古文書や各種資料が展示されているようです。
そして毎朝、女将さんがこの建物の中を案内してくれるツアーが開催されています。
ツアー以外では立ち入りすることができない場所なので、参加してみてとても貴重な体験ができました。
ただ、当時のままなので、階段がキツかったのですが・・・(昔の人は羽織袴でこの階段を?)
夜、建物全体がライトアップされてとってもきれいでした。
話を宿の方に戻します。
客室は不忘庵と西別館という2つのタイプがあり、不忘庵は高台にあるために眺望は最高なのですが、途中に100段程の長い階段があります。
もちろんエレベーターはありません。
もう一つの西別館は階段がなく、お風呂や食事処にも近い部屋でした。
そうなるとやっぱり階段の方は遠慮して、どうしても西別館の方をお願いしたくなりますね。
西別館は4室しかないため、人気があってすぐに満室になってしまうようです。
[建物内部の様子]
やはり古いですが、きれいに掃除はされています。
お風呂のこと。
すべてのお風呂の泉質は硫酸塩泉系の単純泉で、もちろん源泉かけ流しになっています。
最初に、この宿を代表するお風呂が『蔵湯浴司』、読み方は”くらゆよくす”です。
フロントから奥に行くと、登録有形文化財に指定されている大きな蔵が3つ並んでいます。
そして、その中の一番奥の蔵が、そのままお風呂として使われているのです。
大きな蔵の中にど~んと、これまた大きくて見事な檜の浴槽が置いてありました。
ここは1回30分の貸切風呂として使われ、空いていればいつでも入れます。
次はのお風呂は『大湯金泉堂』、男女時間で入れ替え制です。
石で組まれた浴槽は伊達公時代に施工されたままのようです。
歴史を感じさせてくれるようなお風呂で、見上げると天井の太い梁や棟木が見事でした。
『亥之輔の湯(いのすけのゆ)』、空いていればいつでも入れる、貸切の半露天風呂です。
『御殿湯』
男女時間で入れ替え制のお風呂です。
ここには大小2つの浴室があり、洗い場があるのはこのお風呂だけです。
この宿は日帰り入浴を受付けていないので、すべてのお風呂が宿泊者専用になっています。
客室数14室に対してお風呂の数が多いので、あまり他の人とかち合うこともなく、十分に温泉を堪能できます。
お風呂から出たところには、湯上がり処『喫茶去 金泉堂(きっさこ きんせんどう)』があり、コーヒーや紅茶、日本酒やおつまみも用意されています。
この部屋も昔のままのたたずまいになっていて、数多くの古い調度品が置いてあり、とっても懐かしい雰囲気を感じさせてくれる場所になっています。
食事のこと。
この宿を選んだのは温泉はもちろんのこと、食事の評判がよかったからでした。
夕食、朝食とも同じ部屋、本館2階の食事処でいただきました。
[夕食の一例]
『秘湯 師走の湯宴』と名付けられた季節の会席料理でした。
一品一品の盛り付け方の繊細さがとっても印象的で、特に感心したのが味付けの良さでした。
食事処と調理場が離れていて、さらにきつい階段があったりで、給仕してくれたスタッフさんは大変そうでした。
それなのに、料理はちょうど良い間合いで運んでくださいました。
「階段は慣れています」とおっしゃっていましたが、若いっていいですね。
最後の手作りデザートですが、大きめのイチゴを2つに割ってその中に生クリームを挟み、チョコレートで顔を作ったサンタクロースです。
ちょっとしたアイデアにほっこりでした。
宿の造りは昔のまま、ちょっとお風呂に行くまでの廊下が寒かったりはしましたが、温泉も食事もとても満足した宿でした。
秘湯の宿と謳ってはいるけれど、気軽に行ける場所にありますので、ひなびた温泉が好きで、美味しい料理を食べたい人にはお勧めの宿です。