第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

DTMH疾患 その2)Immune reconstitution inflammatory syndrome (免疫再構築症候群)

2015-11-02 13:25:16 | Mahidol University編
Immune reconstitution inflammatory syndrome (免疫再構築症候群)
 
本日の回診のディスカッションのポイントでした。
20代男性、1ヶ月以上続く1日4回程度の軟便から水様便、20日程度続くSpike feverで入院。体重減少は3kg/月。診断は、HIVが陽性だけどCD4値はまだ出ていない。症状の原因の鑑別は何で、君なら何の検査を行い、治療はどうする?というものでした。ここはDTMHのHIV試験のヤマです。
 
CD4低かったら、間髪入れずにHAARTをぶっ放すと答えでもしたら「バカモンっ」と怒られます。
多分、日和見感染の診断と治療が優先でHIVに関してはWait and seeですね。というのが模範解答です。
 
今日はコレを記載しておきます。免疫再構築症候群(IRIS)とは何ですか?
 
日和見感染で来院した新規HIV(+)低CD4の患者に対してHAART療法を優先してしまう事で、免疫機能が復活して激しい全身性の炎症症状を引き起こす事と言えば分かりやすいかもしれません。
例えば、ヘロヘロになっていた兵士達が敵軍の侵入に気づいていなくて寝ていました。兵士達が元気になって気づいてみたらいつのまにか敵軍に占拠されていた為に、慌ててて総攻撃が開始、逆に天守閣が炎上、城は壊滅。そんな感じでしょう。
どんな疾患がなりやすいかはこのような疾患です。
 
Mycobacterium tuberculosis 
Mycobacterium avium complex
Cytomegalovirus 
Cryptococcus
Pneumocystis
Herpes simplex
Hepatitis B
Human herpes virus 8 (associated with Kaposi sarcoma)
 
IRISの国際的な定義は2015年現在ありませんが、一般的には
 
・CD4低値のAIDSの発症がある事(多くは<100cells/micro lであるが、TB感染の時は例外で>200で起こしうる)
・ARTが効果ある。
・勿論、薬剤耐性菌で無いこと、細菌感染を合併していない事、薬剤アレルギー(これが問題になります)が無いこと、内服をちゃんとしている事、吸収不良の問題とか無いことちゃんと評価して確認する。
・炎症状態の存在
・HAARTを開始してからの症状の出現との関連性。
 
臨床的に上記の感染症が多彩な症状を起こしうる事は想像に難しくないはずで、現場では丁寧なPhysical+Taking historyだけでは対応できない事が多い為、どうしても検査に検査を重ねたSystem2的(詰将棋的な)思考法が必要です。
 
まずは日和見感染に対してどの部位にどの病原・原因があるかを探しだし、そちらを治療する事を最優先にした後で、HIV治療を開始します。とある研究では薬剤開始からの中央値は48日(29-99日)との事です。
 
 
Immune reconstitution inflammatory syndrome: more answers, more questions.
J Antimicrob Chemother. 2006;57(2):167.
 
Incidence and risk factors for the immune reconstitution inflammatory syndrome in HIV patients in South Africa: a prospective study. Murdoch DM, et al. AIDS. 2008;22(5):601.
 
 
話は変わりますが、先月日本に帰った時に羽田で見つけたのですが、ここ最近は日本でもSIMフリーに対する認識が一般的になってきているようですね。以前は、かなり外国人旅行者にとって不便であったWifi環境、外国人向けの携帯電話も、今や海外旅行者用のSIMを自販機で売っている時代になってきました。
2年前にタイに来た時に殆どのコンビニでSIMの番号を自由に手に入れられ、簡単に携帯を持てる事に驚いたのですが、日本もようやく独占的なマーケティングから変わってきた兆しが見えます。