第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

医学生の診断エラーは・・まずは普通の医学生の勉強をしましょう。

2018-10-15 14:39:47 | 診断エラー学

みなさまこんにちわ。

週末は内科学会専門部会「診断プロセス向上WG」のために、東京にずっと潜伏してました。ついでに写真撮影などの取材!?もしてもらって、白衣で某東京の海など川など写真撮ってもらっていると変態的コスプレの人か、変な企画もののビデオ撮影などと間違えられそうでした(汗)。

さて、今日も診断エラーについてです。Graber先生(来月も少しお会いできるかもですが)が以前やられたもので、実際の100例の診断エラーを分析した研究があります。その中で診断エラーの多くが認知バイアスが主な原因となっている、知識や技術などが原因になっていることは少ないとの見解でありました 1)。我が師匠の研究でも、そのように認知バイアスの与える影響に注目されておりますね 2)。
 
Dual Processモデルを用いてよく研修医はSystem2を頻用するので極端な診断エラーが少ない!?ということが言われています。しかし実際に日本の研修医(昔の自分の経験では)を見ていると、その知識や経験が全く無いことから異なる診断をしていたり、Missしていることもあるので超初学者は認知バイアス以外の根本的な技能や知識の要素もあるはずであると思っていました。
 
今日はその研究です。
診断エラーの研究を医学生に行うというものがあまりなかったので、斬新でした(実際の患者を診ることは米国でもそんなに多くないはずなので)。コンピューターで臨床問題を88人の医学生に解かせて、最終的な診断とその根拠を書かせて解析すると言ったものですが、認知バイアスがあるかと思いきや・・。304症例の解析では、診断技術の不足(24%)、疾患知識の不足(16%)、文脈や病歴情報の理解困難(15%)、Premature closure早期閉鎖(10%)などと、認知バイアスが原因になっていることはどうも少ないとの結論になっています3)。
 
結論は、知識や技術の不足、経験の不足、疾患背景の欠如などが医学生の診断エラーには多分に結びてついており、認知バイアスが関わるということは少なかった。ということになります。
そりゃそうだろうなぁ!という結果ですが、研究のリミテーションはコンピューターベースの評価であるために、そこには認知バイアスがかかりにくさというのもあります。イライラしている人が隣から圧力をかけてきたり、カルテがドンドンたまっていって焦ったり、寝不足でフラフラしていたり、同時に数人診ていたりなど、外部から(内部からも)認知バイアスの影響を受けにくいのもあるかと思います。
 
このように、診察した自分しかわからない心理状況を省察することなくして、Cognition biasの評価はやはり難しいですね。少なくとも、医学生はやっぱり背伸びは適度にとどめて、まずは「医学の勉強」をしっかりしておくというのが妥当なラインになるのでしょうか。
 
それでは、また。

1) Graber ML, Franklin N, Gordon R. Diagnostic error in internal medicine. Arch. Intern Med. 2005;165(13):1493–9.

2) Tokuda Y, et al. Cognitive error as the most frequent contributory factor in cases of medical injury: A study on verdict's judgment among closed claims in Japan. J. Hosp. Med. 2011 March;6(3):109-114

3) Braun et al. Diagnostic errors by medical students: results of a prospective qualitative study. BMC Medical Education (2017) 17:191

 

Madhidolの偉大な先輩 羽田野先生と、出雲にくるきっかけをくださった粟屋先生と飲めました!