みなさま こんにちわ
最近思うのですが、超高齢社会の日本に置いて、過剰医療による有害事象とコストの増大、診断エラー、医療の質と安全などの価値が再度重要視されてきている、うねりのようなものを感じています。
例えば、だいたい皆さん飛行機で墜落などに遭遇する可能性は100万分の1以下なのですが、実は診断、投薬や治療を含む医療行為を受けている間に有害事象に遭遇する可能性は300分の1程度はあると見込まれているようです。私らのイメージでは飛行機や原子力産業などめちゃくちゃリスクが高いと思い込みやすいですが(特に僕もそう)、医療に比べればはるかに安全だとのことです。そうこれからの医療も実験研究も大事ですが、風通しが良くなればPatient safetyの領域で研究を行なっていくことの重要性がさらに増し認められてくると思っています。
1) 地球上の人類の死因で、医療を受けることによる有害事象が14位
(医療は飛行機や原子力産業よりも危ない?!)
2) 先進国の医療現場では10人に1人が医療による有害事象を受けている可能性
3) 地球上で数百万人が投薬ミスにより有害を与えており、年間数十億ドルの費用がかかっている。
4) 全医療費の約15%が医療自体による有害事象関連のために費やしている。
5) 医療安全領域へ投資することで逆に医療費を大きく節約できる
6) 入院患者100人のうち約14人が院内感染にかかる。
7) 毎年100万人以上が外科的な合併症で死亡しています。
8) 診断エラーは医療のすべての関連に大きな影響を与え、無視できない多数の患者に害を及ぼしている。
9) 検査や治療による放射線の被曝は公衆衛生・医療安全上の問題になりつつある
10) プライマリケア領域の医療ミスの多くは安全管理の不足が原因ある。
1)
WHOの発表では地球上では年間4億2千万人が入院しますが、その内の約4270万人に有害事象が起きていると見積もられており、少なく見積もっても結核や、マラリアなどの三大感染症と比較して14位程度であるとのこと。
2) 先進国の病院で受ける医療現場では約10人に1人が有害事象に遭遇しているらしいです。もちろん偶然のものもあるのですが、50%くらいは防ぐことができる有害事象もあるとのこと。一方で、所得が低い26の国々での調査では、約8%のケースがが有害事象に遭遇し、そのうち83%は予防することが可能であり、不幸にも無くなる方は30%程度に及ぶのではないかと見積もられています。
3) 投薬ミスが地球上で数百万人に有害を与えており、年間数十億ドルの費用がかかっている。間違った危ない投薬や投薬ミスは、防ぐことができるメインの問題で。 世界全体そのことでかかっている費用は年間420億米ドルと見積もられており、これには人件費、実際の医療費は含まれていません。 なんとこれは地球上の医療費の1%に相当します。 システムやマネージメントの脆弱性(人員の疲労や、労働環境の悪化、スタッフ不足などの人的要因)が処方、調剤、管理などの業務に影響を及ぼし、その結果深刻な患者にとって害を与えている可能性が示唆されています。
4) 全医療費の約15%が医療自体が与えた有害事象関連に費やしている可能性。
最近の研究結果からOECD加盟国における病院の支出の約15%は院内感染や、深部静脈血栓症や褥瘡などを代表する有害事象に対して使われているとのことです。これらの国だけで費やされる医療費だけでも、毎年数兆ドルに達すると推定されています。
5) Patient safetyへの時間・人・お金を投資することで医療費を大きく節約できる
患者の医療が与える有害事象を減らすために力を入れることで経済的節約につながり、患者の予後をよくするだけでなく、患者さんの予後が良くなります。米国で集中的に医療安全の取り組みが行われた2010年から2015年の間に、公的医療保険病院だけで推定280億米ドルの節約につながっています。
6) 院内感染に入院患者100人のうち約14人がかかってしまう。
100人の患者が入院していたとして、高所得国で7人、中低所得国で10人が院内感染症にかかっているであろうと見積もられています。これは毎年世界中で何億人もの患者が遭遇していることになります。EU全体で見れば毎年約320万人の患者が院内感染にかかっており、そのうち3万7千人がこれが原因で死亡しています。しかし、適切な手指衛生などの簡単で低コストの感染対策がしっかりと行われれば、その頻度は50%以下に減少させることができる可能性があると言われています。
7) 毎年100万人以上が外科的な合併症で死亡しています。
WHOの調査結果では手術による治療は依然として死亡率をもたらし、地球上で年間少なくとも700万人の人々が手術による合併症を経験しており、そのうち100万人以上が死亡しています。 周術期や麻酔関連の死亡率は、これまでの努力もあり過去50年間で徐々に低下していますが、低中所得国では依然として高所得の国々より2-3倍高いままらしいです。
8) 診断エラーはすべての医療関連に大きな影響を与え、無視できない多数の患者に害を及ぼしてしまっている。
これまでの研究結果から米国の成人外来患者の少なくとも毎年5%程度が診断エラーを経験しています。 近年発表された数十年にもわたる病理解剖検査の研究は、診断エラーがアメリカでの死亡患者の約10%の主な原因になっている可能性が示されました。マレーシアでのプライマリケアセッティングでの横断的研究では、3.6%の診断エラーが認められ、カルテレビューの研究からも、病院における全有害事象の6〜17%を診断エラーが占めることが示唆されました。一方で、発展途上国からのエビデンスはほとんどありませんが、検査や機器へのアクセスが限られていることや、臨床能力が保証されたプライマリーケア医や専門医が不足していること、さらには紙カルテを採用しているなどの要因によってさらに高頻度で診断エラーが起きていることが推測されています。
9) 検査や治療による放射線の被曝は公衆衛生・医療安全上の問題になりつつある
放射線の活躍によって医療は確実に進歩しました。しかし、被曝線量の問題は公衆衛生および医療安全上の懸念となりつつあります。電離放射線の医学的使用は、人工線源からの放射線への人口被ばくへの最大の唯一の貢献者である。 世界中では、毎年36億件を超えるX線を用いた検査が実施されており、そのうちの約10%は子供に対して行われています。さらに、年間3700万件を超える核医学治療と750万件を超える放射線治療が行われています。 医療放射線が過度に、また不適切に使用されることは患者と医療従事者の両方にとって新たな健康被害となりえます。
10) プライマリケア領域の医療ミスの多くは安全管理の不足が原因ある。
ある文献レビューの報告から、プライマリケア領域では10万回の診察あたり約5〜80回件の医療ミスが発生することが明らかにされました。特にシステムや、薬などの管理や配役などの安全管理上でのエラーが最も頻繁に方向される代表例です。プラリマリケア領域の全医療ミスの約5-50%がこの安全管理上のエラーであるそうです。
いやぁ、WHOの10 fact ヤバイですね。このWHOの世界に発信した文章から見ても医療安全はこれからの医療で、かなり重要です。
研究といえば、実験!で合った日本の医学部の研究ですが、全世界の潮流を見ているとそれだけ出なくこっちも熱いよ〜とい気がしております。
自分としては慣れない基礎研究で新しい新薬や治療法を実験して導くというよりも、これらのことを改善し、いかに患者への有害事象を減らすことができるかのことを研究する方が自分には合っているように感じます。この数年の動きを要着目です。。
下記がWHOの元ネタです。

写真は内科学会専門医部会の仲間達と(GW唯一の仕事で良い思い出・・)