『はああ?』
ボーマンはボーマンで、「呆れた思い」がまんま口からとびださないようにすることと、
顔色を変えないでおくのに必死だったったうえに、胸の中は煮えたぎっている。
我ながらポーカーフェイスをよくつくれるとも、
ぶんなぐってしまいそうな手をおさえるのも上出来だとも、おもいながら、
ボーマンはリサの胸中を思っていた。
「で、それ、もう、リサに話したのかよ?」
「いや・・」
ハロルドが小さく首を振った
不幸中の幸いっていえるかどうかわからないが、
まだ、リサになにもはなしてないってことは、
ケイトって女からハロルドを引き離せるチャンスが残っているってことかもしれない。
「おまえさあ・・リサとも長い春だったわけじゃんか・・。
その間あっちにふらふら、こっちにふらふらしながら、
結局、続いてたのはリサだけだった。
まあ、俺から見れば続けてくれたのはリサだけだったとおもっていただけだけどな。
ケイトって女と4年越しだってのは、俺も初耳だけど・・
おまえにしちゃ、充分過ぎるくらい続いてるよ。
で、俺はまあ、なんだ、ふたまたかけてるとか、
愛人関係だの、どうのこうのについては、なにもいわねえよ。
ただな、俺が疑問なのは、
3年前にケイトを選ばず、リサを選んだおまえが、
なんで、いまさら、リサをやめるのか?
なんで、ケイトとやりなおしたいとおもうのか?
この二つだな」
「う・・うん・・」
言いにくい事があるときのハロルドの口ごもりもあきあきしてるボーマンだけど、
ボーマンにわかるのは、
リサとさえうまくいかなくなるハロルドがケイトとやりなおしても同じことだってこと。
「あのさ・・ケイトは・・その・・つまり・・今年、短大を卒業して・・」
「はあ?」
短大でたばかり?20歳?で、4年前から?それって、16才?
シニアスクールのがきんちょに、ナニしてたってことかよ?
「よくあるじゃないか・・ちょっと、年上にあこがれて
大人の世界にはいったら、そのうち熱もさめてさ、本当の恋を見つけていくって言うパターン。まあ、少女から女になる卒業試験みたいなもんだろうって。
その相手に俺をえらんだだけだろうって・・・」
「で、好きなだけくいちらかして、現実世界ではリサとの結婚をきめたってことだよな」
「う・・うん・・まあ。そういうことだよな・・」
だけど、一度男と、女になっちまったもん同士
逢えば、男と女の確かめ合いになっちまうってのがおさだまり。
「ケイトがさ・・俺のこと、わすられないって・・」
呼び出しがかかりゃ、おめあてのもんにありつけるのがわかってるから
ハロルドものこのこでていく。
適当に女の数をこなしてる男になぶられりゃ、ケイトだって、
ハロルドからはなれられない。
やらせる女とやりたい男が呼び合うんだから、
やることはひとつ。
楽しいお遊戯だけに没頭できる関係はそのつもりでできあがってるから
いつまでもずるずるつづいていく。
「リサには、悪いなっておもってたんだけど・・」
ハロルドがまた口ごもる。
「なんだよ・・」
「ケイトのときのほうが、燃えるつ~か・・
ケイトのほうがかわいいつ~~か・・・」
ーこいつ・・馬鹿だ・・-
ある意味、女すれしてないというべきか・・。
反応が楽しめる女におぼれるうちは、まだまだ青いってとこなんだが、
本来、男たるものは・・・ん?
ー今はボーマン論議を繰り広げている場合じゃないっしょ?
そこのあたりは、又機会をあらためてということで、問題はハロルド!!-
そうそう、ハロルドだ。
「なるほどな・・わかるよ・・。でも、それだったら、そのままダブルブッキングでやっていってもかまわねえじゃないかよ」
「うん・・そのつもりだったよ。ケイトもそのうちほかにいい男つくるだろうとおもってたんだ。だから、ずるいなって思いながら・・ケイトが自分からさっていくまでは・・・」
ケイトの味をしっかり楽しんでおこうってか?
「それがさ・・社会人になるまで続いて・・そしたらさ・・リサと又ちがうんだよ」
こいつ・・結局、リサに無いものを求めてるだけで、
結局リサが自分の中の比重の大半をしめてるってことにきがついてない?
「なんていったらいいのかな・・
リサは仕事もできるし、俺なんかいなくても一人でやっていけるタイプでさ・・
ケイトは不器用なとこがあって、失敗したっていっては、しょんぼりしてる。
俺がはげましてやらなきゃ・・こいつどうなっちゃうんだろうって」
慰めるところがいっぱいある女に、結局はハロルドが慰められてるってふうに聞こえるのはボーマンの見方がわるいんだろうか?
ようは、こいつ・・・。
リサに劣等感というか、コンプレックスをかんじて、
ケイトに逃げをかましてるだけじゃねえのか?
ボーマンは今、間違いなく、ハロルドに怒りを感じている。
だけど、それを宥めたのがリサだったといってよい。
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