ーなにが、可愛いケイトだよ。
ようは、ケイトって女のレベルがひくいだけじゃねえかよ。
お前で慰められるような、程度・・ってことじゃねえかよ。
え?
リサが一人でやっていける?
馬鹿いうな。
だったら、おまえなんかと結婚するかよ。
リサだって、おまえに頼りたいし、あまえたいにきまってるじゃねえかよ。
なのに、おまえのほうがリサにあまえちまってる。
だから、リサは気丈に自分をこらえていってるだけじゃねえかよ。
そんなことさえ、判らない男にリサが甘えられるか?
必死で自分をささえてるんじゃないか?
ハロルドをわずらわせちゃいけない。
心配かけちゃいけない。
いやな話を聞かせちゃいけない。
どんなにか、さびしいか・・
だけど、それをほかの男にぶつけたり、
ほかの男にもとめちゃいけないってリサはわかっている。
受け止められないハロルドだとしても、ぶつける相手はハロルドだけ。
それが、リサの誠意って奴じゃねえか?
でも、ハロルドはうけとめられない。
リサは自分で必死に自分をささえることで
ハロルドへの忠誠に昇華してる・・。
たった、そんなことさえ、判らないハロルドをせめもせず
ハロルドをつつみこんでしまってる。
ハロルドをうけとめきってしまってるリサをかんがえたら、
俺もハロルドをせめたりすまい・・
それをしちゃ、リサがなんのために
何も言わずこらえてるか、意味がなくなっちまう。
ハロルドという人間のちっぽけさをハロルドにつきつけるようなまねだけはしちゃいけない。
それこそリサがまもってきたものだ。
ハロルドをみじめにしちゃいけない。
だから、ひとりで、堪えてきてるリサだ・・・。
間違いなくそんなリサをうしなったら、
ハロルドの人生は・・・奈落の底におちる。
それさえ、きがつかない・・。
どうすれば・・・ー
ボーマンがなにか、考えている様子をハロルドははすかいから
のぞきこんでいた。
「なんだよ?」
のぞきこまれて、ボーマンは気がついた。
今の俺のように、一つのことに夢中になってるあまり、
みえてない。
それが、ハロルドならば・・・。
なにか、気がつくきっかけがあればいいってことになるわけだ。
「で、お前はまだ、リサに言ってないっていったよな?
そのことに、ついては、ケイトはどういってるわけさ?」
ボーマンのしりたいことは、ケイトって女がどこまで覚悟してるかってことだ。
ケイトがリサにしらせるか、しらせないか、
ここら辺のリサへの煩悶とか、すまなさとか?
こんなところで、ちっとは、ケイトの人間性がみえるきがしたわけだ。
ところが・・
「いや・・ケイトにも、まだ・・なにも話しちゃいないんだ」
ハロルドはまだ一人決めの段階でしかないってことになる。
「なんだ?おまえ、それ青写真の話かよ?
じゃあ、ケイトがお前と一緒になりたいとか?
そんなことをいわれたってわけじゃねえんだ?」
早とちりはボーマンのせいじゃない。
ハロルドがきちんと説明しないからだ。
「うん・・まだ、ケイトに話さないうちにリサにいうわけにいかないし・・
かといって、リサとのけじめがついてない状態でケイトにいうのも、
嫌な男のありがちパターンだろ?」
離婚するから、離婚するからって、いいながらいつまでたっても
離婚しない男のパターンにあいそをつかされるってことは
ハロルドもわかっているらしく、まずは、けじめをつけてからという
方法でケイトに云といわせなきゃならない?
それ?
ケイトがNOって言う可能性があるって事にもなるんじゃねえのかよ?
二兎を追うもの一兎も得ずの法則がはまりかねないハロルドの思いつきから生じた考えでしかないと判るとボーマンは、ひとつの賭けにでてもかまわないと思った。
「で、どうしたほうがよいかな?ってんで、俺に相談だったわけかよ?」
やっと、ハロルドの迷いを理解してもらえたとばかりに
やけに嬉しそうにうなづくハロルドにボーマンは伝えた。
「リサに先にいうべきだ。さっさと離婚して、ケイトに誠意あるところをみせたほうが良い。おっし。立会人は俺がなってやる」
賛同を得られたハロルドはボーマンに何度も礼をいっていたが・・・
ふと・・。
「だけどさ・・なんか、俺、一方的すぎてさ、リサに・・」
ボーマンはこともなげに言う。
「あ、いいさ。お前の新しい門出だ。面倒なことは俺が全部かたづけておいてやる。
お前は離婚届に判をおす。俺はそれをもって、リサに同意させて、役所に届けをだしてやる・・・もう、後ろはふりかえらず、ケイトのことだけ考えろ」
ボーマンの熱き友情だと取れるハロルドがいかにご都合主義でしかないか。
俺が、女なら、まず、こんな男はいらねえ。
ケイトがどうするにしろ、
リサにとって、
最善の方法はハロルドから、リサと切れる。
それが一番なのは間違いは無い。
「いや、めでたい、めでたい」
ボーマンはリサのことをいう。
ハロルドはボーマンが喜んでくれてるとおもう。
同じ、めでたいでも、中身が全然違いながら
二人の思いは同じだった。
それから、ハロルドはまっすぐ、ケイトのところにいっちまって、
ボーマンは離婚書類とかなんとか、かき集めて
次の日にハロルドを呼び出して、書類にサインさせた。
それから、リサの休日を待って、ボーマンはリサを尋ねていった。
玄関先のチャイムをなんどか、おすと、インタホーンからリサの声がきこえた。
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